一目均衡表は、株式投資で使われるテクニカル指標のひとつだ。初心者が相場のトレンドを見極めるのは簡単ではないが、一目均衡表を活用すれば相場の方向性を一目で把握できる。また、株価はどこで上げ止まるのか、下げ止まるのかを予測することも可能だ。

一目均衡表は使用する線の数が多く、他のテクニカル指標に比べるとやや複雑に見えるが、トレード分析の精度を上げるためにぜひ覚えておこう。

今回は、一目均衡表の見方や活用法、メリット・デメリットについて詳しく解説する。

一目均衡表とは

一目均衡表(いちもくきんこうひょう)とは、1936年に細田悟一氏(ペンネーム一目山人)が発表したテクニカル指標だ。「相場は買い方と売り方の均衡が崩れたときに大きく動く」という考えに基づき、相場の方向性が一目でわかるような仕組みになっている。

日本だけでなく、海外でも支持されている指標であり、多くの個人投資家が一目均衡表を活用して株式投資を行っている。

一目均衡表の5つの線

一目均衡表を構成する5つの線と雲

出所:SBI証券 提供の株価チャートより作成

一目均衡表は、「基準線」「転換線」「先行スパン1」「先行スパン2」「遅行スパン」の5本線とローソク足で構成されている。5つの線の特徴はそれぞれ以下の通りだ。

基準線

基準線は、過去26日間の高値と安値の中間値を結んだ線だ。相場の方向性を示しており、移動平均線と似た役割を果たす。

基準線が上向きなら株価は上昇トレンド、下向きのときは下落トレンドだと判断できる。横ばいの場合は方向性が定まっておらず、もみ合い局面にあるといえる。

転換線

転換線は、過去9日間の高値と安値の中間値を結んだ線だ。基準線よりも短期のトレンドを示している。

先行スパン1

先行スパン1は、当日の基準線と、当日の転換線の中間値を26日先行させて表示した線である。

先行スパン2

先行スパン2は、過去52日間の高値と安値の中間値を、当日よりも26日先行させて表示した線だ。

先行スパン1と先行スパン2に挟まれた領域を「雲」という。雲は、ローソク足の状況に応じて上値抵抗線(レジスタンス)や下値抵抗線(サポート)となる。

遅行スパン

遅行スパンは、当日の終値を26日遅行させて表示した線だ。つまり、当日の株価と26日前の株価を比較することになる。

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一目均衡表で見るべきポイント3つ

一目均衡表は、どのように活用すればよいのだろうか。ここでは、一目均衡表の見方や活用法を、3つのポイントに絞って確認していこう。

①基準線と転換線のクロス

基準線と転換線は、移動平均線と同じように活用できる。

基準線が上向きのときに、転換線が基準線を下から上に抜けることを「好転」という。移動平均線のゴールデンクロスと同じ状態であり、相場が上向きに買いサインとなる。

反対に基準線が下向きのときに、転換線が基準線を上から下に抜けることを「逆転」という。移動平均線のデッドクロスと同じ状態で、売りサインとなる。

最初は、基準線と転換線だけを使って売り買いのタイミングを判断してもいいだろう。

②ローソク足と雲の位置関係

ローソク足が、先行スパン1と2に挟まれた雲を下から上に抜ける(好転)と株価が上昇に転じる可能性があり、買いサインとなる。反対に、ローソク足が雲を上から下に抜ける(逆転)と売りサインで、株価が下落する恐れがあるので注意が必要だ。

2本の先行スパンが交差するポイントは「雲のねじれ」と呼ばれ、相場の転換点となることがある。雲のねじれが現れたら、いつでも売買できるように準備しておくといいだろう。

また、雲の厚さに注目する方法もある。雲が厚いほど相場の反転が難しいと言われるため、トレンドの判断材料となる。株価が上昇(下落)しているときに厚い雲が形成されていれば、「上昇(下落)トレンドがしばらく続くかもしれない」と予測できる。

さらに、ローソク足と雲の組み合わせは、株価の上値・下値を見極める際にも役立つ。

ローソク足が雲より上側にあるときは強い相場であり、雲は下値支持線(サポートライン)の役割を果たす。逆に、ローソク足が雲より下側にあると相場は弱く、雲は上値抵抗線(レジスタンスライン)となる。

ローソク足と雲の位置関係に注目

出所:SBI証券 提供の株価チャートより作成

たとえば、「株価が雲付近で下げ止まり、上昇に転じたら買いを入れる」といった判断が可能だ。

③遅行スパンとローソク足の位置関係

遅行スパンは、売買タイミングを判断する際に活用できる。遅行スパンは当日の価格と26日前の価格を比較できる線だ。遅行スパンがローソク足を上回ると買いサイン(好転)、下回ると売りサイン(逆転)だ。遅行スパンとローソク足だけに注目すればよいので、初心者でも実践しやすいだろう。

遅行スパンとローソク足の位置関係

出所:SBI証券 提供の株価チャートより作成

強い買いサイン!三役好転とは

三役好転とは、以下3つの条件が同時に揃った状態のことだ。

  • 転換線が基準線を上抜けする
  • ローソク足が雲を上抜けする
  • 遅行スパンがローソク足を上抜けする

それぞれ相場の転換(好転)を意味するため買いサインとなるが、三役好転は、より強い買いサインとなる。

また、上記3つの条件がすべて逆になった状態のことを三役逆転という。それぞれ売りサインとなるが、三役逆転は、より強い売りサインとなる。

一目均衡表を使うなら、三役好転・三役逆転を見逃さないようにしたい。しかし、三役好転・三役逆転は出現頻度は高くない。また、この三役は全く同じタイミングで出現するわけではなく、少し時差がある。そのため、三役好転・三役逆転が現れてから売買すると遅すぎる可能性がある。他のテクニカル指標も組み合わせながら売買タイミングを見極めよう。

一目均衡表のメリット・デメリット

一目均衡表のメリットは、相場の方向性や売り買いのサインを一目で判断できることだ。

5つの線や雲、ローソク足の位置関係に注目することで、相場の強弱やトレンドの転換点を見極められる。また、先ほど説明した三役好転(三役逆転)のように、複数のサインを組み合わせることで、より確信を持って売買タイミングを捉えられるのもメリットだ。

一方で、一目均衡表は5本の線とローソク足で構成されており、判断材料が多数ある。そのため、初心者は見方や活用法に慣れるまでに少し時間がかかるかもしれない。

最初からすべての線を使う必要はない。「基準線と転換線だけを使う」「遅行スパンとローソク足だけを見る」など、まずは無理のない範囲で活用するといいだろう。

また、保合い相場では、一目均衡表が機能しづらいことがあるという点もデメリットだろう。

そしてどのテクニカル指標にもいえることだが、買いサインや売りサインが現れたとしても、株価が予測通りに動かないこともある。株価は業績や政治・経済情勢、景気動向などの影響も受けるからだ。

一目均衡表は売買判断に役立つテクニカル指標だが、万能ではないことを理解しておこう。

一目均衡表を使って株式投資を実践

ここでは、実際の株価チャートを用いて、一目均衡表を使った取引タイミングの具体例を紹介する。

まずは、日本電信電話(9432)の株価チャートを見てみよう。

一目均衡表を使って日本電信電話の株を売買

出所:SBI証券 提供の株価チャートより作成

株価がやや上昇に転じ、ローソク足が雲を下から上に抜けたところが買いタイミングだ。転換線が基準線を上抜けし、好転となっていることからも買いタイミングと判断できる。

買いタイミング当日の遅行スパン(画像上で買いタイミング当日から26日前に表示されている赤丸部分の紫色の線)がローソク足より上側にあり、上向きに上昇していることも買い材料だ。また、雲のねじれ(画像上で買いタイミング当日から26日前に表示されている赤丸部分で、2本の緑の線が交差している所)が出現していることからも「上昇トレンドに転換する可能性がある」と判断できるだろう。

その後、株価の上昇が落ち着き、窓開けして株価が下落したところが最初の売りタイミングだ(売り①)。この段階では、一目均衡表で売りサインは出ていない。あくまでも、ローソク足が窓を開けて下落したことが売り材料となる。

売り①を逃した場合は、転換線が基準線を上から下に抜けたところが売りタイミングとなるだろう(売り②)。売り②は、遅行スパン(売り②当日から26日前に表示されている部分)がローソク足の下側になっていることからも売りタイミングと判断できる。

続いて、三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)の株価チャートを見てみよう。

一目均衡表で三菱UFJフィナンシャルグループの株を売買

出所:SBI証券 提供の株価チャートより作成

株価がもみ合いから上昇に転じ、ローソク足が雲を上抜けしたところが買いタイミングだ。先ほどの日本電信電話と同じく、転換線が基準線を上抜けしていること、遅行スパン(買いタイミング当日から26日前に表示されている部分)がローソク足の上側にあることも買い材料となる。

最初の売りタイミングは、株価が上昇から下落に転じ、ローソク足の陰線が連続して出現しているところだ(売り①)。一目均衡表で売りサインは出ていないが、ローソク足の形状からこのタイミングで売却する選択肢もあるだろう。

売り①で売却しない場合は、転換線が基準線を下抜けしているところが売りタイミングとなる(売り②)。

一目均衡表を初めて使う人は一部だけ活用してみよう

一目均衡表は、相場の方向性を一目で確認できる便利なテクニカル指標だ。うまく使いこなせば、初心者でも自信をもって売買タイミングを判断できるようになるだろう。

一目均衡表は5本の線とローソク足で構成されており、他のテクニカル指標に比べると判断材料が多い。最初は基準線と転換線だけを使うなど、無理のない範囲で活用してみよう。

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