実際にデジタル通貨を購入することなしに、投資家がビットコインを買えるようになるようにする取り組みが続いている。昨年12月にビットコインが2万ドルへ向けてラリーしている中、ビットコイン先物が市場に登場した。

 しかし投資家、特にビットコイン所有に対していまだに懐疑的な機関投資家にとって、最も大きな目標は上場投資信託(ETF)だ。米証券取引委員会(SEC)を通してビットコインETFを実施しようという取り組みは、双子のウィンクルボス兄弟が17年3月に最初に試みて以降、継続して行われている。

 一方で、15年以降ナスダック・ストックホルムで取引されている「ビットコイン・トラッカー・ワン」と呼ばれる商品は、上場投資証券(ETN)を提供しており、今週にはドル建てのETNが登場した。

 ETNは、多くの人が求めているビットコインETFの「ソフトな」代替オプションと考えられている。だがアメリカの規制や米SECから独立した形でアメリカの投資家にアクセス可能にする、今回のドル建てETNの登場を受けても、市場での動きはほとんど見られなかった

 ETN購入のオプションがあっても、アメリカの投資家、そしてウォール・ストリートのマネーは食いついてこないようだ。ニュースをきっかけに価格が乱高下することで悪名高い仮想通貨市場では、興奮が見られなかった。このことは、ETNはETFではないという事実とも関係があるかもしれないが、弱気のセンチメントが強い可能性もある。

なぜETN、もしくはETFなのか?

 これらの商品は、投資家が実際の商品を所有することがないため、比較的安全にビットコインに投資することを可能にするもので、多くの人々に称賛されている。だが一方で、それを危険視する人々もいる。

 ETFは、ファンド、コモディティ、資産のバスケットのインデックスと連動する市場性のある証券だ。ビットコインETFの場合は連動する資産がビットコインとなる。つまり、SECがビットコインETFを許可した場合には、ファンドが基となる数の実際のビットコインを購入し、そのファンドを株式に分割して、それらが株主に分配される。

 このようにして、他の資産やコモディティでETFを利用してきた機関投資家にとってずっと安心で馴染みのあるものとなる。そしてこのことが、ビットコインの世界に多くのマネーが流入する入り口となると多くの人が考えている理由だろう。

 一方で、「ソフトな」ETFと捉えられているETNは、資産のプールではなく、銀行といった発行元によって裏付けされている債券である。多くの場合、ファンドには容易にフィットしない難解な戦略にフォーカスしている。

 これらのタイプの商品が仮想通貨エコシステムに必要かどうかに関しての議論は、仮想通貨スペースの幅広く包括的な性質によって誇張されている。ビットコインやその他の仮想通貨を取引している投資家、ブロックチェーンエンジニア、手っ取り早くお金を儲けたい人たち、仮想通貨アナーキスト、仮想通貨純粋主義者がいて、彼らはみなそれぞれの信条を持っている。

 アンドレアス・アントノプロス氏はビットコインETFのアイデアに強く反対し、次のように述べている

「夢を壊してあげよう。(中略)『高騰』やランボルギーニや様々な理由から、ETFの実現を望む人が多くいるのは知っている。(中略)私もそれは実現するとは思っている。ただひどいアイデアだと思っているだけだ。ETFには反対だ。ビットコインETFはエコシステムに損害を与えると思う

 アントノプロス氏が批判しているのは、ETFが価格の低下や投資の停止を引き起こすということではない。事実、氏は次のように続けている。

「誰もがETFに関してワクワクしている。金の事例で見たように、他の市場でETFが購入可能になった時に、突然ずっと多くの投資家がそのコモディティを手に入れられるようになって、価格が本当に劇的に上昇するのを我々は見てきたからだ。そしてこれらの投資家は一挙に押し寄せてくる」

 多くの人が価格の視点から仮想通貨市場が現在必要とする弾みとしてETFを捉える一方で、アントノプロス氏はETF導入の真の危険性は他のところにあると主張している。

「しかし、そのもう一方の側面というのは、これらのコモディティ市場がひどく操作されているという主張がいつでもあるということだ。そしてこれらのETFを開始することは、機関投資家がコモディティの価格を操作する能力をさらに高めるだけだ。ETFとして取引されている市場だけではなく、もっと大きな範囲で」

ETNはなぜマーケットを動かさないのか?

 機関投資家が市場に一斉に押し寄せることによって、ETFがコモディティの価格を急騰させることができるという主張を考慮すると、ドルで取引することのできるETNというオプションの発表が市場でほとんど動きをもたらさなかったことは不可解に思われる。

 ETFに比べてより小規模で、「より安全な」オプションならば、組織化された市場において先を争って買われ、人気になって当然と推測してもおかしくはない。投資家がまだ手を出さないでいるのか、それともまだ相場が弱気過ぎるのかもしれない。

 KKMフィナンシャルの創設者でもあるジェフ・キルバーグCEOは、ビットコインとその乱高下する変動性は、ETFについて決定が下るまでは続き、それに関してETNでさえも影響力をあまり持たないだろう説明している

変動は続くだろう。しかし、それはこの上場投資信託(ETF)次第だと思う。(中略)長期的な強気のバイヤーたちは、人々が国際的に上昇投資商品にアクセスできるようになるということを理解しなければならない。そしてこれが登場したら、そして我々はこの秋に登場するという絶対的な確信を持っているが、そうすればこのラリーは継続するだろう」

 キルバーグ氏は明らかに、ETFが市場に対してもつ力に関して楽観的だ。グローバル投資市場の最大手サスケハナ・インターナショナル・グループのデジタルアセット部門の責任者バート・スミス氏も同様だ。スミス氏は、ETNもある程度の勢いを得たが、ETFの可能性が持つ爆発的な力には程遠いと述べる

「現状は、かつていたところに戻ってしまったという状態である。1か月前、我々は急騰に関して議論していたが、これは弱気市場の反発である。新しい高みへ到達しない限り、人々は買いには出ない」

 スミス氏も、ETNはETFほどの潜在力を持っていないというキルバーグ氏の論拠を踏襲している。

「SECによる規制を受けている場合ほど大きくはない。SECに登録されたアメリカでのETFならば、ずっと大きな影響力を持つだろう。もしビットコイン価格へ新しいマネーを差し向けるものがあれば、それが価格をあげるだろうと想像するだろう」

ETFという最高の目標

 米国の投資家が、ETN、そして多くの先物取引を購入可能になった現在でも、ビットコインは新しい高みには到達していない。SECが様々なビットコインETFに対する申請について検討を続けるなか、ETFの可能性に関して過剰な大騒ぎや興奮が数多くみられる。

 ビットコインの価格の行方、そしてETFのニュースにどのように反応するかについては誰も予測できない。だが、大きな変化をもたらすだろうというのが大方の見方だ。非伝統的なアセットとして投資を躊躇していた山のようなマネーが、ビットコインへと流入するのを待っているという感覚だ。このバリアが壊された時、ビットコインは2万ドルを再び超えることができるのだろうか。