かつて「伝説のディーラー」と呼ばれた参議院議員(日本維新の会)の藤巻健史氏は、仮想通貨についてまずは円暴落やハイパーインフレの際の避難通貨として真価を発揮すると予想した。しかし、藤巻氏にとって、仮想通貨は避難通貨としての役割だけを担っているわけではない。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に日本企業が今から対抗する手段として、仮想通貨は大きなポテンシャルを秘めていると藤巻氏はみている。それはなぜだろうか?また、最近は、プライバシー問題で非難を浴びるGAFAだが、それが仮想通貨普及のきっかけになるということないのだろうか?コインテレグラフ日本版のインタビューに藤巻氏が応じた。

GAFA

GAFAは米国企業の時価総額ランキングトップ5にすべて入っている。ビッグデータやAI、IoTの開発競争が激化し、今後は情報の勝負になると言われている昨今、日本の時価総額ランキングは自動車メーカーや銀行、通信大手などが20年以上上位に顔を出しており、様変わりしたとは言い難い状況だ。「情報」での競争では大きく出遅れている感がある。

藤巻氏は、情報収集能力で劣ることの深刻さについて、アマゾンを例に出して次のように解説した。

「顧客がどういう興味を持っているのか、価格帯にあるのか、すべての情報があそこに集まっちゃうわけですよ。そうするとその辺の商店は太刀打ち出来ない。情報があればその人向けの宣伝ができる。いわば既製服ではなくテイラーメイドで服を作ってしまう。そうなると敵わない。」

顧客の趣味や思考、好みの価格帯などあらゆる情報を蓄積することは、マーケティング力の強化につながる。「その人に合った商品を作れる」ということは「ものすごい武器」だ。

藤巻氏によると、唯一GAFAに対抗できるのは中国。「中国企業も国も個人情報保護に対してあまり興味がない」ことに加えて、「国民も情報はどんどん流してしまえば良いという感じのカルチャー」なので、情報を集める分野でGAFAに対抗できる素地があるという。

一方、日本は個人情報を出したくない国民性もあるし、GAFAとの差は広がるばかりと藤巻氏は懸念している。

(GAFA対抗手段としての仮想通貨について語る藤巻議員)

20億人の市場

藤巻氏は、ここまで巨大化したGAFAに対抗するには「GAFAを使わない決済システム」が鍵になると指摘。そしてそのような決済システムの要になるのが仮想通貨とみている。そもそもGAFAのサービスで決済するには、クレジットカードが必要。日本では銀行に預金口座を持ち、それに紐付いたクレジットカードを持っているのが当たり前になっているが、実は世界では銀行口座を持っていない人たちは20億人もいると言われている。いわばGAFAの決済システムが取りこぼしている巨大市場。GAFAの決済サービスを使えない人たちが20億人もいるというわけだ。一方、仮想通貨は銀行口座なしで売買できる。

「仮想通貨というものを使って決済システムができれば、GAFAに情報が行かないわけですよ。そうすれば情報の独占は防げる(中略)アメリカに対抗しうるシステムができるのではないかな」

また、仮想通貨の分散型台帳技術が可能にするのは、無名の企業でも信頼を勝ち取れるということだ。アマゾンにクレジットカード情報を入力するのはアマゾンを信頼しているからだが、ブロックチェーンでは取引の改ざんができない、もしくは改ざんコストがでかいので、ブロックチェーンを使っていることが信頼につながる。藤巻氏は「仮想通貨が広がればインターネット販売における業者間の格差がなくなる」と指摘している

「例えばフィリピンで銀行口座を持っていない人々は、世界の経済圏にアクセスできないですよね?例えばフィリピンの人がバナナを一房売りたいと言っても、私はどうやってお金を払えばいいか分からない。(中略)一方、仮想通貨はできますよね。お互いにスマートフォンを持っていればよい。商社などが間に入るより直接取引できる。そうなると世界が小さくなって、貿易企業が増えると思う。」

藤巻氏は、「避難通貨としての仮想通貨」の次には決済手段としての仮想通貨の普及が進むと考えている。

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プライバシーは結果論

最近は、GAFAの勢いにも陰りが見え始めているという見方も出ている。例えばGAFAの一角のフェイスブック。2018年は個人情報の流出問題に揺れた。英データ分析会社ケンブリッジ・アナリティカがフェイスブックの最大8700万人分の利用者データを使い、2016年の米大統領選とブレグジット(英国の欧州連合離脱)をめぐる国民投票の結果に影響を与えたとされ、スキャンダルになった。フェイスブックのザッカーバーグは2018年の米議会の公聴会に呼ばれ、謝罪に追い込まれた。

(引用元:Reuters 米議会の公聴会に臨むフェイスブックのザッカーバーグCEO)

こうした中、欧州では米ハイテク大手からプライバシーを守るための動きが加速。先月22日にはフランスのデータ保護機関「情報処理・自由全国委員会」(CNIL)が、グーグルによる個人情報の収集方法を問題視し、同社に5千万ユーロ(約62億円)の制裁金を科すと発表した。日本でも先月、総務省がプライバシーの保護を目指して電気通信事業法が定める「通信の秘密」などの規制を海外企業にも適用する検討に入ると報じられた

各国で高まるプライバシー保護への意識。中央の管理者によるデータ管理の問題が露呈されたと捉え、仮想通貨にとって追い風とは考えられないのだろうか?藤巻氏は懐疑的だ。

『プライバシーを守りたいから仮想通貨を使う』という風には思っていない。仮想通貨が使われることによって、結果としてプライバシーの保護(になる)。」

前回と同様、藤巻氏が注目するのはあくまで経済原理だ。目の前にあるのは、銀行口座を持っていない20億人の市場。「グローバルな取引は今と比べて段違いに伸びる」ことになり、「プライバシーの問題とか関係なく、グローバルなビジネスをやろうとすると、仮想通貨を使わざるを得なくなる」。市場が大きくなればなるほど「結果として個人情報が(一箇所に)集積されないよね」という流れだ。藤巻氏は、各国のプライバシー規制強化についても「法律等で抑えようと思ってもたかがしれている」と対GAFAとしての効果は限定的ではないかという見方を示した。

 

「プライバシー保護」のルートではなく「20億人のグローバル市場」というルート。GAFAへの対抗手段として仮想通貨がどんな材料をきっかけに脚光を浴びるか占う上で一つの重要な区分になるかもしれない。