12月10日にラスベガスで開催されたイベント「ELEV8」において、仮想通貨ウォレットアプリを手がけるセルシウス・ネットワークのアレックス・マシンスキーCEOが、中央集権型ネットワークと分散型(非中央集権型)ネットワークとの間で戦争が起こっていると発言した。

マシンスキーCEOは、「フェイスブックやグーグルといった企業によるインターネットの中央集権化により、フェイクニュースや露骨なウソが事実と同じ扱いを受けるという、いびつな現実を生み出した」と述べた。

マシンスキーCEOによると、中央集権型SNSの台頭によってフェイクニュースが増加し、さまざまな問題・出来事の事実に関し多くの混乱を招いているという。

またフェイクニュースは読者の関心を引き付けやすく、これがフェイスブックやグーグルなどの企業にとっては大きな利益に結び付いていると指摘した。

マシンスキーCEOに「それらウソが(消費者・企業間に)エンゲージメントをもたらすとなった場合、すぐに莫大な利益に変換され、彼らからお金を絞り取るため精力的に働く世界最高のアルゴリズムによって、押し出し引き立てるに値すると判断される。民主主義や人権について心配する必要はない。学校や障害者支援の寄付金のうち1%をネット広告の発行に使うだけで、巨大な利益を求めてあらゆる病気を治せたかのように広めてくれる」と述べた。

ブロックチェーン基盤のソリューション

コインテレグラフに対しマシンスキーCEOは、ブロックチェーン基盤のデータ・プラットフォームが、フェイクニュースに対抗できる唯一のソリューションだと明かした。そのようなシステムにより、ユーザーの身元とデータの信頼性を検証することで、ネットワーク世界に必要な透明性を担保するレイヤーをもたらせるという。

同氏は、ブロックチェーン技術を利用し、ネットワーク内の内部操作を記録するSNS「ボイス」のようなプロジェクトは、インターネットに信頼性をもたらす最初の分散型アプリのひとつになるだろうと述べた。ボイスは、仮想通貨イオス(EOS)の開発企業ブロックワン(Block.one)が開発中のSNSで、2020年2月14日にベータ版がリリースされる予定だ。

ユーザーの個人情報を許可なく抽出する中央集権型SNSと異なり、ボイスにおけるすべての操作はブロックチェーン上に記録される。またボイスのユーザー登録には身元確認が必要で、SNSへの投稿はすべて特定の人物に結びつきたどれるようになっており、偽IDや不正なコンテンツを減らせるという。

ただしマシンスキーCEOは、ボイスのようなプラットフォームが市場に登場しても、ユーザーを魅了できる力の獲得は依然として課題になると指摘した。

「我々自身を保護し、我々自身の利益を最大化するよう設計されたプラットフォームは従来から存在している。我々は、世界の70億人がそれを発見するのを待っている状態だ。彼らが発見次第、インターネット全体をブロックチェーン上のアプリケーションとに変えられる」

ブロックチェーン世界のエコシステム

ELEV8では、マシンスキーCEOは「ブロックチェーン・エコノミクス」という講演を行った。この時公開したスライドの内容は「E = MC2」で、「E=イーサリアム」、「M=メンバー」(構成員)、「C=コンセンサス」(合意)を表しているという。「ブロックチェーンとしてのイーサリアムの価値を高めるには、多くの構成員との合意が必要だ」と説明した。

マシンスキーCEOは、ブロックチェーンの誇大広告は旬を過ぎたが、キャズムを超える必要がまだ残っていると講演を締めくくった。ステーブルコインが、仮想通貨の可能性を人々に理解してもらう足がかりになることを指摘し、中央集権型SNSをまったく利用しないことを推奨した。

「我々がこの依存を止めるだけで、フェイスブックは力を失い、驚くほど早く消える。

なぜ私はそう断言できるのか? 私は以前、毎月700ドル(約7万6000円)を顧客に請求していた古い電話会社が消滅するのを手伝った。今や、(インターネット経由の音声通話が可能な)VoIP技術の普及によって電話会社に頼る必要がなくなり、無料で通話できる(マシンスキーCEOは、VoIP技術の初期開発者のひとり)。

我々次第で、より中央集権化するか、分散化するのか決まる」

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン