仮想通貨(暗号資産)市場のバロメーターとなるビットコイン(BTC)が、3月の大暴落から完全に復活したことを疑う人はもはやいないだろう。記事執筆時点では9000ドルを回復し、投資家が今年中に到達するだろうと期待する1万ドルまであと少しのところまで来ている。

しかし、「仮想通貨の冬の時代(クリプト・ウィンター)」が終わりを迎えた兆しは出ているものの、多くの専門家はまだ慎重であるようだ。

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仮想通貨は当初、不安定な通貨として悪名高く、1セント以下の価値しか持たなかったが、2013年から2016年にかけて400ドルから1242ドルまで上昇した。2017年には4400ドルまで上昇したかと思いきや、その年の終わりには、一気に2万ドルを超えるのを目の当たりにし、歓喜の中で年を越えた。

そして、歓喜の後にやってきたのは「冬の時代」だった。ポンジスキームや大規模なハッキング、違法に仮想通貨をマイニングする「クリプトジャッキング」が立て続けに起こり、メディアは仮想通貨に否定的な報道を続け、価格は急落した。

この記事ではクリプト・ウィンターは終わったのか、すでに投資している人は希望を持てるのか、まだ投資していない人は価格が急上昇する前に投資すべきなのか、といった疑問について解説する。さらに仮想通貨業界の内外に存在するブロックチェーン技術に焦点を当て、なぜこの新技術の普及が仮想通貨の将来の成功の指標となるのかを説明しよう。

クリプト・ウィンターは終わったのか

「クリプト・ウィンターは終わったのか」の問いに専門家の多くの答えは「イエス」と答えている。仮想通貨愛好家からフォーブスに至るまで、ほとんどの人はビットコインは今後10年、巨大な利益を得るために準備していると信じている。

仮想通貨業界の波瀾万丈な動きは、サトシ・ナカモトと同じくらい謎に包まれているが、仮想通貨の基礎的な知識の理解が深まり、信頼される安定期に向かっているように感じる。

米国の世論調査では、米国人のわずか4%しか仮想通貨を長期投資先として見ていないことが示されている。しかしこれは近い将来にかなりの確率を持って変化が訪れるだろう。ビットコインには成長の余地が残されているのだから。

多くの人はビットコインの未来についてインターネットの勃興と比較し、ビットコインはインターネットが1995年に経験したのと同じ普及の道筋を得るために、成長痛に苦しんでいるところだと主張する。

ビットコインを所有している米国人は11%に過ぎない一方で、この普及率についてはスマートフォンの普及の初期段階と同様な状況だと指摘する市場専門家の声もある。

さらに新型コロナウイルスの発生によって従来の銀行や投資機関が混乱したことで、インフレや法定通貨の信頼性に疑問を感じ始めたことによって、仮想通貨への投資の動機付けになるのではないかとされている。

仮想通貨の取引の問題としてプライベートネットワークやVPNを使用しなければ完全に安全で、匿名性を確保できないことも指摘されている。これは不可逆性を意味している。つまり一度コインがあなたのアカウントから消えると、もはや痕跡をたどることはできなくなるということだ。ハッカーは仮想通貨取引所に侵入する際に、この特性を利用し、各ユーザーから少量ずつ盗んでいるのだ。

こうしたことからビットコインが広く一般の人々から信頼を得るのは時間がかかりそうだが、進んでリスクを取る人々にとっては2020年は最も収益性が高い投資の年となった。特にビットコインの成長を10年間待つことができる人にとって最も有益な投資となるだろう。

ブロックチェーンー仮想通貨の背後に控える真の勝者

仮想通貨の将来にはまだ、多くの可能性が残されている。デジタル専用通貨を作るというアイデアはサイエンスフィクションと同じくらい古いものであることは周知の事実だ。輸送から食品、医薬品、ゲームに至るまで幅広い産業がソリューションとしてブロックチェーン技術に注目し続けている。

7年後には3000億ドル相当の食品がブロックチェーンを使って追跡され、年間で1000億ドル以上の節約になると推定されている

2018年、JPモルガンはブロックチェーン技術がクロスボーダー決済の未来の姿であると公表し、従来の金融業界を驚かせた。その1年後にはIBMやシティバンク、バークレイズが独自のブロックチェーンベースのプラットフォーム開発を発表し、ドバイは2020年までにブロックチェーンを活用した決済を行うことを目標とする声明を出した。

ブロックチェーンは比較的新しい技術ではあるものの、ブロックチェーンと仮想通貨が今後数年で世界を席巻することは疑いの余地はない。

数えきれないほどの一流のエンジニアやプロダクト開発者、デザイナーがブロックチェーン上にソリューションを構築し、様々な業界に普及させようと日々努力している。

一般の人々に仮想通貨を必要とされるために、ブロックチェーン技術が完全に理解され、利用され、評価されるようになるのを待たなければいけないだろう。

結局、仮想通貨のような金融投資は浮き沈みが激しいものだが、ブロックチェーンのようにすでに実績が証明されている技術的ソリューションほど信頼できるものはないのだから。

「春の大掃除」の準備はできているか

未解決の疑問や問題が多く残っていることは、慎重な投資家にとっては不安要素として映るだろう。しかしこれらの障害は、インターネットやiPhoneのような成功を見た画期的なテクノロジーが直面した状況と似ている。

さらにビットコインに関連する否定的な報道の多くは、十分な金融知識とサイバーセキュリティがあれば簡単に回避できた事件だ。

銀行などの伝統的な金融機関が、既得権益を守るために、仮想通貨を怪しげな投資先として見せかけていることにも注意が必要だ。大手銀行や伝統的な投資プラットフォームはリサーチやニュース記事に大量に資金を供給し、日々の情報を流している。これらは仮想通貨業界を正しく描写しているわけではなく、彼らが仮想通貨に対してみせる恐怖心の表れでもあるだろう。

確かに短期や中期的に安心して小さな利益を求めるのであればビットコインは適切な投資ではない。

しかし、今後成長する新しい業界に投資することで、大きな利益を得たいと考えているならば、今はビットコインを購入する良いタイミングかもしれない。ただ、現在は将来のセキュリティや仮想通貨のユーザビリティ改善のために必要とされる「春の大掃除」が起きるかもしれない。

結局のところ、リスクがないところに報酬はない。全ての人々が今後数年間でビットコインに歓喜する時を待つ前に、投資することが賢い選択となるだろう。

ここに表示された見解および意見は、著者のものであり、必ずしもコインテレグラフの見解を反映するものではありません。

Sam Bocetta はフリーランスのジャーナリスト。、米国の外交と国家安全保障を専門とし、サイバー戦争、サイバー防衛、暗号技術の技術動向に取材を続けている。以前は、米国国防総省の請負業者として、アーキテクトや開発者と協力して、アプリケーションの脆弱性の制御を緩和する仕事に従事していた。


翻訳・編集 コインテレグラフジャパン