「仮想子猫(クリプトキティーズ)」と呼ばれる猫のイラストを集めるゲームがイーサリアム上でよく使われるアプリ(分散型アプリ、通称dApp)として一位となっている。イーサリアム上でアプリを動かすのに必要な一種の仮想通貨の単位である「ガス(またはガソリン)」の消費量から測ったもので、これまで一番だった仮想通貨取引アプリのイーサーデルタを超えた。

Crypto Kitties Surpass Ether Delta Cointelegraph

 イーサリアム上での取引量やガス消費量を追跡するサイト「ETHガスステーション」によると、イーサリアム全体で生成された直近1500ブロックのうち13.94%の取引が仮想子猫のプログラムであるスマートコントラクトを実行するためのものだったという。これは分散型仮想通貨取引所であるイーサーデルタやシェイプシフトの取引を上回る量だ。

1000万円以上で取引される仮想子猫も

 仮想子猫はイーサリアム上で誰もが子猫を育てて取引できるアプリだ。分散型ネットワークで行われるため、自分本位で子猫の所有権を変えたり勝手に子猫を作り出すことができない。こういった特性が、各子猫を希少価値の高い収集グッズにしている。

 業界の事情に詳しいプロダクトハント社のライアン・フーバーCEOによると、仮想子猫アプリは初めてイーサリアムを使ったポケモンのようなデジタルペット収集・育成ゲームだという。仮想子猫がポケモンや「たまごっち」と違うのは、ユーザーが分散ネットワーク上の市場で仮想通貨であるイーサを使い、子猫を取引できることだ。

Whatis Crypto Kitties Cointelegraph

 これまでに一番高く取引された仮想子猫のトップ三位は、それぞれ11万4573ドル(約1300万円)、8万1549ドル(約920万円)、6万9600ドル(約780万円)で、総額で572ETHだったという。また、全体では立ち上げから数週間で1.5億円相当の取引が行われたという。

 さらには仮想子猫人気がイーサリアム上の取引スピードを遅くしているようだ。仮想子猫開発チームによると、「ネットワークの混雑のため子猫を生み出すコストを0.001ETHから0.002ETHに引き上げる。これにによって子猫が時間通りに生まれるようになる。引き上げた分の費用は、ブロックチェーンに新たな子猫生成取引を追加するマイナーへの支払いに回される。長期的な解決策についても検討中だ。」としている。

新たな巨大アプリ産業の誕生につながるか

 仮想子猫アプリの開発チームによると、同アプリには、ビットコイン採掘者や、ベンチャー投資家、ICO実施者等特定の知識を持つ一部の人だけではなく、多くのユーザーにブロックチェーンを使ってもらいたいという願いが込められているという。

 米仮想通貨取引所最大手コインベースの共同創始者であるフレッド・アーサム氏によると、イーサリアムの拡張性(スケーラビリティ)問題が数年のうちに解決されれば、分散型ネットワーク上のアプリ市場は数百兆円規模に成長する可能性もあるという。例えは分散型ネットワーク上で仮想通貨取引所を運営するプロトコルを使えば、既存の金融機関を置き換えるインフラを作ることができる。

 仮想子猫アプリは余興に過ぎないとはいえ、分散型ネットワーク上のゲームとしてうまくいった初めてのケースだ。今後、伝統的なゲーム業界も参考にし始めるはずだ。

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