米国で仮想通貨集団訴訟を手がける弁護士、業界への政府監視強化を導いたと自負

 シルバー・ミラー法律事務所は、現在米国で行われているほぼすべての仮想通貨関連訴訟に関与しているようだ。コインベースやクリプトシー、ナノ、クラーケン、ビットコネクト、モンキーキャピタル、ギガワット、テゾス、その他の仮想通貨業界大手を相手取り、不当な扱いを受けたユーザーらを代表して金銭的損失を被ったと訴えている。シルバー・ミラー法律事務所の共同設立者デイヴィッド・C・シルバー氏が今週、仮想通貨規制や仮想通貨界における法規制の役割などについてコイングラフに語った。

デイヴィッド・シルバー氏の紹介

 ナノ財団に対する集団訴訟で、シルバー・ミラー法律事務所は「仮想通貨取引所および仮想通貨発行者の虚偽と不法行為によって損害を被り、権利を侵害された投資家らの強力な支持者」と自称している。訴訟は1件ずつ取り組んでいるようだが、では、デイヴィッド・シルバーとは一体どのような人物で、何がきっかけで仮想通貨界と対決するようになったのだろうか?

 シルバー氏の経歴から紹介する。シルバー氏はジェイソン・S・ミラー氏と共同でシルバー・ミラー法律事務所を設立する以前の2004年〜10年の間、金融証券弁護士として国際的な法律事務所のスクワイヤ・パットン・ボッグスで働いていた。シルバー弁護士が仮想通貨界に関わり始めたのは14年、ビットコインに興味を持った知人とフロリダ州サウス・ビーチにいた時のことだ。「当時、ビットコインに夢中だったある人物が私の携帯を使って、コインベースに私のアカウントを作成し、その妥当性を示すため私に5ビットコインを提供してくれた。私はその時、この男は刑務所行きだな、ビットコインは詐欺だ、と感じた」。

 シルバー弁護士は当時入手した5ビットコインを未だに保有しているが、その一度限りの贈り物以外にビットコインを入手したことはないとコインテレグラフに語った。それ以来、シルバー弁護士は仮想通貨分野で集団訴訟を起こしてきた。同時に、仮想通貨の最新ニュースを常に把握し、仮想通貨関連の詐欺の可能性がある事案に対してはすばやくツイートで自身の態度を表明してきた。セーブドロイドの持ち逃げ詐欺(後にPR活動だったことがわかった)に関するコインテレグラフの記事にもコメントを寄せ、シルバー弁護士の新しい宣伝ポスターを添えて援助を申し出た。

 コインテレグラフ  @Cointelegraph ドイツのスタートアップ、セーブドロイドが ICOで5000万ドル調達後に持ち逃げ詐欺を成し遂げたもよう。

 デイヴィッド・シルバー @dcsilver ご相談ください - pic.twitter.com/37p5eUx9We

 シルバー弁護士は訴訟数が比較的多いため、ツイッターの一部コミュニティで、自身に対する否定的な見方があることを認めている。「悪徳弁護士」などと呼ばれたことがあるとコインテレグラフに語った。しかし、シルバー弁護士はそのような悪評に対して、「私がこの分野に足を踏み入れたのは金銭的な損害を受けた人が存在したからだ」と主張し、次のように説明する。

「金銭的な損害を受けた人の損害補償を支援する。私が起こしたすべての訴訟の目的はそこにある。私のクライアントは金銭的な損失を被っている」

シルバー・ミラーの最初の仮想通貨訴訟、クリプトシー詐欺

 シルバー弁護士によると、14年のクリプトシーに対して起こした訴訟は、歴史的にみて重大な訴訟だった。アメリカで初めて仮想通貨投資家が仮想通貨取引所を相手取って起こした訴訟だからだ。破綻したビットコイン取引所「クリプトシー」のポール・バーノンCEOは、14年にクリプトシーの顧客から1万1325.0961BTC(現在約115億円)を盗んだ罪で17年に有罪判決を受け、損害賠償金として820万ドル(当時の値打ちの総額)の支払い命令を受けた。

 ポール・バーノン氏と仮想通貨取引所クリプトシーが犯罪によって結末を迎えたことに対するシルバー弁護士の意見は興味深いものだった。シルバー弁護士はバーノン氏が「単に見た目の素晴らしいウェブサイトを持った、ありふれた詐欺師に過ぎなかったことが分かり、悲しかった」とコインテレグラフに語った。なぜなら、バーノン氏のアイデアは実際「時代の先を行くもの」だったとシルバー弁護士は考えているからだ。「バーノンは自分自身にさえ賭けていれば、アメリカで有数の大富豪になっただろう」。

