自民党の新国際秩序創造戦略本部は、年内に政府に対して提言する「中間とりまとめ」を策定した。その中で中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入に向けて、政府と日銀に関連法改正の準備を促したことがわかった。日経新聞が報じた。

コインテレグラフが報じているように、法改正には「超高速スケジュールでも2〜3年はかかる」とされており、今回の中間とりまとめには中国が先行するCBDCへの危機感がにじみ出ている。

新国際秩序創造戦略本部は2020年6月に、新型コロナウイルス収束した後の日本経済のスタンスを議論するために、本部長として岸田文雄政調会長が就任した。

CBDCについては、中国がデジタル人民元発行に向けて着々と準備を進める中で、日銀がデジタル人民元の実証実験の状況を把握し、米国や欧州と協力しながら「所要の法改正に係る整理」をするように提案した。

この法改正は日銀法改正を念頭に置いたもの。日銀法では日銀が銀行券を発行し、財務省が紙幣の製造や手続きを承認する。ここにデジタル通貨の発行について加える意向だ。

日本のCBDCを巡っては7月17日に、日本政府が経済財政の基本方針である「骨太の方針」に、「各国と連携しつつ検討を行う」と盛り込まれた。さらには日銀が決済機構局内にデジタル通貨グループを新設。欧州中央銀行(ECB)や英中銀などとのデジタル通貨の共同研究をを進めている。

日銀は現時点では発行する予定はないとのスタンスだが、組織の編成し、研究に本腰を入れている段階だ。

CBDCについては仮想通貨・ブロックチェーン業界からも提言が出ている。日本ブロックチェーン協会(JBA)代表理事で、bitFlyer BlockchainのCEOを務める加納裕三氏は平井卓也・デジタル改革担当大臣を訪問し、日本政府としてブロックチェーン戦略を推進するよう訴えた。この中でCBDCの試験導入についても触れ、日銀によるデジタルマネーを1年の期限付きで試験的に導入する案を示している。

欧州でもCBDCの本格検討は進められる予定だ。既報の通り、ECBは2021年半ばにもCBDCであるデジタル・ユーロの調査・検討を本格化することを明らかにした。

ECBは、2日に発表したレポートの中で、デジタル・ユーロが作られる場合にいくつかの満たすべき要件を記載。民間の決済ソリューションとの相互運用性や、無料で、プライバシーに配慮した現金と同等の特徴を持つことなどを挙げている。

ただ、レポートの中でもCBDCをどのような形で設計するかについては記載されなかった。

6G、サイバー攻撃への対策も

「中間とりまとめ」では、政府や企業へのサイバー攻撃者を特定し、攻撃を防げるようにする法改正も求めた。

また、将来予想される通信規格である「6G」についても、官民で集中投資し、世界に先駆けて商品化と国際標準の策定を進めるべきだと提言。このほどNTTドコモがNTTの完全子会社化されたことは、「5G」で世界に出遅れたことが要因だったとされている。