仮想通貨(暗号資産)取引所バイナンスの本人確認(KYC)要件の緩さが、2018年にハッキングされた日本の仮想通貨取引所Zaifの運営者から非難の対象となっている。

Zaifを運営しているフィスコ仮想通貨取引所は、バイナンスの緩いKYC要件と1日に引き出し限度額が高いため、6000万ドルのマネーロンダリングを促すことになったと主張している。訴訟は米カリフォルニア州北部地区の裁判所で提起された。

フィスコは、バイナンスが900万ドルの仮想通貨をマネーロンダリングを促すことになったと非難し、この損失を補償するよう求めている。フィスコ側は、バイナンスにはブロックチェーンの追跡可能な特徴を使い、流出した資産を特定してそれを阻止する能力があったと主張している。

訴状の大部分では、世界中に分散したチームで運営し、法的にはタックスヘイブン国に拠点を置いているバイナンスを訴えるため、なぜカリフォルニア州が適切な管轄権になるのかを説明している。

議論の最初では、バイナンスのサーバーがアマゾンウェブサービス(AWS)を使用しており、それがカリフォルニアにあるということだ。この文書では、クラウドプロバイダーが自由に切り替えることができるグローバルカバレッジであることを認めているが、インフラのほとんどはカリフォルニアにあると主張している。

さらに、バイナンスがカリフォルニアに拠点を置くカストディアンのコールドストレージを使っていると主張している。この主張は、バイナンスが買収したSwipeがコインベースとビットゴーを使用しているためとみられる。またバイナンスが出資しているFTXが、コインベースを使用しているとも報告されている。バイナンス自体がどのサービスを使用しているかについては何も示されていない。バイナンス自体がインハウスで開発している可能性もあるだろう。

最後に、サンフランシスコでの求人情報や従業員の存在に触れているが、それらのほとんどはバイナンスが買収したトラストウォレットに関連している。

こういった主張がやや不安定な基盤の上に構築されているように見える。この訴訟が裁判所で受け入れられるかどうかは不明確だ。バイナンスの管轄権を特定することは難しいとされており、訴訟を起こすことの難しさにつながっている。別の集団訴訟では、米ニューヨーク州で提訴されている

フィスコは、バイナンスがマネーロンダリングを促したと非難し、バイナンスを通じてロンダリングされたビットコイン1457BTCの返還と損害賠償の支払を求めている。

またフィスコ側は「標準よりも低い」アンチマネーロンダリング慣行のため、競争上の不公正があるとバイナンスを非難している。

マネロン関連でバイナンスを非難しているのはフィスコだけではない。最近ではFATF(金融活動作業部会)が発表した新しい報告書で、FATF規制を回避している仮想通貨取引所としてバイナンスを暗に例として取り上げている

バイナンスは今回の訴訟についてコメントを求めたが、返答はない。

フィスコ仮想通貨取引所は16日に「提訴した事実に相違はない」と、提訴した事実を認めている。「提訴内容、提訴に至った経緯、理由、今後の見通し等に関しては、各方面への影響を考慮し、現時点でのコメントを差し控えている」と述べている。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン