中国の仮想通貨ファンドである龍門キャピタルの日本代表サニー・ワン氏は、中国におけるビットコインの最大の応用事例は「国際送金」であると述べた。コインテレグラフ日本版の取材に答えた。また、2017年に仮想通貨取引所の運営が禁止された後も、なぜ中国が仮想通貨市場に影響力を持ち続けているのか解説した。

最大の応用事例は「国際送金」

龍門キャピタルは、中国最大の投資ファンドINBlockchainから派生したファンド。2011年に設立し、ビットコインが1~10ドルだった時、13万BTCを購入した。中国トップクラスの取引所Yunbiの運営の他、100以上のプロジェクトに直接投資、2000以上のプロジェクトを支援した実績がある。

中国情勢に詳しい巨額仮想通貨ファンドも、最近は国際的な政治経済の動きがビットコイン相場にも影響を与えていると実感している。

ワン氏は、米中貿易戦争と人民元安のビットコインへの影響について「もちろんビットコインにとってはプラスになる」と発言。ビットコインの最大の応用事例は「国際送金」と指摘した。

「つまり今までの銀行を通じた国際送金をビットコインでより簡単に実行でき、送金の壁を壊したような感じです。もちろん、中国は外貨制限の国であり、その特徴からより強くビットコインの強みが表していると思います。」

中国の人民元による国際送金は送金額の上限が政府によって決められている。このため、多額の資金を国外に移動したい時は、ビットコインが重宝されている。

またワン氏は、人民元安がビットコインによるリスクヘッジに拍車をかけていると述べた。

ビットコインは、中国では有事の際のリスクヘッジ手段としてではなく、送金手段という実需もあるようだ。

香港情勢の影響は限定的

一方ワン氏は、香港情勢のビットコインへの影響は限定的という見方を示した。

香港は元々『外貨制限』の無い地域であり、資金移動ルートとしての選択肢は沢山ある。香港情勢は更に悪化すると人民元と香港ドルに大きな影響を与えるが、ビットコインに対する影響は限定的で、ほんの一部の人だけヘッジ手段としてビットコインを購入する」

3ヶ月以上に及ぶデモのきっかけとなった「逃亡犯条例」の改定案は撤回された。しかし、香港人の抗議活動は収まっていないと報じられている。

既報の通り、一部では香港政府による資本規制の結果、ビットコイン購入が増えるという見方も出ていた。

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そもそもなぜ中国市場が影響力を持っている?

中国政府は2017年9月4日に全ての仮想通貨取引所に業務禁止命令を出した。これは「9.4事件」と呼ばれている。「禁止前までは、中国(人民元)の取引量は世界の仮想通貨全体の取引量の半分ほどを占めており、利用者の絶対数も多かった」とワン氏は振り返った。

しかし、中国の仮想通貨市場への影響力は衰えていないと述べた。

「取引所は閉鎖されたとは言え、多くの取引所は本店所在地を海外に移転し、今もグレーゾーンで運営している。ユーザーの絶対数から考えると、中国は今後も仮想通貨相場に影響力を持つでしょう。そして中国経済が明らかに減速しているなか、仮想通貨は投資先とリスクヘッジ手段として注目されています。

また、仮想通貨のブロック生成をするマイナーの影響力も大きい。

電気代の安さとインフラ整備からビットコインのマイニングの8割が中国で行われていると言われているが、ワン氏は、「マイニングする電力代と人件費を払う為にはOTC取引等も盛んに行われるのは中国市場」と指摘した。マイナーは、マイニングの報酬や手数料で得た巨額ビットコインをそのまま保有するのではなく、電力代や人件費を払うために人民元に交換する必要がある。中国のOTC(店頭)取引市場が仮想通貨相場に影響力を持つ理由の一つだ。

先日、コインテレグラフ日本版の取材に答えた中国人トレーダーでビットフィネックス株主のドン・チャオ氏も、「我々のような小規模な起業家は仮想通貨ビジネスを続けられる」と明かしていた。

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