イーサリアムは今週、過去最大となるバリデータ退出を記録した。プルーフ・オブ・ステーク(PoS)ネットワークから100億ドル超に相当する240万ETH以上が引き出し待ち状態にあるが、その多くを機関投資家が新規ステーキングで補っている状況だ。

ブロックチェーンデータサイトのValidatorQueue.comによると、イーサリアムの退出キューは9日時点で240万ETH(約100億ドル)を突破し、退出完了までの待機期間は41日21時間超に達した。

バリデータはイーサリアム・ネットワーク上で新しいブロックを追加し、トランザクションを検証する役割を担っており、ネットワークの運用に不可欠な存在だ。

ナンセンのリサーチアナリスト、ニコライ・ソンダーガード氏は「大量の引き出しが発生すると、トークン売却の可能性が生じることは確かだが、それが即座に売り圧力を意味するわけではない」と述べ、「この動きだけをもって懸念する必要はない」と指摘した。

イーサリアムのバリデータキュー Source: validatorqueue.com

ブロックチェーンオラクル企業レッドストーンの共同創業者マルチン・カジミエルチャク氏は、今回の大規模引き出しについて「32ETH単位のステーキングから2048ETH単位へと統合し、運用効率を高めるための再配置が主な要因だ」と説明した。

同氏はさらに、資本効率を高めるために「リキッドステーキング・プロトコルへの資金流入が拡大している」と述べ、「引き出されたETHの多くはDeFi内で再運用されており、売却されているわけではない」と強調した。

また、「44日を超える引き出し待機時間が供給ショックを抑える自然なブレーキとして機能している」とし、ETHの日次取引高が依然として500億ドル規模と、退出キューの約5倍に相当することを指摘した。

一方、ファルコン・ファイナンスの共同創業者アンドレイ・グラチェフ氏は、バリデータキューの拡大は「利回り需要の高まりを示すもの」と分析。「大口ステーカーの多くは短期的な売却目的ではなく、オンチェーン利回りを狙っている」と述べ、イーサリアムが「利回りを生む資本レイヤーへと進化している」とコメントした。

機関投資家の資金が流入

このような引き出しの急増を受け、一部ではETHの売り圧力への懸念が再燃している。イーサリアム価格は過去1年で83%上昇しており、利益確定売りに転じる可能性もある。

さらに、退出キューの規模はエントリーキュー(新規ステーキング待ち)のおよそ5倍に達している。

イーサリアムの退出キューとエントリーキュー Source: validatorqueue.com

それでも、短期的な売り圧力懸念を除けば、100億ドル規模の引き出しがイーサリアム・ネットワークの安定性を脅かすことはない。依然として100万以上のアクティブ・バリデータが存在し、総供給量の約29.4%にあたる3560万ETHがステーキングされている。

今回の動きは、グレイスケールが8日に1億5000万ドル相当のETHを新規ステーキングした翌日に発生した。同社は米国の仮想通貨運用会社として初めて、イーサリアム上場投資商品(ETF)にステーキングによる受動的収益を導入した。

9日にはさらに27万2000ETH(約12億1000万ドル)をステーキングキューに追加し、オンチェーンアナリストのEmberCNによると「現在のステーキング待機中ETHの大部分はグレイスケールが占めている」とされる。

Source: EmberCN

Nexoのアナリスト、イリヤ・カルチェフ氏は「バリデータ退出が急増している一方で、ETFや企業トレジャリーを通じた機関投資家の資金流入がイーサリアムの勢いを支えている」と述べた。

同氏によれば、「現在、機関投資家および企業トレジャリーが保有するETHは総供給量の10%超に達し、10月のETF流入額はすでに6億2000万ドルを超えている」という。

カルチェフ氏は最後に、「これらのデータは、イーサリアムが利回りを生むインフラ資産かつ担保資産として機関投資家に認識されつつあることを示している」とまとめた。

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