欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁は2日、欧州議会でスピーチを行い、デジタルユーロ導入の可能性に触れた。またフェイスブックが主導する仮想通貨リブラなど、ステーブルコインの台頭についても、そのリスクを注視する考えを示した。

ラガルド氏は今年11月にECB総裁に就任したばかり。今回は総裁就任後、はじめて欧州議会に出席した。

ラガルド氏は、ステーブルコインや分散型台帳技術(DLT)といった新しいトレンドに対して、ECBがそのリスクに注意を払いつつ、「マネーの未来」を形作る必要があると語った。

ステーブルコインについては、「決済システムの安全性や効率性、また金融システムの健全性や安定性を損なわないようにする必要がある」と指摘。リスクベースアプローチのもとで、「同じビジネス、同じリスク、同じ規則」という金融監督のルールをステーブルコインにも適用する考えを示した。

また日本銀行との共同プロジェクト「ステラ」についても言及。DLTを活用し、「より安全で、より速く、より安価な金融取引を促進できるイノベーションを調査している」と語った。

デジタルユーロ導入は「さらなる分析が必要」

ラガルド氏は、スピーチの最後にデジタルユーロ導入の可能性にも触れた。中央銀行デジタル通貨(CBDC)導入で「市民が日常の取引で中央銀行のマネーを使えるようになるだろう」と語った。ただし、ECBとしてはCBDCの価値について、独立して評価を行っていく姿勢であることを強調。CBDCがもたらすリスクについても留意する考えを示した。

「(CBDC導入で)金融政策が行われた際、実体経済に伝達される方法を変えることができる。またグローバルな金融システムの機能とその安定性にも影響を与える可能性がある。したがって、中央銀行デジタル通貨とその設計については、さらなる分析が必要だ」

その上で、ラガルド氏は「私たちの究極の目標は、より安全で革新的な統合されたペイメントをユーロで促進することだ」と語った。

ラガルド氏は昨年11月、前任のIMF(国際通貨基金)専務理事の時に、国際社会が中央銀行デジタル通貨の可能性を考慮する必要があると発言していた。

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