米財務省のグレアム・スティール次官補(金融機関担当)は6月13日、テキサス州で開催された決済に関するカンファレンスで、連邦準備制度理事会(FRB)のFedNowシステムや中央銀行デジタル通貨(CBDC)について語った。同氏はデジタルドルの設計において匿名性やプライバシーを考慮すべきだと語った。

スティール氏は、リテールCBDCの課題の1つは、利用者のプライバシーを維持しながら違法取引を最小限に抑えることだと指摘した。利用者の匿名性をどの程度保護するかについても検討すべきだと述べ、「プライバシーと匿名性をどの程度保持できるかを検討し、リテールCBDCの設計においてそのような保護を可能にする技術や方法を探ることが重要だ」と語った。

スティール氏は、CBDCのメリットとデメリットを比較検討し、「競争力のある決済環境」を促進する可能性があるとした。一方で、リテールCBDCはFRBによって直接サポートされ、銀行での取付騒ぎの際に消費者により安全な選択肢を提供することができるが、「民間部門の融資機能を不安定にする」とスティール氏は指摘した。最近の銀行危機を例に挙げ、「銀行システム外での預金以外の代替手段へのアクセスが、銀行の取り付けの性質と速度を変えた可能性がある」と語った。

また、米国は「まだCBDCを追求するかどうかを決定していない」とスティール氏は述べ、財務省主導のグループが米国でのCBDCの潜在的な影響を評価しているとした。評価内容には、「世界的な金融リーダーシップ、国家安全保障、プライバシー、不正金融、金融包摂に関連する政策目標」が含まれているという。

FRBの即時決済システム「FedNow」については、決済業務に複数の選択肢があることが、「決済において選択肢と競争を促進し、新たな決済サービスや機能の開発を奨励し、決済システムのレジリエンスを向上させる」とスティール氏は考えている。

FedNowには政治的な抵抗もある。大統領候補のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏とロン・デサンティス氏は、同システムがCBDCを実現する道筋を作り、政府に過剰なコントロールを与えると主張して反対している

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン