移動平均乖離率は、株式投資のテクニカル分析で使われる指標の1つだ。株価と移動平均線を使って求められる数値であり、株の売買タイミングを判断するときに活用できる。
乖離率は証券会社が提供するツールを使えば簡単に確認できるので、初心者でも実践しやすい方法だ。今回は乖離率の意味や活用方法、取引タイミングの具体例などを解説する。
乖離率とは
乖離率(かいりりつ)とは、株価が移動平均線からどれくらい離れているかを表す指標だ。株価が移動平均線より上にある場合はプラス、下にある場合はマイナスとなる。
株価が移動平均線から大きく離れるとその状態が修正され、再び株価は移動平均線に近づく傾向にある。そのため、乖離率が大きなプラスになると「買われすぎ」、大きなマイナスのときは「売られすぎ」の状態にあると判断できる。
株取引をするときに乖離率に注目すれば、高値掴みや安値売りを回避できる。また、トレンドの転換点や売買タイミングを見極めやすくなる。
乖離率を確認する際は25日移動平均線が使われることが多く、一般的には±15~20%程度が売買タイミングを判断する目安といわれている。
乖離率の計算方法
移動平均乖離率は、以下の計算式で求められる。
乖離率(%)=(当日の終値-移動平均線の値)÷移動平均線の値×100
たとえば、当日の株価(終値)が1200円、25日移動平均線の値が1000円の場合、乖離率は+20%((1200円-1000円)÷1000円×100)だ。
当日の株価(終値)が800円、25日移動平均線の値が1000円であれば、乖離率は-20%((800円-1000円)÷1000円×100)となる。
乖離率は証券会社のツールで確認できるため、実際には自分で計算する必要はない。ただし、計算式を知っておいたほうが乖離率の意味を理解しやすくなるだろう。
乖離率の活用方法
乖離率は、株の売買タイミングを判断するときに活用できる。
株価が移動平均線から下に大きく離れ、乖離率が大きくマイナスとなったときは買いタイミングだ。乖離が修正される過程で株価が上昇することが多いため、値上がり益の獲得が期待できる。
反対に株価が移動平均線から上に大きく離れ、乖離率が大きくプラスになったときは売りタイミングだ。乖離が修正される過程で、株価が下落トレンドに転換する可能性がある。
乖離率を使った取引タイミング
ここでは実際の株価チャートを使いながら、移動平均乖離率を使った取引タイミングの具体例を解説する。
買いタイミングの具体例
まずは買いタイミングの具体例を見てみよう。以下は昭和電工(4004)の株価チャート(3カ月・日足)で、チャート下の折れ線グラフが移動平均乖離率だ。
出所:SBI証券 昭和電工の株価チャートより作成
2021年8月23日の取引終了後、同社は公募増資と第三者割当による新株発行を行うことを発表した。1株あたり利益の希薄化を警戒したことで売り圧力が強まり、株価は大きく下落した。
25日移動平均乖離率は短期間で大きく変動し、マイナス15%を超えている。株価下落がいつまで続くがわからないため、乖離率の変動が落ち着いてから買いを入れるのがコツだ。
上記の場合、乖離率が右肩上がりに転じた2021年9月6日前後が買いタイミングとなる。その後株価は25日移動平均線に近づくように上昇を続け、2021年9月21日には25日乖離率が0%近くまで戻っている。
売りタイミングの具体例
続いて売りタイミングの具体例を見てみよう。以下は日本通信(9424)の株価チャート(3カ月、日足)だ。
出所:SBI証券 日本通信の株価チャートより作成
2021年8月23日以降、25日移動平均乖離率のグラフが右肩上がりとなり、短期間のうちに乖離率は20%近くまで上昇している。株価チャートからも、株価が大きく上昇していることがわかる。
乖離率の上昇が落ち着き、グラフが右肩下がりとなった2021年9月6日前後が売りタイミングだ。その後株価は下落基調となり、2021年9月21日には25日乖離率はほぼ0%に戻っている。
乖離率を活用する際の注意点
過去の乖離率をチェックして傾向をつかむ
先程も触れたように、25日移動平均線を活用するときは「乖離率±15~20%」が1つの目安となる。ただし、銘柄によって乖離率の傾向は異なる。対象銘柄の過去の乖離率をチェックして、通常は何%以内に収まっているかを把握することが大切だ。
乖離率が大きく変動し、通常の範囲から大きく外れていれば、売り買いを検討するタイミングと判断できる。
投資スタンスに応じて移動平均線の日数を使い分ける
株式投資で乖離率を活用する場合、一般的には25日移動平均線が使われる。しかし、投資スタンスによっては、移動平均線の日数を使い分けることを検討しよう。
たとえば、通常の中長期投資であれば、25日移動平均線で問題ないだろう。しかし、数年単位で保有することを前提とした長期投資であれば、75日移動平均線を使用するのも選択肢といえる。
複数の移動平均線を試してみて、自分に合ったものを使うといいだろう。
ローソク足チャートも併せて確認する
乖離率を活用するときは、ローソク足チャートも併せて確認しよう。乖離率は「買われすぎ」「売られすぎ」を判断するときに有効だが、株価はさまざまな要因で変動するため万能とはいえない。
値動きを予測する精度を上げるためにも、ローソク足の形状やパターンといった他のテクニカル分析も併用しよう。
ファンダメンタル的要因も確認する
短期間で株価が大きく動くときは、相場動向や業績といったファンダメンタル的要因に影響を受けているケースが多い。乖離率がマイナスに大きく変動した場合、変動要因によっては長期にわたって株価が低迷する可能性もある。
乖離率だけに注目せず、株価が大きく動いた理由を確認してから投資判断することを心掛けよう。
移動平均乖離率を株の売買判断に取り入れよう
移動平均乖離率に注目すれば、初心者でも株の売買タイミングを判断しやすくなる。今回は株式投資がテーマだが、仮想通貨取引においても乖離率は同じように活用できる。株価と移動平均線の関係を理解して、乖離率を投資判断に役立てよう。
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