 「今朝、米国リーガルニュース速報サービスのLaw360が、私を米国仮想通貨分野でもっとも訴訟件数の多い弁護士と紹介した。私はそれを母に送った。私の素晴らしい人生を思いがけずこのような状況に変え始めたのはクリプトシー訴訟だ」とシルバー弁護士は話す。

 クリプトシー訴訟で勝訴してから数年が経った今、シルバー弁護士は非常に数多くの仮想通貨集団訴訟の顔となった。シルバー弁護士がコインテレグラフにつたえたように、シルバー弁護士の仮想通貨界での「有名度は最低ランクのD級」から「CかCプラス〜Bマイナス級」まで上昇した。

コインベースに対する訴訟

 シルバー・ミラー法律事務所がもっとも力を入れて取り組む企業の中に、大手仮想通貨取引所のコインベースがある。シルバー・ミラー法律事務所がコインベースを相手取った訴訟は複数ある。訴訟内容はビットコインキャッシュ(BCH)のインサイダー取引や、プラットフォームの機能停止、現在調査中のアカウントへのアクセス喪失などだ。

 しかし、現在のコインベース集団訴訟は、クリプトシー訴訟から派生したもので、コインベースにアカウント監視の過失があったと申し立てているものだとシルバー弁護士は指摘する。その申し立てによると、バーノンがマネーロンダリング(資金洗浄)のためにコインベースアカウントを利用し、盗難した820万ドルを法定通貨に変えて国外逃亡を成し遂げた責任は、コインベースの過失にある。

 とはいえ、14年のコインベースと現在のコインベースは異なる企業だというのがシルバー弁護士の意見だ。

「コインベースのCEOを務めるブライアン・アームストロング氏は、あらゆる面でコインベース社を合法化しようと努力しているように見受けられる。訴訟以外では、私はブライアン・アームストロング氏の活動に大きな敬意を抱いている。私たちは親友になれると思う。私たちは仮想通貨界に同じものを求めている。訴訟がなければ、親友になれるだろう」

 裁判所は今週これまでに、シルバー・ミラー法律事務所の主張を受け入れ、コインベース集団訴訟は非公開の仲裁ではなく公開法廷で争うという決定を下した

ナノとハードフォークによる修正

 さらに最近、シルバー・ミラー法律事務所はアルトコイン「ナノ」の開発者を相手に訴訟を起こした。未登録証券販売および仮想通貨取引所ビットグレイルの信頼性を偽って伝えた過失を訴えている。ビットグレイルは2月にハッキングされ、1億5000万ドル相当のナノが流出した。この訴訟で、ナノのハッキングによるユーザーの損失を補償する解決策は、ハードフォークによる資金回復だ。

 仮想通貨資金の紛失あるいは盗難に関連したハードフォークの導入時期は、仮想通貨コミュニティでは厄介な問題だ。ハードフォークは一切使うべきでないという意見もある。その例が、イーサリアム(ETH)から分裂したイーサリアムクラシック(ETC)の支持者だ。イーサリアムはDAOハッカーに盗難された資金をハードフォークの実行で適切なアカウントに無理やり戻した。ETC支持者はこれに反対していた。

 このハードフォーク問題に対するシルバー弁護士の意見は、コストと関係なくブロックチェーンの整合性の維持を求める傾向が強い早期に、仮想通貨を導入した人々の立場と異なる。シルバー弁護士の考えでは、コードをフォークしないことで利益を得るのはナノ開発者なので、ナノ開発者は道徳的に間違っている。「私たちはアメリカ合衆国に暮らしている。アメリカは世界最高の国だと私は考えている。私は他の国で暮らしたいとは思わない。アメリカに暮らし、アメリカで暮らす利益を得るなら、その土地のルールに従って行動する必要がある」。

 したがって、シルバー弁護士によると、ナノ開発者が、それを修正する能力があるのであれば、今すぐ修正するべきと主張する。ナノの代理人を務めるピーター・スクーリッジ弁護士にナノ集団訴訟へのコメントを求め、次のような回答を得た。

