米国連邦準備制度(FRB)の新即時決済サービス「FedNow」が「メタル・ブロックチェーン」に統合される。5月11日、メタル・ブロックチェーンチームからの発表で明らかになった。FedNowとの統合により、メタル・ブロックチェーンのユーザーはFedNowの「送受信」機能を利用して、資金をステーブルコインに即時変換したり、逆に変換したりすることが可能となる。

FedNowは米国連邦準備制度が開発した即時決済システムだ。銀行間で24時間、ほぼ即時の決済を可能にする。現在、米国の居住者は、PayPalやVenmoなどのサードパーティ製アプリ、あるいは仮想通貨ウォレットを通じてのみ、国内での即時決済を行っている。新サービスは7月に開始予定とのことだ。
メタル・ブロックチェーンは、アバランチのコードをフォークして開発されたMetallicusによる仮想通貨ネットワーク。DeFi(分散型金融)開発者向けに法令遵守の選択肢を提供するために作られた。5月11日の発表で、メタル・ブロックチェーンの開発者は、このネットワークが「BSA(銀行秘密法)の基準に基づいて作られている」とし、身元確認とマネーロンダリング防止の機能が組み込まれていることを示した。
公式文書によると、このネットワークには「X-Chain」というサブネットがあり、開発者は資産転送のルールを設けることができる。例えば、「米国市民のみに送信可能」とか、「明日まで取引不可」というルールでトークンを発行することができる。
FedNowが決済システムとの統合にどのような基準を用いるか、コインテレグラフが確認することはできなかった。しかし、ほとんどのブロックチェーンネットワークでは、ユーザーの身元として擬名のアドレスを用いるため、銀行秘密法に適合していないと見なされることがある。これが、メタル・ブロックチェーンがFedNowのサービス提供者として初めてリストされたブロックチェーンネットワークの一つとなった理由かもしれない。
コインテレグラフとの対話で、Metallicusの共同創設者でCEOのマーシャル・ヘイナー氏は、メタル・ブロックチェーンとFedNowの統合により、「バンクチェーン」と呼ばれる相互接続可能な銀行チェーンの形成が可能になり、セキュアでオラクルに依存しない大規模なブロックチェーンエコシステムが生まれる可能性があると語った。これにより、銀行間で決済を処理し、決済を行うためにFedNowシステムと連携したまま通信することが可能になるとのことだ。
またヘイナー氏は、この統合により、銀行が将来的な中央銀行デジタル通貨(CBDC)に対応したり、あるいは「ステーブルコイン通貨のバスケット内で相互作用する銀行発行のステーブルコイン」に対応したりするための準備を進めることが可能になると述べている。
しかし、FedNowは一部の米国政治家から批判を受けている。フロリダ州知事のロン・デサンティス氏や米大統領候補のロバート・ケネディー・ジュニア氏などは、FedNowがプライバシーを侵害するブロックチェーンベースのCBDCへの第一歩であると主張している。連邦準備制度はFedNowがCBDCとは関連性がないと否定している。
この論争についての意見を求められたヘイナー氏は、CBDCの批判を一蹴した。「私はこの論争が根拠を持たないと考えている。銀行システムに適用されている厳格なルールがCBDCにも適用される」と述べた。