米商品先物取引委員会(CFTC)のジャンカルロ委員長は、11月7日の講演の中で、分散型台帳技術(DLT)を含む技術的進歩が規制当局の在り方に変化をもたらすと語った。

ジャンカルロ氏は、ジョージタウン大学ロースクールで開かれたフィンテックに関するカンファレンスで講演。DLTやビッグデータ、自動データ解析、人工知能(AI)といった新興デジタル技術が、金融規制やマーケットへ与える影響について語った。

こういった新興技術を取引市場に適用する点について、ジャンカルロ氏は「私たちは、標準的タスクの大部分がマシンによって管理される世界の入り口に立っている」と語り、自動化とDLTを組み合わせることで、コスト削減を容易にし、取引の照合・処理・清算を改善することができると指摘した。

ジャンカルロ氏は、高次コンピューティング技術は、コモディティおよび金融デリバティブ市場において「ユビキタス(どこにでもあるもの)」になるだろうと指摘。CFTCやほかの規制当局がAIの進歩に追いつく必要があると述べた。

CFTCはデータ収集や自動解析、データドリブン型の政策適用に積極的でなけれなならいとも語り最終的には「定量的規制機関(quantitative regulator)」になるべきだと強調した

ジャンカルロ氏は、データ中心の規制について、「定量的規制機関になるということは、人間の判断とマーケット情報を置き換えることを意味するのではなく、人間の判断を強化するということだ」と話す。

「当局のスタッフが反復的で価値の低い仕事から解放され、専門家の判断と業界知識を必要とする高付加価値な活動に集中することになるだろう。効率的に、アルゴリズム的に解析された質の高いデータにより、人間の判断がより広く展開できるようになる」

分散型台帳技術による規制の未来

ジャンカルロ氏は、将来的に分散型台帳技術(DLT)が規制当局のデータ分析や規制の適用をサポートする存在にもなると語る。

「ルールブックがデジタル化され、コンプライアンスがますます自動化されたり、スマートコントラクトが事業運営に組み込まれることになれば、リアルタイムのDLTのネットワークを通じて規制当局への報告が行われるかもしれない」

ジャンカルロ氏は仮想通貨・ブロックチェーンに対して、規制一辺倒ではない、柔軟な考えを示している人物だ。2月の議会公聴会では仮想通貨・ブロックチェーン技術を阻害しないような規制枠組みが必要だと語っている。

インターネットの発展でも見られたように、『テクノロジーの精霊』を元の壺に戻すことはできない。仮想通貨は決済や金融、経済活動にパラダイムシフトを引き起こしている。監督機関がこれらを無視することは責任ある対応と言えない