ビットコイン価格はこの1週間ほど3万ドル台で推移している。現在もインフレが伝統的市場を悩ませ、夏は歴史的に仮想通貨にとって強気になることから、まだ期待が持てるかもしれない。ただ、上下どちらに振れるかはまだわからない。
ビットコイン価格が次にどこに向かうかを予想するために考慮すべき5つのポイントを見てみよう。
インフレの影響
米国や英国などは5月31日は祝日のため、株式市場などは穏やかな1日となっている。しかしアジア市場では様相は異なる。その原因はインフレだ。
新型コロナウイルスからの景気回復を目的とした、中央銀行の大規模な流動性供給によって、懸念されてきた影響が出てきている。ただ、製造コストの高騰など、すでにいくらかの兆候は出ているが、まだ完全には反映されていない。
JPモルガン・アジアの株式ストラテジストであるミクソ・ダス氏は、ブルームバーグに対し、「政策担当者は、より高いレベルのインフレ、より高いインフレ率のボラティリティを受け入れることに注力しており、そうなればインフレ率は構造的に高くなるだろう」とし、次のように話した。
「ただし、これが価格にすでに織り込まれているとはおもえない」

ビットコインの供給量と発行量の減少曲線はすでに決まっているため、ビットコインのインフレはしっかりとコントロールされている。そのため、機関投資家や現金へのエクスポージャーが大きい人々のビットコインに対する需要は、インフレに合わせて拡大し続ける。
今月初めに行われたビットコインのエネルギー使用に関する討論会で、『The Bitcoin Standard』の著者であるサイフディーン・アモス氏は、世界の富の約10%がすでに毎年インフレによって消滅していると指摘した。こうしたことからインフレに対するリスクヘッジとしてのビットコインの需要は増加し、価格に寄与するものと想定される。
ウィークハンドの売りが止まらない
週末に強気派による価格反発の兆しが見られなかったため、31日のビットコイン価格は先週につけた41,000ドルの高値以来、ゆっくりと下落している。
オンチェーンデータ分析を手がけるグラスノードの最新データによると、現在のレベルでは、以前からビットコインに参入している大口投資家(ストロングハンズ)はBTCの保有を増やしている一方で、新規参入の個人投資家(ウィークハンズ)は売りを続けている。
この「ウィークハンズからストロングハンズ」への流れが加速しているようだ。
マイナーも3万ドルまでの下落に伴う一時的な売りの連鎖から一転して、買いに転じている。

ツイッターの人気アカウントであるラーク・ディビス氏は「マイナーや長期保有者が積み上げ、短期保有者だけが売っている」と指摘した。
買われすぎ、売られすぎの傾向を示す重要な指標であるビットコインの相対力指数(RSI)も、2020年3月の暴落と2018年12月の3100ドルでしか達したことのない数値を示している。ここからの反発が望めるかもしれない。
重要な価格ライン
強気か弱気かを判断するために守るべき重要なラインがある。
トレーディングスイートのDecenTraderは、最新のマーケット情報で、200日移動平均(DMA)と20週移動平均(WMA)を注目すべき重要なレベルとして強調した。
200DMAは現在、先週BTC/USDが拒絶反応を示した40000ドルのすぐ上に位置しており、20WMAは49,000ドル付近にある。
「ビットコインが3万ドル台前半で十分な需要を見つけることができれば、20WMAは抵抗として機能することが予想される」とDecenTraderはまとめている。
「下落すれば、2万ドル台前半やリトレースメント78.6%がターゲットになる可能性が高い。そのため、来週のプライスアクションが特に重要だ」
ビットコインが2017年の高値である2万ドルまで下降するという考えは、ストック・フロー(S2F)モデルの作成者であるPlanBを含む多くの人からの不評を買っている。
PlanB氏は、現在の下落トレンドの中でS2Fモデルが試されている状況を認めつつも2万ドルまで下落する可能性は低いと考えている。
「もちろん私は賛同できない。S2Fやオンチェーンではもっと高い価格(10~28万ドル)を指している。時間が解決してくれるだろう」
また、ビットコインの「実現価格(下記グラフの灰色の線)」(各コインが最後に動いたときの価格に基づいてBTC/USDを計算したもの)は、現在23,000ドルであると話した。2013年と2017年の強気の相場では、実現価格は桁違いに上昇したが、今年はまだこうした現象は起きていない。
実現価格の200WMAに対するチャートと一緒に、「23Kドルでは、まだまだ上昇の余地がある」とコメントしている。

資金調達率が懸念和らげる
値動きの強気の証として、ファンディングレート(資金調達率)が挙げられる。
現在、資金調達率はマイナスであり、この状況下ではショートがロングに手数料を支払うケースが多いことを示している。
DecenTraderは「建玉は回復せず、レバレッジをかけた参加者は売りに押されてほぼ全滅し、再参入していない。資金調達も低水準/マイナスで推移しており、これがさらに市場を反響させている」と指摘した。
既報のように、30,000ドルの売りでレバレッジをかけていた参加者が一掃されたことで、トレーダーがリスクを取ることを避けるようになり、市場の構成が事実上リセットされた。
これにより、短期的な投機目的ではなく、長期的にBTCを購入する可能性の高い人々からの真の需要によって、より有機的な価格上昇が可能になるはずだ。

過去最悪の5月
ビットコインの月次リターンを見ると、過去最悪の5月となったようだ。2021年5月の月次リターンを見ると40%のマイナスとなっている。
通常、5月はビットコインにとって有利な月になる傾向があった。実際に2017年と2019年は5月は50%以上のプラスとなっている。
2018年は19%の損失を出した異常値だったが、これも今年に比べれば見劣りする。2021年5月は現在、第1四半期と第2四半期の両方のパフォーマンスにおいて、2013年以来最悪の月になることが予想されている。

それでも悲観的になる必要はないだろう。アルトコイン市場はXRPの反発を筆頭に回復の兆しを見せている。特にイーサは有望だ。
仮想通貨トレーダーのCrypto Ed氏は、「BTCが弱くなっても、強いalt/usdペアに追随するか、アルトコインが上がる中で横ばい推移を続けるため、あまり気にするべきではない」と結論付けた。