資産運用残高5.9兆ドルを誇る金融サービス企業フィデリティが、米国民がほぼ手数料なしで仮想通貨に投資できる新たな退職口座を発表した。

提供されるのは、課税繰延型の従来型IRA(個人退職口座)1種と、ロールオーバー型を含む2種類のロスIRAの計3種。これらの口座では、ビットコイン(BTC)、イーサ(ETH)、ライトコイン(LTC)の売買が可能となっている。口座の開設・維持には手数料はかからないが、売買時には仮想通貨の約定価格に対して1%のスプレッドが課される。

この仮想通貨IRAは、フィデリティ傘下で主に機関投資家向けに仮想通貨取引サービスを提供してきたフィデリティ・デジタル・アセットによって提供されている。

今回の個人向け口座の拡充は、米国内で進む仮想通貨環境の変化を反映する動きとも受け取れる。米国では国家レベルでのビットコイン準備保有の採用や、ステーブルコイン発行企業サークルを含む複数の企業による新規株式公開(IPO)の申請などが相次いでいる。

フィデリティはセキュリティ面について、多くの仮想通貨をインターネットに接続されていないコールドウォレットに保管していると説明している。

退職口座による仮想通貨投資の選択肢、すでに拡大中

仮想通貨を直接IRAで購入することは、厳密にはこれまで禁止されていたわけではないが、対応する口座提供企業は少なかったとインベストペディアは指摘している。そのため、今回のフィデリティによる提供は環境の変化を示すシグナルとなる可能性がある。

とはいえ、BTCやETHへのエクスポージャーを得る手段としては、2024年以降すでにETF(上場投資信託)が登場しており、ブローカーによっては退職口座を通じた仮想通貨投資が可能になっている。

また、税制優遇を受けながら仮想通貨に投資できる「ビットコインIRA」など、自主管理型退職口座も普及してきている。BitIRAのような企業は、LTCなどのアルトコインも追加可能なデジタル資産専用IRAを提供している。

こうした中で、より多くの米国人が退職資金の一部を仮想通貨に投資できるようにする動きが加速している。4月1日には、アラバマ州選出のトミー・タバービル上院議員が、米国人が401(k)口座に仮想通貨を組み入れることを認める法案の再提出を発表。労働省が発行する規制の見直しが前提となる見通しだ。