金融庁は30日、日本における仮想通貨ETF(上場投資信託)の導入について慎重な見方を示した。参議院の財政金融委員会で藤巻健史議員(日本維新の会)の質問に答えた。

藤巻議員は、SEC(米証券取引委員会)のピアース委員の発言を引き合いに出し「米国で仮想通貨(暗号資産)ETFが許可されるような雰囲気もある」と指摘。他の国に遅れを取ってはいけないと仮想通貨ETFの重要性を指摘した。

また藤巻議員は、仮想通貨関連法案でも懸念対象であるハッキングについて、仮想通貨ETFが実現すれば仮想通貨が信託銀行に信託されて堅固なカストディアンの下で管理されることになることから、ハッキングのリスクが減少するのではないかと主張。

さらに、ETFが実現すれば、機関投資家も入りやすくなり価格も安定すると見込まれることから、仮想通貨市場が大きくなるではないかと述べた。

これに対して金融庁の担当者は、以下のように述べて仮想通貨ETF導入に慎重な姿勢をみせた。

「暗号資産での法制を検討する場で有識者と議論したが、ビットコインのようなパブリック型のブロックチェーンは、株式と異なりキャッシュフローやフェアバリューのある資産が必ずしも観念されておらず、需給によってだけ価格が変動する極端な言い方をすればフェアバリューがゼロであるということがありえる。このため価格が大きく変動するというリスクを抱えているという指摘があった」

これに対して藤巻議員は、仮想通貨ETFができれば価格の変動が抑えられるのではないかと指摘した。


追記

藤巻議員は、法律面がハードルになっているかどうかについても質問。信託法第2条や投信法施行規則第19条第3項第1号に暗号資産(仮想通貨)を明記することによってETFは可能になるのでは?と指摘したところ、金融庁は先述の通りフェアバリューなどが見い出しづらいとし、一般大衆に向けて投資を容易にするが望ましい・必要な資産であるかどうかという点で難色を示した。

さらに藤巻議員は、国税庁に対して、もし仮想通貨ETFができれば20%の分離課税で良いか質問。ETFであれば「外形」で判断すべきであり何が入っているかで判断する仕組みになっていないとし、ロジカルに考えて仮想通貨ETFは20%の分離課税で良いか確認した。

国税庁の担当者は、金融庁の仮想通貨ETFへの慎重姿勢を受けて「現段階で国税当局から税法上の取り扱いについて答えることは差し控える」と答弁した。

藤巻氏は、かねてから「税金というのは単にお金を集めるというのではなく、国の方向を決める」と仮想通貨の税制改革の重要性を強調。たびたび参議院の委員会で質問に立って、最終的には源泉分離20%、現状では総合所得の中でも雑所得ではなく譲渡所得にするべきではないかと国税当局や麻生大臣と議論を続けている。

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仮想通貨ETFに関しては、現在SECが審査している2つのビットコインETFが注目されている。SECはビットコインETF可否をめぐり取引所が詐欺や価格操作などの行動を防止できるようにデザインされているかなどを懸念事項に上げている

今年1月、日本でも金融庁が仮想通貨ETFを検討しているという報道があった。ただ、コインテレグラフ日本版が取材したところ、金融庁はこの報道を否定し、「何を根拠に報道しているのか分からない」と述べていた。

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ETF(上場投資信託)は、株や債券、通貨、商品などの指数と連動する投資信託。ビットコインETFの場合は、連動する資産がビットコインとなる。機関投資家にとって馴染みのある商品であることから、ビットコインETFが認可されればビットコイン市場に多額マネーが流入すると考えられている