13年にノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー氏が21日、『新たなお金の昔ながらの魅力』と題された記事で、仮想通貨のことを「繰り返されるオルタナティブ通貨というアイデアの最新例」と呼んでいる。

 「お金に関する新たなアイデアは、説得力があって分かりやすい物語が付きもので、革命のようなものに思える」と語るシラー教授は、歴史上に登場してきたオルタナティブ通貨のさまざまな種類について、概要を説明している。シラー氏はまず、ジョサイア・ワーナー氏が1827年に開いた、労働時間を金融商品として販売するシンシナティ・タイム・ストアの「レーバーノート」について言及する。この通貨は長続きせず、ストアは1830年に閉店した。

 シラー教授は、カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスも触れている。この2人の人物は、私有財産制が排除された共産主義の状況下では、必然的に「売買の廃絶」がもたらされると主張していた。

 より現代に近い事例として、シラー氏は「テクノクラシー」と呼ばれる大恐慌期の運動について言及する。テクノクラシーは、当時は金(ゴールド)に裏付けられていた米ドルを、エネルギーの尺度に置き換えることを提案した。書籍『テクノクラシーのABC』では、エネルギーを基礎とした経済を創設するアイデアが提起されている。

 話が現代に達すると、シラー氏は仮想通貨について触れ、先例と同様に「社会におけるある種の革命への深い憧れ」と結びついていると述べる。また、仮想通貨の仕組みに対する一般の人々の全体的な理解不足が、ある種の魅力を生み出しているとも指摘する。

「実際のところ、コンピューターサイエンス分野以外の人々は、仮想通貨がどのように機能しているか誰も説明することができない。その不可解さが排他的なオーラを生み、この新たな通貨に魅力を与え、支持者らを革命の熱情で満たしている」

 シラー教授は、分散型という仮想通貨の特質が基本的な要因となって、政府を「不平等と戦争の元凶」と見なす人たちを引き付けていると認識する。しかしシラー教授は、「これはどれも新しいことではなく、過去のマネー革命と同様に、説得力のある話だけでは不十分だろう」と結論付ける。

 ロバート・シラー氏、ユージン・ファーマ氏、そしてラース・ピーター・ハンセン氏は13年に、「資産価格の実証的分析」でノーベル経済学賞を受賞した。シラー教授が同僚のカール・ケース氏と共に開発したケース・シラー指数は、現在、スタンダード&プアーズ・フィナンシャル・サービシーズで利用されている。

 過去数週間、仮想通貨はビル・ゲイツ氏やウォーレン・バフェット氏など、テック業界や金融業界の大物たちから公に批判されてきた。バークシャー・ハサウェイのチャーリー・マンガー副会長は、仮想通貨のトレーディングやディーリングを、「生まれたばかりの赤ちゃんの脳」に例えた

 コインテレグラフの記事「専門家の見方」で、国際ビジネス弁護士のアンドレア・ビアンコーニ氏は、そのような悲観的で大げさな批判は、はねつけてしまうべきと述べた。ウォールストリートに仮想通貨の理解と容認を期待するのは、「ラグビー選手にクラシックバレエの『パ・ド・ドゥ』を踊るよう求める」ようなものだと言う。