格付け会社S&Pグローバルは新たな報告書で、仮想通貨とマクロ経済との関係があるかどうかを検討した。その結論は「おそらく」あるというものだが、その詳細は仮想通貨の冬や業界の短い歴史などの「特異的なイベント」も影響していて複雑だ。

S&Pの報告書は、仮想通貨は伝統的な資産とは異なる価値提案であり、異なるパフォーマンスドライバーを持っていると序文で指摘しているが、仮想通貨エコシステムとマクロ経済の相互依存関係は避けられない。S&Pのアナリストたちは、S&P仮想通貨ブロードデジタルマーケットインデックス(BDMI)を他の財務指標と比較し、5つの領域でその相互依存関係の程度を評価した。

報告書によれば、「仮想通貨はマクロ経済変化の影響を免れてえない」が、仮想通貨経済において特異性が果たす役割は重要であるという。

「一般的に、仮想通貨市場は拡張的な金融政策の期間には好調に推移しているが、因果関係を確立することはできない。仮想通貨の大幅な変動は、金融政策とは直接関係のない要因、例えばFTX崩壊の後に発生したことがある」

また、仮想通貨と景気後退期待との関係も非常に特異的であるが、変数は異なる。この場合、利用者の居住地や現地法定通貨の安定性が要因となる。仮想通貨の魅力は、法定通貨のパフォーマンスに依存する。それにもかかわらず、報告書では「一般的な経済的ショックに耐える仮想通貨の能力」に関連して、「仮想通貨を含む資産管理商品」が立ち上げられたと述べている。

仮想通貨のインフレヘッジとしての役割については、明確な答えがない。報告書の著者らは、「これは複雑な話題であり、データが短すぎるため、自信を持って取り組むことができない」と書いている。ここでも、地理的要因や特異性が影響を与えていると述べている。仮想通貨がインフレに対する抵抗力が、不安定な法定通貨を持つ新興市場での人気の要因だ。著者らはまた、仮想通貨市場のサイクルが、マクロ経済とは無関係の原因を持つことがあることにも言及している。

アナリストたちは、仮想通貨とドルの強さとの関係については、より確信を持って述べている。両者の間には明らかな負の相関関係があるが、因果関係の可能性を支持するより詳細な検証はない。「相関関係は因果関係の代わりにはならない」と報告書は書いている。

CBOEボラティリティ指数(恐怖指数とも呼ばれる)との関係で、仮想通貨の金融ストレスと市場の変動への反応が示されている。報告書によれば、伝統的な経済で不安定性への恐怖が高まると、仮想通貨の価格は下落する。3月の銀行危機は、一部のステーブルコインのペッグが外れる原因となり、仮想通貨に友好的な銀行は仮想通貨の特異性にさらされたと、アナリストたちは指摘している。

多くの仮想通貨支持者が、インフレへの抵抗力などのマクロ経済要因を仮想通貨の主要な強みとして挙げていることを考慮すると、この報告書の明確な結論の欠如は、それ自体が示唆に富んでいる。アナリストたちは、仮想通貨とマクロ経済との関連性は仮想通貨の機関投資家による採用が増えることで高まる可能性があると予測している。