「今回の訴訟にはメリットがまったくなく、その点を法廷で明らかにしたいと思っている」

クラーケンの認識

 コインテレグラフは、シルバー・ミラー法律事務所の訴訟相手である仮想通貨取引所やICO運営者にシルバーミラー法律事務の主張に対するコメントを求めた。回答してくれたのは仮想通貨取引所のクラーケンのみだった。クラーケンは現在、「詐欺、過失、虚偽広告」の件でシルバー・ミラー法律事務所の集団訴訟に直面している。クラーケンは、コインテレグラフが出したコメント依頼のメールへの最初の返答の中で、「係争中の集団訴訟を一切認識していない」とつたえた。

 コインテレグラフの記者が「クラーケン集団訴訟」というタイトルのシルバー・ミラー法律事務所のウェブページのリンクを送信後、クラーケンのジェシー・パウエルCEOがコインテレグラフに対し、「シルバー・ミラー法律事務所に停止通告書を送る」とつたえ、次のように語った。

「今回の件をお知らせいただき感謝する。現在、クラーケンに対する集団訴訟は起こされていない [...] 訴訟教唆に関わる弁護士は常に存在する。そして常に、自身の決断に責任を持ちたがらないトレーダーが存在する」

必要なのはルールの増加よりも明確さ

 今後の仮想通貨と法律の関係についての質問にシルバー弁護士は、頭脳流出を防ぐため、規制と革新は密接に連携する必要があると強調した。したがって、シルバー弁護士は必ずしもルールや規制を増やすべきだと考えているわけではないという。その代わり「明確さが必要だ」と語る。

 シルバー弁護士が求める明確さは、米国連邦レベルから一体となってもたらされるべきという。現在のシステムでは、アメリカ証券取引委員会(SEC)や米金融犯罪取締執行ネットワーク(FinCEN)、米商品先物取引委員会(CFTC)、アメリカ合衆国司法省(DOJ)、アメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)から異なるルールや定義が伝えられている。

仮想通貨分野での政府関与の拡大

 昨秋の仮想通貨に対する関心が高まるまでの数年間、シルバー弁護士は講演を行った会議ではいつも野次られたという。「ブーイングでステージから退場させられ、すべてユーティリティートークンだと言われ、私は間違っている、革新をつぶそうとしている、私はひどい人間だ」と言われもしたが、今では、人々は耳を傾けてくれるようになったと語る。

 シルバー弁護士は、ビットコインの価格上昇と彼の法律事務所による数々の訴訟が、最近の政府による仮想通貨界への監視の高まりの直接原因だと考えている。シルバー弁護士はこの考えが、事実よりもうぬぼれだと思う人もいることを認めるが、「それには同意しない」と述べた。

「私が一切訴訟を起こさなければ、これはすべて起こらなかっただろう。すなわち、あらゆる政府措置は基本的に、ディヴィッド・シルバーとシルバー・ミラー法律事務所、シルバーミラー法律事務所が起こした訴訟が正しかったこと、そして、自分たちが賢い無政府主義者で、詐欺や資金販売、証券の未登録販売をうまくやり遂げられると考えた人々は何か間違ったことをしていたことを示している」

 シルバー弁護士はコインテレグラフへの補足メールの中で、政府と他の弁護士の仮想通貨に対する立場の変化に関して、「報われた気がする」という感想を述べた。

仮想通貨の未来、訴訟の増加

 仮想通貨分野の未来について、シルバー弁護士は自称「ブロックチェーン技術信奉者」だ。未来の仮想通貨におけるシルバー弁護士の役割について質問したところ、シルバー弁護士は、野次でステージから退場させられることがなくなり、人前でのスピーチを楽しんでいるという。仮想通貨界と、現在行っている多数の仮想通貨集団訴訟で、この比較的新しい、従来とは異なる未知の金融界でのあらゆる行動に対して、仮想通貨企業に責任を負わせ続けることが彼の役割だと語る。

「損害を突ついて仮想通貨企業に責任を負わせることで愛を示すことは、一切悪いことではない」

 シルバー・ミラー法律事務所は、仮想通貨関連の集団訴訟をこの先も絶え間なく続けるつもりかどうかという質問には、「イエス」と回答した。とはいえ、シルバー弁護士は「正しいことをする企業を追跡しようとはしない」と付け加える。

「私は取引所ジェミニを訴えたことはない。コインベースをプラットフォーム問題で訴えたことはない。あることで訴えられたからといって、その会社が合法ではないとは限らず、ブライアン・アームストロング氏と私が親友になれないというわけではない」