米国の仮想通貨推進団体が、パレスチナの過激派組織ハマスと仮想通貨による資金調達との関連性を巡り、エリザベス・ウォーレン上院議員らの主張に対して反論を展開している。

10月17日、ウォーレン氏を含む100人近い議員が、ハマスによるイスラエル攻撃を受けて、ハマスやパレスチナ・イスラム聖戦への資金供給に使われる「違法な仮想通貨活動」を抑制ための行動を政府に求める書簡に署名した。ウォーレン氏はまた、10月18日にロジャー・マーシャル上院議員と共にウォールストリートジャーナルに寄稿し、「仮想通貨によるテロ資金調達」が米国市民を危険にさらしていると主張した。

ウォーレン氏は、デジタル資産マネロン対策法を提案し、「従来の決済システムを悪用から守るための同じルールを仮想通貨にも適用する」ことを目指している。

仮想通貨イノベーション協議会のマネーロンダリング対策ディレクターのヤヤ・ファヌシエ氏は、ウォーレン氏の提唱する方法では米国の管轄外で発生している問題に対処できないと指摘する。

「彼らが提案しているKYC(顧客確認)規則は、コピー機製造業者がコピー機を使用するすべての人々に対してKYCを求めるようなものだ」とファヌシエ氏は語る。「ウォーレン氏とマーシャル氏は、基礎となるブロックチェーン技術が実際には取引を公開しており、テロリストとその資金提供者を特定するためのデジタルな証拠を捜査員に提供することを理解していない」。

ブロックチェーン協会(BA)も、10月18日のX(旧Twitter)のスレッドで同様の主張を行い、4月の報道を引用し、ハマス内のグループがテロ活動を支援するためのビットコイン(BTC)の使用を停止したと指摘した。ブロックチェーン協会によれば、「仮想通貨が使われているのは、ハマスの資金のほんの一部でしかなく」、イスラエルへの最近の攻撃で一部でしかない仮想通貨がどう使われたのかも不明だ。

ウォーレン議員らの提案は「法を遵守する米国のユーザーを罰し、業界の全ての関係者を米国の法執行機関の手が届かない他の管轄地域に押し出すだけだ」とブロックチェーン協会は主張した。

ウォーレン氏の寄稿記事や米財務省外国資産管理局(OFAC)による制裁は、ハマスによる10月7日のイスラエル攻撃を受けて行われた。この攻撃により多数のイスラエル人が死亡し、イスラエルはハマスに対して戦争を宣言し、ガザを爆撃し始め、交戦地域に閉じ込められた何十万人もの人々に人道的危機を引き起こした。

ウォーレン氏を含む一部の米国議員は、イスラエルの問題が浮上する前から、デジタル資産がロシアへの制裁を逃れるために使われていると非難していた。ハマスがイスラエルを攻撃する前、ウォーレン氏は特に、仮想通貨がフェンタニルの生産などの違法目的に使われているという問題に対して厳しく批判していた。

「この問題を政治化するのではなく、ウォーレン氏とマーシャル氏は、犯罪者を追跡するのに追加のリソースが必要な、複数の機関に所属する才能ある思慮深い人々をより良く支援すべきだ」とファヌシエ氏は語った。「米国は、法執行機関や国家安全保障担当者が最高のツール、訓練、専門知識、情報にアクセスできるように、積極的な措置を講じるべきだ。これには、仮想通貨を含む違法活動の対策も含まれる」とファヌシエ氏は言う。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン