イーサリアムのすべてのコア開発者が参加した電話会議が3月6日に開催され、ASIC(特定用途向け集積回路)への耐性を持つ「ProgPoW」を議論した。3時間にわたる会議でも、ProgPoWについてはコミュニティ内で結論はでなかった。

会議は約3時間行われ、そのうち2時間はProgPoWがテーマだった。ProgPoW推進派と反対派の両方が参加していた。推進派にはProgPoWの作成者の1人であるクリスティ・リー・ミナハンなどが含まれている。

ProgPoW反対派には、Gnosisの共同設立者であるマーティン・コッペルマン氏や、Thesis.coの創設者であるマット・ルオンゴ氏が含まれている。

「ProgPoWを実装するがアクティブ化しない」という妥協案を提案した、ベンジャミン・ディ・フランチェスコ氏も出席した。

ProgPoWを巡る議論

最初の議論では、独立したオーディタ―と研究者によって指摘された2つの脆弱性を巡り、ProgPoWの技術的実効性について話し合われた。

推進派のミナハン氏は修正が容易であり、特殊なシナリオでのみ悪用されると指摘した。コア開発者は同意しているようで、そのうち1人はProgPoW開発者が問題を修正した速さを称賛していた。

ProgPoWの反対派は、技術的なメリットについては議論しなかったが、脆弱性の発見はマイニングアルゴリズムを変更する固有のリスクを指摘した。

4月頃にビットメインのE3マイナーや4ギガバイトのRAMを備えたGPUがイーサリアムのマイニングに対応できなくなるため、参加者はイーサリアムのハッシュレートの低下の影響について議論した。ミナハン氏が出したペーパーは、イーサリアムのハッシュレートの40%がビットメインのASICであると推定している。会議では、この問題に対処する方法については、明確なコンセンサスは得られなかった。

反対派のルオンゴ氏は、ProgPoWを使用しない主な理由として、コミュニティの分裂の可能性を強調した。ビットコインキャッシュの事例を例に出し、メリットが何であれ、反対意見を無視し、解決策を押し通すことになれば、コミュニティを破戒することになるだろうと述べた。

コッペルマン氏はASICオペレーター側に立ち、ASIC耐性はイーサリアムにとって有害な変化であると主張した。

「私の考えでは、非常に明確な利点があるか、もしくはネットワークの存続が危うくなっている場合、イーサリアムがユーザーに悪影響を与える変更を行う必要があるケースがあるだろう。それに当てはまらない限り、それらの決定は下されるべきではない。ProgPoWでは、なぜASIC耐性が良いのかについて明確ではない」

またProgPoW反対派のアミーン・ソレイマニ氏は、イーサリアムがまもなくプルーフ・オブ・ステーク(PoW)に移行する中で、PoWにリソースを割くことは無駄であると主張した。

コア開発者の中からは、イーサリアム2.0への移行はまだ少なくとも2年先にあるとの反応もあった。イーサリアム1.xイニシアティブのリーダーであるジェームズ・ハンコック氏は、2.0に注意を払うよりも、1.0チェーンの機能を維持することが1.xイニシアティブの核となると発言した。

開発者の中からは、ProgPoWを各イーサリアムクライアントに統合するには、1人の開発者で最大1週間かかるとの指摘もあった。

しかし、これらの議論で明らかになったのは、イーサリアムコミュニティの中ではProgPoWについて意見が一致していないことだ。

ミナハン氏は、コインテレグラフに次のように語った。

「イーサリアムコミュニティが自問する必要がある本当の質問は次のことだと思う。ASIC耐性は私たちが望むものなのか?もしそうなら、ソリューションは開発することができる」

今回の会議のモデレーターであるハドソン・ジェイムソン氏は、ProgPoWを修正し、「Ethash 2.0」という名前で新しいEIPにするソリューションを提案したが、すべての開発者が完全に同意しているわけではなく、これが実際に行われるかどうかは不明だ。

会議の終わりに、ハンコック氏はEthashの危険性についてコミュニティを教育するためにより多くの努力が行われるべきだと強調した。

イーサリアムの創設者であるヴィタリック・ブテリン氏も会議には参加したが、ProgPoWの議論では発言していなかった。