国際通貨基金(IMF)は、総合的な官民パートナーシップのもとでの中央銀行デジタル通貨(CBDC)が最良な方法であると考えている。

IMFの金融市場部門のトモソ・マンチーニ・グリフォリ氏は、マネームーブメント(Mony Movement)の最新のライブセッションに参加。ホストを務める仮想通貨(暗号資産)企業サークル(Circle)のジェレミー・アレールCEOとCBDCについて議論した。

グリフォリ氏は、中央銀行の準備金だけに支えられ、中央銀行が完全に管理するCBDCを作成するという考えは時代遅れであると主張した。

一方、総合的な官民パートナーシップのもとでのCBDCは、デジタル通貨の世界でポピュラーになり、ブロックチェーンに裏打ちされたステーブルコインなどの民間部門がイノベーションを続ける力になるとの考えを示した。

グリフォリ氏は、民間部門がイノベーションやインターフェイス設計、クライアント管理に集中し、公共部門が信頼の裏付けや規制の面で貢献する役割分担をするというアイデアを述べた。これにより、金融の安定化のための規制を維持しつつ、イノベーションを図れると考えている。

官民のパートナーシップの合成CBDC

グリフォリ氏によれば、中央銀行が自身の負債としてCBDCを公式に発行するという従来の考えとは異なり、この官民パートナーシップによる合成CBDCでは、民間部門が決済に必要なCBDCを発行できる。

この負債は中央銀行の準備金によって支えられる。中央銀行はまた、企業を規制。監督するため、ライセンス制度を導入するというものだ。

一定の規制環境のもとで、すべての民間部門がステーブルコインのイノベーションを続けるため、平等な競争条件を提供することになる。グリフォリ氏は、このようなシステムのもとで金融安定化を維持することもできると考えている。

「利用可能な様々なステーブルコインが数多く存在する。どれが完全に裏付けられており、どこが準備金について本当の主張をしているのか、そしてその準備金がどの程度安全であり、流動性があるのかを消費者が知るのは困難だ」

競争維持によるイノベーションの促進

グリフォリ氏は、官民パートナーシップ型のCBDCは、デジタル通貨プロバイダー間の競争を促進し、比較優位を維持することにもなると指摘している。

テクノロジーの選択、顧客管理、本人確認(KYC)、マネーロンダリング対策(AML)、規制順守のための顧客のスクリーニングやモニタリングなど、公共部門がすべてを行うとなると、そのコストやリスクは多大になる。合成CBDCであれば、データ管理などの部分は民間部門に移転されることになる。

官民パートナーシップ型の課題

ただ官民パートナーシップ型のCBDCにもまだ課題は残っている。グリフォリ氏は民間部門と公共部門とのパートナーシップを設計する上で、トークンを発行する能力を誰が持つべきかを決めることが今後も議論する部分だと指摘している。

「問題は、公共部門が行うことと、民間部門が行うこととの間でどこに線を引くかだ。基本的な問題は発行についてだ。公的機関が発行し、民間部門が流通させるのか。それとも民間部門が発行することを許可するのか」

ステーブルコインと銀行がコラボする可能性

グリフォリ氏は、銀行セクターが「波風を立てること」つもりがないだろうとも指摘している。

「銀行セクターは本質的にホールセールによって資金を供給されており、預金が銀行から離れて新しい決済システムに大幅に移動することはないだろう」

ただし、革新的な銀行は、ブロックチェーン基盤のステーブルコインなど、多くの新しいテクノロジーを採用しだしている。グリフォリ氏は、銀行や決済サービスの間にパートナーシップが行われる可能性があるとも指摘している。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン