企業が機密のビジネスデータを共有する複数の事業体に信頼、透明性、より良いコラボレーションをもたらすテクノロジーとしてブロックチェーンを使うことに関心を示し始めたのは、ほんの数年前のことだ。しかし、ブロックチェーンの世界が成熟化するにつれてより多くの企業がブロックチェーンをテクノロジーとしてではなく、デジタル化のための重要なビジネスツールとして見なし始めている。

IBMブロックチェーンのゼネラルマネージャ―であるアリステア・レニー氏は、今年はじめにこの進化に気づいた。コインテレグラフは、進化するエンタープライズブロックチェーンの世界、IBMのハイブリッドクラウド戦略でブロックチェーンがどのように重要な役割を果たしているのか、そしてIBMがプライベートの許可されたネットワークの原則に同意する理由について、レニー氏にインタビューした。

コインテレグラフ(CT): IBMのブロックチェーン戦略とは?

アリステア・レニー氏(AR): ブロックチェーンが市場に出回ってからかなりの年月が経ち、何百ものネットワークに取り組んできた中、ブロックチェーンが企業のデジタル化の旅のどこに収まるのだろうかと考えている。

たとえば、金融サービスやサプライチェーンネットワーク内で多くの取り組みが行われている。また、これらのネットワークの多くは射程が広いわけではなく、少数のプレイヤーがいくつかの重要な価値提案を開始し始めている状況だ。ネットワークは単純に開始でき、時間の経過とともに成長する可能性がある。私たちは、ソリューションポートフォリオを使って、これらの一部に対処しようとしている。

また、ブロックチェーンは、企業がほかの企業とのビジネスプロセスをデジタル化できるという点において、エンタープライズアーキテクチャに適合していることもわかってきている。これは、ブロックチェーンがテクノロジーから実際のビジネスツールに進化しているということであり、採用が非常に迅速に行われる可能性があることを示している。たとえば、COVID-19が始まったとき、メカニズムとしてブロックチェーンを使用した企業間データ共有の驚異的な事例を見ることがあった。しかし、本当に印象的だったのは、そのスピードだった。

ブロックチェーンは、複雑で長期にわたるプロジェクトである必要はない。そうはいっても、私たちは主に、コラボレーションと信頼のためのハイブリッドクラウドプラットフォームの基本的なコンポーネントとなるブロックチェーンに取り組んでい

CT: IBMのハイブリッドクラウドプラットフォーム内でブロックチェーンが果たす役割について詳しく教えてください

AR: ブロックチェーンが独自に提供するのは、企業の境界を超えたワークフローの統合および管理する能力だ。今日、人々がこれを行う方法をいくつかあるが、それは不格好で、一元化されたソフトウェアとプロセスの変更が多く含まれる傾向がある。

ブロックチェーンが、ビジネスデータを統合するための迅速な方法であることがわかってきた。これはワークフローの自動化にスマートコントラクトを使用しながら行う。組織が複数の関係者とやり取りする場合、コラボレーションと信頼の機能を作り出す。

CT: プライベートなネットワークはどのようにして外部エンティティとの信頼を確保できるのか?

AR: ブロックチェーンテクノロジーによって、人々は台帳で情報を共有でき、スマートコントラクトはワークフローを管理する。たとえば、ブロックチェーンネットワーク上の農家は、ほかの農家とすべてのデータを共有しているわけではない。プライべ―トネットワーク上では、誰が何を見ているかを管理できるかだ。

これにより、組織は、データ共有は問題ないという比較的安全な考え方のもとでブロックチェーンネットワークに参入でき、そこから価値を引き出すことができる。最終的に、プライべートネットワークを使用すると、必要なデータを可視化しながら、十分な信頼を得ることができる。

この格好の事例の1つは、北欧およびバルト地域のITインフラプロバイダーであるAteaASAが行っていることだ。IBMブロックチェーンネットワークを使用して、漁業と加工業者および小売業者を接続させている。

CT: IBMのハイブリッドクラウドプラットフォームは、IBMブロックチェーンがすでにクライアントに提供しているものとどのように異なるのか?

AR: 大きな違いは、クライアントとの話し方だ。私たちは、ほかのテクノロジーと同様に、ブロックチェーンが純粋にテクノロジーのレンズを通してみられる段階を経てきた。しかし今、私たちはその議論がメインストリームになっているのを目にしている。

「ブロックチェーン」という言葉すら出てこない、金融サービス業界やサプライチェーンセクターの人々と話をしている。これらの組織が関心を持っているのは、来歴、追跡とトレース、そして紛争解決だ。ブロックチェーンを使用して、自社の環境の外でコラボレーションをして、ワークフローを作成する方法について、企業と話をしたいと思っている。IBMのハイブリッドクラウドの提案は、組織がブロックチェーンネットワークを簡単に作成するために必要なすべてのものをパッケージ化する。これは採用を促すという点で大きな違いを生み出す。

CT: どのようなタイプの企業がIBMのハイブリッドクラウド戦略を使用したいと思うのか?

AR: サプライチェーン管理は多くの異なる企業に影響を与える。これらの組織は、サプライチェーンにおいて可視性を獲得しようとしている。これは簡単に聞こえるかもしれないが、すべてが異なるシステムで実行されるため、実際には非常に難しいものだ。

金融サービス部門では、We.tradeのような決済ネットワークでブロックチェーンが使用されている。ブロックチェーン・コミュニティ・イニシアティブはまた、その電子保証書プラットフォームが成功裡に進歩し、現在はそのサービスとネットワークの範囲をあらゆる規模の企業に拡大していると発表している。

プラットフォームは19年後半に稼働を開始し、現在3億ドルの保証書を処理している。保証書の発行期間を1日以下に短縮できることが証明されている。基本的にマルチバンクの決済と接続がある場所ならどこでも、ブロックチェーンを適用できる。また、デジタル通貨の実装を検討している中央銀行との実験や協力も増え始めている。

CT: IBMは企業が活用できるパブリックブロックチェーンの作成を検討することはあるのか?

AR: 私たちが持っている原則が示すところは、IBMが、許可された、プライベートでありながら、それを実行している人々が管理できるブロックチェーンネットワークに大きな暗視を持っているということだ。私たちは、様々な組織がテクノロジーにアクセスしやすくし、人々が迅速にスタートさせ、価値を得ることができるようにすることを重視している。

さらに、これらのネットワークが実験フェーズから完全に機能するフェーズに移行していけば、多くの実行する必要のある作業が発生するだろう。組織は、ブロックチェーンネットワークを管理する方法、それらを監視する方法、および規制当局と話す方法を理解する必要があ

許可型でプライベートという原則は、非常に理がかなっていると思う。それらを簡単に採用しでアクセスできるようにするため、できることはたくさんある。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン