シルバーゲート銀行の閉鎖は、米国の銀行システムにとって組織的なリスクではないが、仮想通貨市場に大きな影響を与える可能性がある。複数の業界関係者によれば、その結果、少数のパートナーへの銀行集中が進み、米国での銀行関係の確立を目指すベンチャーキャピタル企業でも課題が浮上することになるという。

シルバーゲートは、金融機関向けの仮想通貨-法定通貨のゲートウェイネットワークとして、米国における仮想通貨の重要なオンランプとなっていた。だが3月8日、親会社であるシルバーゲートキャピタルコーポレーションが、資産を「自主的に清算」し事業を停止する計画を明らかにした。

この事業停止は、仮想通貨-法定通貨の即時取引を処理するためにシルバーゲートに依存していた「膨大な数のマーケットメーカーと取引所」に影響を与えると、分散型開発企業シップヤード・ソフトウェアの共同創設者兼CEOのマーク・ルーリー氏は指摘する。同氏は、仮想通貨企業と提携する銀行はまだ少ないことから、シルバーゲートが業務を縮小するにつれて、業界におけるリスク集中も高まることになると主張する。

「私が2011年にビットコインを始めたとき、この業界に関わるFDIC保険付き銀行が実際に破綻するとは思ってもみなかった。これは確かに後退であり、しばらくの間、デジタル資産業界全体に影響があるだろう。最近の規制措置を考えると、仮想通貨ベンチャーが米国で銀行との取引関係を得るにはしばらくは難しくなるのではないかと思う」と仮想通貨界隈の大御所チャーリー・シュレム氏はコインテレグラフに語っている。

仮想通貨取引所FTXの破綻は、シルバーゲートの流動性問題につながったが、シルバーゲートは仮想通貨市場の低迷により2022年の早い時期にすでに影響を受けていた。2022年第4四半期の流出により、普通株主に帰属する純損失は10億ドルとなった。前四半期、シルバーゲート・エクスチェンジ・ネットワークの送金量は1126億ドルで、2021年第3四半期と比較して500億ドルの減少となった

「シルバーゲート銀行は多くの仮想通貨預金を集めていたが、FTX破綻の連鎖反応が波及すると、同行は預金の大幅な流出に直面した。これは、彼らが債券を売却することを余儀なくされ、最近金利が上昇したため、重大な損失をもたらした」とファイナリー・マーケッツの広報担当者は説明し、次のように付け加えている。

「自己資本比率が急速に悪化し、より多くの顧客が資金を引き出すという悪循環が発生した。[...] これは、少なくとも、より包括的な規制の枠組みが確立されるまでは、仮想通貨が米国外に移動するという傾向を生むかもしれない」

ルーリー氏によれば、シルバーゲートとの銀行取引停止は、この業界における過去の失敗例とは異なるものだという。「ルナやFTXが、実際には債務超過であったにもかかわらず、その破綻を取り付け騒ぎとしてごまかそうとしたのとは異なり、シルバーゲートの状況は、本物の取り付け騒ぎのように思える」と述べている。

米国当局が銀行に仮想通貨産業へのサービス提供を抑制しているとの見方もある。この指摘は、「複数の規制機関を通じて、銀行が仮想通貨企業に対応するのを阻害する」というもので、仮想通貨ビジネスが 「完全に銀行化されない」状態になるよう導いているというものだ。

銀行が仮想通貨企業との関係を断つ中、バイナンスは2月に米ドルの銀行送金の一時停止を発表した。そのわずか数週間前の1月、バイナンスは、SWIFT送金パートナーであるシグニチャ―銀行が、10万ドル以上の米ドルの銀行口座を持つユーザーによる取引のみを処理すると発表していた

最近の規制の動きは、シルバーゲートが仮想通貨業界に対する銀行事業を終了させる理由として挙げたものの一つだ。しかし、シュレム氏によれば、米国当局の仮想通貨業界に対する規制強化は、時間の経過とともに業界との銀行関係の数と質を高める可能性があるという。

「今後を考えると、楽観的にならざるを得ない。この業界は、これほど若いのにも関わらず、飛躍的な成長を遂げた。そして、米国と世界において、より良い、より公平な金融システムを構築する過程にあると、私は今も確信している」