分散型台帳技術(DLT)が従来の市場で利用されるようになれば、年間1000億ドル(約13兆円)以上が節約される可能性があると、グローバル・ファイナンシャル・マーケッツ・アソシエーション(GFMA)が新たな報告書で主張している。
5月16日の報告書では、金融セクターのロビー団体であるGFMAや国際コンサルティング会社ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)などが、規制当局や伝統的な金融機関に対して、この技術の利点をもっと真剣に検討するよう求めている。
分散型台帳とは、取引やデジタル情報を記録するシステムの総称であり、ブロックチェーンはその一種である。「分散型台帳技術は、成長とイノベーションを促す可能性を秘めている」とGFMAのアダム・ファルカシュ氏は語る。「この潜在力は、規制監督やレジリエンス対策が既に存在する場合には、無視されるべきではない」。
報告書によれば、DLTを使用してデリバティブ市場や貸出市場の担保プロセスを効率化することで、1000億ドルが節約される可能性がある。また、スマートコントラクトを利用してクリアリングや決済プロセスを自動化し、強化することで、さらに年間200億ドルの経費削減が見込まれる。

全体として、DLTを導入することで最も恩恵を受けるシステムは、クリアリングと決済であり、その次にカストディと資産サービスが続く。BCGの分析によれば、プライマリマーケットとセカンダリトレーディングは、この技術から大きな影響を受ける可能性は低いが、これらの市場でのトークン化により、リスク緩和や流動性の向上が期待される。
DLTは、国際的に採用が進んでいる。3月23日には、欧州証券クリアリング会社ユーロクリアが、DLTを決済プロセスに統合することを検討していると発表した。
しかし、既存の金融システムにDLTを導入する際には、まだ困難さがあるようだ。昨年11月、オーストラリア証券取引所は、25年間使用してきたクリアリング・決済システムをDLTで更新する計画を断念し、1億7000万ドル(約183億円)の損失を計上した。
最近では投資銀行シティが、2030年までにブロックチェーンベースのトークン化資産の世界市場が5兆ドルに達する可能性があると主張している。
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン