サトシ・ナカモト氏が10年前のビットコインネットワーク立ち上げ時に構想していた仮想通貨モデルを構築するため、ある仮想通貨会社が、米国の大学と覚書を交わした。

ソブリン・ウォレット(SovereignWallet)社は、上記プロジェクトを「MUIメタブロックチェーン」と命名、南カリフォルニア大学ビタビ工学部と共同で開発を進めて行くと発表した。

ビットコインから得られる利益は「大資本を有する少数のマイナーに著しく集中しており[中略]、特に、最も計算力に優れたコンピューターを所有するマイナーに集中している」。このような状態が続く中、ソブリン・ウォレット社と南カリフォルニア大学ビタビ工学部は共に、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者フリードリヒ・ハイエク氏が70年代に概念化した分散型貨幣制度のようなシステムを実現しようと目論んでいる。 ハイエク氏は『貨幣発行自由化論』と題した著書の中で、市場と公衆が独自の通貨を発行する自由を持ち、政府発行の通貨と直に競争するプラットフォームを提唱していた。

ソブリン・ウォレット社と南カリフォルニア大学ビタビ工学部は、「リライティング サトシ(Rewriting Satoshi)」という仮題をつけたホワイトペーパーの発行を予定中だ。同ホワイトペーパーは、ビットコインの一番最初のブロック「ジェネシスブロック」誕生12周年記念日の21年1月3日に発行される予定だ。

サトシの構想を完成させる

ソブリン・ウォレット社によると、MUIメタブロックチェーンは、ナカモト氏の哲学をすべて採り入れた初のブロックチェーンとなる。同社は、ブロックチェーン経由で新たな仮想通貨を発行することは一見簡単に見えるかもしれないが、新しいメインネットの設計・配置には「数百万ドルの資金と長期的技術開発が必要だ」と語る。一般の人々が、セキュアなスマートコントラクト・コードを書くことは不可能であり、トークンのローンチでさえ一筋縄ではいかない作業だ。

ソブリン・ウォレット社が開発する分散型貨幣システムの理論的根拠と、同システムが世界に利益をもたらす根拠を説明したブログ記事の中で、ソブリン・ウォレット社のチームは、次のように述べる。「もし誰もが、通貨を発行し、仮想通貨取引の調整機能で価格競争力を調整できれば、我々は、適切に地域間の経済差や企業間の競争優位性を調整することができるようになり、富がより均等に分配される社会が誕生する」

ソブリン・ウォレットはこちらから利用可能

MUIメタブロックチェーンにより、分散型暗号化技術と一体化した「セントラルバンク」アルゴリズムベースのステーブルコインが誕生するだろう。ソブリン・ウォレット社の全サービスが統合された暁には、同社の目的は、独自のブロックチェーンを一切構築する必要なく「誰もが独自の地域通貨を、安定した通貨に固定された状態で、簡単に発行できる」ようにすることだ。

ソブリン・ウォレット社は同社のWebサイト上で、同社のハイブリッドな取り組みを「ブロックチェーン 3.0」と表現する。「ブロックチェーン 3.0」は、ブロックチェーン1.0とブロックチェーン2.0で露呈した複数の落とし穴(スマートコントラクトにおける膨大なエネルギー消費・トランザクションの遅延・プログラミングエラー・セキュリティ欠陥など)を排除しつつ、ブロックチェーン技術の最新の進化をフルに生かすネットワークだ。

自己主権型金融時代

ソブリン・ウォレット社は、MUIメタブロックチェーンを、「自己主権」型金融時代実現という同社の使命における最新の一歩と位置付けている。

昨年コインテレグラフが報じた通り、ソブリン・ウォレット社は、後のMUI メタブロックチェーンの構成要素と成る製品を一通り既に発表済みだ。

同社が最初に発表したのは、社名の元となった、モバイル仮想通貨ウォレット「ソブリン・ウォレット」だ。ソブリン・ウォレットによる資金送金は「テキスト送信」と同じ位簡単であるとの説明がなされた。同社のネットワーク・エコシステムで使用されるのは、同社の独自仮想通貨「 MUIトークン」だ。なお、同社によると、MUIトークンの価値は、自動安定化ツール「セントラルバンク」アルゴリズムによって保護されているため、MUIトークンは他の資産よりも優れているという。

総体的に見て、ソブリン・ウォレット社のモチベーションは、富がより均等に分配されるようにすること、そして金融包摂だ。すなわち、銀行口座を持たず、多様な言語を話す、数億人の人々が自らのニーズに合致した仮想通貨を作り出す機会が持てるエコシステムを構築するのである。送金市場で見られがちな、送金関連の遅延を減らすだけでなく、同社は、送金手数料の低減も目指している。

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