欧州連合(EU)が、ロシアのルーブル連動型ステーブルコイン「A7A5」に対する制裁を検討している。

A7A5は世界最大の非米ドル建てステーブルコインであり、実現すればロシア関連の仮想通貨活動に大きな影響を与える可能性がある。

ブルームバーグの報道によると、EUが検討中の制裁案では、EU域内の企業および個人がA7A5トークンと直接的または第三者を通じた取引を行うことを禁止する内容が含まれている。

また、ロシア、ベラルーシ、中央アジアの複数の銀行も制裁対象候補とされており、これらの銀行が制裁対象企業による仮想通貨関連取引を支援した疑いがあるという。

今回の動きは、9月19日に発表されたロシア居住者向け仮想通貨取引制限に続くものだ。この制裁では、EU域内の仮想通貨プラットフォームがロシア居住者とのすべての取引を停止し、ロシアと関係のある外国銀行との取引を制限した。

EUはロシアが西側制裁を回避する手段として仮想通貨を含む多様なルートを活用しているとみている。

リスク分析企業インテグリティ・リスク・インターナショナルによると、ロシアは制裁対象物資を密輸するシャドーフリート(影の艦隊)を運用し、原油の産地を隠蔽したり、第三国経由で取引したりするなど、複雑な取引網を構築しているという。

仮想通貨は「制裁回避手段」の1つ

コインマーケットキャップのデータによると、9月19日の制裁発表から1週間後の9月26日までの間にA7A5の時価総額は約1億4000万ドルから4億9100万ドルに急増している。

月曜時点では約5億ドルの水準で推移しており、非ドル建てステーブルコイン全体(約12億ドル)の43%を占めている。

A7A5の時価総額はEUの制裁後に拡大 Source: CoinMarketCap

2番手はサークル社のユーロ連動ステーブルコイン「EURC」で、時価総額は約2億5500万ドルとなっている。

EUの制裁発動には27加盟国すべての承認が必要であり、最終的な実施前に内容が修正または変更される可能性もあるとブルームバーグは伝えている。

EU理事会は制裁について、「EUが影響を及ぼしたい政策や行動に責任を持つ者を狙い、彼らの方針や行動を変化させる手段」であると説明している。

米英に続きEUも制裁へ

今回のEUの動きは、8月に英国と米国が発動した同様の制裁措置に続くものだ。

米英両国は、ロシアが西側制裁を回避するために利用していたとされる金融ネットワークを標的とした。

対象には、中央アジア・キャピタル銀行とその取締役カンテミール・チャルバエフ氏も含まれている。

また、キルギスの仮想通貨取引所「グリネックス」および「ミール」もブラックリスト入りし、A7A5のインフラを支援する関連企業も制裁対象に加えられた。

モルドバの銀行家とロシア国有銀行が発行

A7A5は2025年2月、モルドバの銀行家イラン・ショール氏(Ilan Shor)とロシアの国有銀行プロムスビャズ銀行によって、イーサリアムとトロン上でローンチされた

公式説明では、A7A5は「キルギス国内の信頼できる銀行に分散保管された法定通貨預金を裏付けとするトークン」とされている。

シンガポール政府による取引禁止措置にもかかわらず、A7A5の運営企業はシンガポールで開催された「Token2049」に出展し、ブースを設置している。幹部のオレグ・オギエンコ氏もステージに登壇した

しかしその後、主催者は国際的な圧力の高まりを反映し、同プロジェクトをイベントおよび公式サイトから削除している。

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