仮想通貨ビットコイン (BTC) のパイオニアであるジェフ・ガージク氏は、11月9日付ブルームバーグ掲載のインタビューで、仮想通貨トップのビットコインは当初企図されたような決済手段にはなっていないかもしれないが、価値保存手段としては「間違いなく成功を収めている」と述べた。

ビットコインを作ったサトシ・ナカモト氏の主要協力者の一人でありビットコインコードに3番目に大きく寄与したと言われるガージク氏は、ビットコイン10周年直後のこのインタビューでこう述べている。

「ビットコインは、我々が最初期に企図した方向、つまり商業従事者にそれを受け入れさせるという方向とは違って大きなボリュームを持つ決済手段にはなっていない。しかし、価値保存手段としては間違いなく成功を納めている」

ブルームバーグはブロックチェーン情報企業チェーンアナリシスの最近の研究を引用している。この研究は、ビットコインはデジタル「ゴールド」とも言われ投資家の間で資産として人気を博してきたが、商業の場でのプライベートマネーとしての利用は実のところ減っていると述べている。

ガージク氏はビットコインの革命の紆余曲折に動ずることなくこう述べる。「ビットコインは有機体であり、進化するものだ」それから心配そうな口調でこう言った。

「たとえ彼らが間違いを犯したり、期待したように育たなくても私は父親として子供たちの成長を楽しく見守っている」

ブルームバーグが概説している通り、ガージク氏はまだ初期段階にあったプロジェクトについてのブログ投稿を読み、2010年7月にはすでにビットコインのソフトウェアコードを書き始めていた。このビットコイン先駆者は当時「ノースカロライナ州ローリーのがらがらの駐車場に停めたRV車の中で、オープンソースソフトウェア事業大手レッドハット社の仕事を、会社の席を離れてやっていた」。

現在44歳のガージク氏は、ビットコインの幼年期、メールでサトシ・ナカモト氏と個人的にやり取りし、ビットコイントークフォーラムにも個人的に参加していた。その後2011年にナカモト氏は突如として姿を消しすっかり神話と化した。

ビットコイン発明者ナカモト氏の正体についての様々な仮説に関しガージク氏はこう語る。

「私は個人的には (サトシ・ナカモト氏は) フロリダのデイブ・クレイマン氏だと考えている。コーディングのスタイルが彼のものと一致するから。この人は独学で学んだ人だ。ビットコインのコード作成者はとてつもなく頭のいい人物ではあったが正統の教育を受けたソフトウェアエンジニアではなかった」

ガージク氏は2016年までビットコインプロジェクトのコーディングを続け、現在は仮想通貨決済処理会社ビットペイ、マイニング技術企業ビットフュ―リー、リナックスファウンデーションの取締役を務めている。また、企業向けブロックチェーンのスタートアップ、ブロック(Bloq)社も共同設立した。

ガージク氏は仮想通貨開発コミュニティ内の論争についても傍観者ではない。2017年のビットコインのハードフォークSegWit2xには異論も多かったが、同氏はこのハードフォークを支持する立場をとった。

ビットコインのスケーラビリティに関する問題解決法についてはコミュニティ内部でも相変わらず意見が分かれているが、 SegWit2x のすぐ後に別のフォークが実施され、その結果ビットコインキャッシュ (BCH) が発行された。そして今度はビットコインキャッシュのハードフォークを巡りこの夏コミュニティの分裂が再燃した。今回対立しているのは、BCH の主要クライアントビットコインABC と、以前自分こそが本当のサトシだと語ったクレイグ・ライト氏のブロックチェーン開発企業 nChainだ。

ライト氏は今年、ガージク氏が「ナカモト氏」と考えるデイビッド・クレイマン氏の相続人により50億ドルの支払いを求める訴訟を起こされている。