欧州中央銀行(ECB)は、米国による仮想通貨支援の政策がもたらす潜在的な影響に対し懸念を表明し、ドル建てステーブルコインの急増が欧州の金融システムを不安定化させる可能性があると警告した。

ポリティコが報じた政策文書によれば、ECBは暗号資産市場規制(MiCA)の見直しを欧州委員会に要請している。MiCAは発効してからわずか数カ月しか経っていない。

懸念の背景には、トランプ政権による規制改革によって、ドル建てステーブルコインが欧州市場に大量に流入し、EU域内の資本が米国資産に流出することで、金融主権の低下や銀行の流動性リスクが高まる可能性がある点だ。

しかし、ケイトー研究所の通貨・金融政策部門の政策アナリスト、ニコラス・アンソニー氏は、米国の仮想通貨受容が欧州にとって脅威になるとは思わないとコインテレグラフに語った。「ECBはデジタル・ユーロを正当化しようと、必死に理由を探しているだけだ」と指摘している。

ECBと欧州委員会が対立

ECBが規制強化を訴える一方で、欧州委員会はその警告を過剰反応と一蹴している。報道によれば、外交官2名とEU当局者1名は、現在のMiCA枠組みでもステーブルコインのリスク管理には十分対応できるとの立場を示している。

米国では、STABLE法案やGENIUS法案といった、ステーブルコインの透明性や普及を目的とする法整備が進められているが、これに対応して即座に欧州の規則を変更すべきだとする意見は限られているという。コインマーケットキャップのデータによれば、現在のステーブルコイン市場の時価総額は2340億ドルに達している。

ECBは、より厳格な制限がなければ、欧州発のステーブルコイン発行体がEU域内外の保有者から償還圧力を受け、「取り付け」リスクが生じかねないと警告した。

「ECBの懸念は理解できるが、EUは規制面で先行者優位を持っていたにもかかわらず、それを自ら無にした」と、トレーディングストラテジーの共同創業者兼CEOであるミッコ・オータマー氏はXへの投稿で述べた。

同氏は、MiCAの過度に制限的な規則は銀行や既存金融機関のロビイングの影響を受けており、その結果、グローバル競争力を持つEU発ステーブルコインが存在しない現状を招いたと指摘している。

一方、ケイトー研究所のアンソニー氏は、「こうした法改正の拙速さは、ルールの明確性を求める市場にさらなる不確実性をもたらす」とし、米国が仮想通貨に前向きな姿勢を見せる中、ECBがむしろ欧州内での金融イノベーションを阻害しようとしていると批判した。

MiCAとテザー

世界最大のステーブルコインであるUSDTを発行するテザー社は、以前からEUのMiCA規制に対して批判的な立場をとってきた。

テザーのパオロ・アルドイノCEOは、MiCAにおいて準備資産の60%以上をEU域内の銀行口座に保有することを義務付けている点が、ステーブルコインのみならず銀行システム全体にシステミック・リスクをもたらすと指摘している

MiCAへの非準拠を理由に、USDTは欧州の主要取引所からの上場廃止に直面している

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