ビットコイン(BTC)と金(ゴールド)の1ヶ月間の相関は、ビットコインが8月はじめに12,000ドルに達したことで68%にまで上昇したが、翌週には相関は20%にまで急落した。それでも価格の相関関係や先物市場の動向を考慮すると、2020年にはビットコインはデジタルゴールドとみなされているようだ。

金とビットコインの両方が、年初来のリターンという点で驚異的な数字となっている。Skew Analyticsにいよれば、金のリターンは27.93%、ビットコインのリターンは71.68%となっている。ビットコインは金よりもはるかにボラティリティが高いように見えるが、新型コロナウィルスのパンデミックによる不確実性に見舞われている中、投資家はビットコインや金といった資産に引き寄せられているようだ。

同じだけど違う

ビットコインと金とは、伝統的な意味で非常に異なる資産だ。これは主に流動性面によるものだ。どちらも資産ライフサイクルでは異なるフェーズにある。金の時価総額は現在約9兆ドルだが、ビットコインはわずか2280億ドルでしかない。

この大きな違いがあるものの、金とビットコインには2つの類似性がある。どちらの資産も「採掘」され、希少性があるため非弾力的な供給となっている。つまり資産の価格がいくら上昇しても、生産が制限されているため供給を増加できないことを意味している。弾力的な供給のある商品は不足することはなく、価値の蓄積とはみなされない。

仮想通貨(暗号資産)取引所OKCoinの流動性マネージャ―であるダン・ケラー氏は、「あらゆる資産は需要と供給に基づいて価値を持つことになるが、金とBTCの入手困難さはそれらに価値の保存手段としてのユニークな青写真を与えている」と、コインテレグラフに語っている。

金は価値の保存手段とみなされる資産だが、電子機器や宝石などでの用途もあり、政府や中央銀行によって準備資産としても利用されている。一方で、ビットコインは純粋に価値の保存手段として投資家に使われている。

ケラー氏は、ビットコインのボラティリティが、安全資産という「デジタルゴールド」の称号には有害でもあると指摘している。「ビットコインはこの称号を保持するために戦ってきたが、過去の高いボラティリティの期間により、市場においてこの称号を獲得することを防いでしまっている」と、ケラー氏は主張する。

仮想通貨企業Bequantのリサーチ責任者、デニス・ヴィノクロフ氏は、ビットコインマキシマリストはデフレ資産を評価すると述べ、「金が持つ安全な避難場所としてのインフレヘッジの特徴を考えると、ビットコインがネイティブに表すものに似ている唯一の資産だろう」と、コインテレグラフに語っている。

相関関係は金融市場において、この2つの資産を比較するためによく使われるが、ヴィノクロフ氏は、様々な時間枠での相関値ばかりを見るのではなく、ビットコインの多様性に注目するべきだと、投資家に警告している。

「2つの資産の間の相関関係は最近は68%まで上昇しているが、はるかに広く使用される3ヶ月間の値はわずか1%だ。1年などのより長い期間では、相関係数はより低くなる。そのため、この指標に基づいて投資仮説を作成する場合には注意が必要だ。その代わりに、ビットコインの分散機能に焦点を当てた方が良い場合もある」

より長い期間にわたると、ビットコインは投資家が利用できるすべての主要な資産とほとんど相関がないことに注意することは重要だ。伝統的な資産との相関は通常0.5からマイナス0.5の間であり、それは相関関係が非常に弱いことを示唆している。

Picture 1

相関関係の数値を見る場合、2つの資産は最終的に、それぞれに影響を与える異なるマクロ経済要素とミクロ経済要素を持つ別々の市場を表していることに留意することも重要だ。ケラー氏は次のように指摘している。

「歴史的な相関関係は、2つの市場が一緒に動いたり、ばらばらに動いたりすることを示しためだけであり、そのような動きの説明ではないことを覚えておくが重要だ。…1つの資産のニュース(たとえばBTCのハードフォークなど)は、必ずしも金市場に影響を与えるわけではない。そのようなイベントに関するBTCのボラティリティは金市場にほとんど反映されず、資産のリターンに応じて相関が減少、もしくは逸脱する可能性がある」

たとえば、ナスダック上場のビジネスインテリジェンス企業マイクロストラテジー(Microstrategy)がビットコインを2億5000万ドル分購入し、インフラヘッジ資産とした時に、ビットコインと金の相関は過去最高を記録していた。これは機関投資家の関心が高まっていることの主要なサインとみられている。米仮想通貨企業Gate IOの最高マーケティング責任者のマリー・タチブエ氏は、この現象に注目するべきだとコインテレグラフに語っている。

「Q1とQ2の間、相関関係は上昇しており、コロナウィルスの発生以来、50%と60%と非常に高い数値に達している。パンデミックによる不確実性の中で、世界的にインフレの懸念が浮上しており、人々は安全な避難資産を探している」

ほかのマーカーとの相関

金との相関に加え、ビットコインは米株式指数S&P500や米ドル、さらにVIXボラティリティ指数と比較されることがよくある。それでも、石油が市場で最も取引されている商品であるにも関わらず、ウェスト・テキサス・インターメディエイト(WTI)とBTCの間には相関関係はない。

これは、石油の供給量が多く、豊富で安価な資源とみなされているためだ。最近のパンデミックの中でも、この動きは顕著だった。原油価格は先物でマイナスを記録し、投資家は原油を貯蔵するためにお金そ支払うことになった。タチブエ氏は、S&P500がビットコインとの価格相関のベンチマークとして使われる理由について詳しく説明した。

「ビットコインとS&Pの間の相関関係は、デジタル資産と金との間の相関関係より、長期にわたって重要だった。同時に、金とBTCはよりパラレルな関係にあるようにみえるが、BTCとS&P500の相互作用は異なる形で発生し、ほとんどの場合、より周期的に変動する。BTCの価格が下がると、株式市場指数との相関は高まり、BTC価格が跳ね上がると、その相関は減少する」

長期および短期双方の相関では、ビットコインは金よりもS&P500との相関が高い。1年の相関ではS&P500との相関は0.36だが、金は0.08だ。

よりリスクが高いとみられるビットコイン

歴史的に最もコモディティ化された資産の1つである金と比較して、ビットコインはボラティリティが高く、流動性が低く、政府や機関投資家による採用のレベルが低いため、リスクが高いと考えられている。ヴィノクロフ氏は、ビットコインのリスクとの関連で価格変動について詳しく説明している。

Picture 2

「ビットコインがパラボリックな価格変動を起こす傾向、そして同時にフラッシュクラッシュを起こす傾向は、価値保存手段の資産であるいう概念に対する大きなリスクだ。結局のところ、ボラティリティは流動性の逆指標であるといえる。…どの資産も過度なボラティリティにさらされる可能性があるが、それは流動性プロバイダーを含む市場参加者が、価格発見の空白や重要なほかのリスク要因にどのように反応するかだ」

タチブエ氏は、金が歴史的により安定した資産であることに同意し、「ヘッジに関しては、BTCは短期的に、特に動揺している市場においては効果的である」と主張している。さらに、タチブエ氏は「金のリターンは、ビットコインのものよりも低く、デジタルゴールドはそのリスキーな面があるにも関わらず、より魅力的になっている」と指摘している。

ビットコインを12,000ドルにまで引き上げた現在の強気の動きは、いくつかの伝統的な資産や商品がビットコインとの価格関係を確立する可能性がある。ただし、投資家はこれらの相関関係に影響を与えるマクロ経済的事象に注意する必要があるだろう。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン