OpenAIのサム・アルトマン氏が手がけるデジタルIDプロジェクト「ワールド(旧ワールドコイン)」が、インドネシアで当局の規制強化に直面している。

インドネシア通信情報省は5月4日、ワールドおよびワールドIDの電子システム運営者証明書(TDPSE)登録を一時停止したと発表した

当局によると、今回の停止は「不審な活動および登録違反の疑い」があったために実施された。今後ワールドの現地法人であるPTテラン・ブラン・アバディ社およびPTサンディナ・アバディ・ヌサンタラ社を召喚し、違反内容について説明を求めるという。

予備調査によれば、PTテラン・ブラン・アバディはTDPSEなしで運用していた疑いがあり、またサービス提供に使用されていたPTサンディナ・アバディ・ヌサンタラについても、法人名義で虚偽が行われていたとされる。

デジタルサービス提供者には登録義務

通信情報省は声明で、インドネシア国内のすべてのデジタルサービス提供者に対し、現地法に基づいた電子登録の取得が義務であることを強調。加えて、「他法人の登録情報を用いてサービスを提供する行為は重大な違反」に該当すると述べた。

同省デジタル監督局のアレクサンダー・サバー氏は、「ワールドコインのサービスは、PTサンディナ・アバディ・ヌサンタラという別法人のTDPSEを用いて登録されていた」と指摘し、「登録義務に違反し、別法人の身元を使ってサービスを展開することは深刻な法令違反だ」と述べた。

国民の安全確保と監視強化

今回のワールドに対する一時停止措置は、「国民に対する潜在的リスクを防ぐための対応」であると当局は説明する。通信情報省のサバー氏は、インドネシアのデジタル空間の安全と健全性を確保するためには、公平かつ厳格な監視が不可欠だと述べた。

また、同氏は「すべての市民が信頼できるデジタル空間を維持するために、国民1人ひとりの協力が必要だ」と呼びかけ、「許可を受けていないデジタルサービスに警戒し、不審な行為を発見した場合は公式の通報窓口を通じて報告してほしい」と訴えた。

この停止措置に対して、コミュニティ内では賛否が分かれている。Redditの投稿では、「よくやったインドネシア。少なくとも誰かがこの詐欺に立ち向かっている」といった声が上がる一方、「虹彩バイオメトリクスを差し出せば数週間分の食料が手に入るなら、その取引に価値があると感じる人もいる」とする意見も見られた

ワールドを巡って、2025年5月に米国でサービス展開を開始している。当初は米国の6都市でデジタルID登録を始めた。

ワールドは2023年7月のローンチ以来、各国の規制当局から相次いで懸念を示されている。ドイツ、ケニア、ブラジルなどが、生体データの安全性に関する懸念を表明している。

bitbankで新規口座開設後、1万円の入金でもれなく現金1,000円プレゼント!【PR】