オーストラリア科学産業研究機関(CSIRO)とIBM、法律事務所のハーバート・スミス・フリーヒルズは、企業間の契約を効率的に履行することなどを目的としてブロックチェーンを基盤にしたスマートコントラクトのプラットフォームを共同で構築する。29日のプレスリリースで公表された。

オーストラリア国立ブロックチェーン(ANB)と名付けられたこの取り組みは、提携3者の持つ技術・科学・法律の専門知識を1ヶ所に集め、デジタル経済のための合法的な、全国規模のブロックチェーン インフラを作り出す。プレスリリースは以下の通りその概要を述べている。

「ANBは、組織が契約のライフサイクルをデジタルに管理できるようにする。それは単に交渉から署名までではなく、契約期間全体にわたり継続する。それにより透明性がもたらされ、ネットワーク内の当事者間で許可に基づくアクセスが可能になる」

またプレスリリースは、スマート・リーガル・コントラクト(SLC)に言及。SLCは、インターネット・オブ・シングス(IoT)機器のデータなど、外部データソースとのやり取りができる「スマート条項」を含められるように設計されており、所定の契約条件に合致すれば直ちに自動的に実行され、予め決められたビジネスプロセスやイベントを引き起こす。

その一例として、建設業界での利用が挙げられる。あらかじめ決められた量の建設作業が無事に実行された場合、スマートセンサーがその日時をブロックチェーンに記録し、建設会社の代わりに自動的に支払いを実行するスマートコントラクトを発動する。

今後はまず、IBMのブロックチェーン ソリューションを利用するパイロット試験として行われるという。国内の規制機関、銀行、法律事務所、企業の参加を招き、2018年末までに開始する計画だという。

IBMグルーバル・ビジネス・サービシーズのポール・ハチソン氏は、以下のように見解を述べた。

インターネットがコミュニケーションのための手段になったように、ブロックチェーンは取引のための手段になるだろう。初めは情報共有のためのツールでも、一旦採用が広がれば、大きく姿を変える。ANBがそのような商用ブロックチェーンの転換点となり、オーストラリア全体のイノベーションと経済発展に拍車をかける可能性がある」

オーストラリア科学産業研究機関(CSIRO)は、データ61と呼ばれるデジタル イノベーションセンターを通じて、オーストラリア政府の企業体として、多様な国内産業の進展を目的とした科学研究に取り組んでいる。

オーストラリアではANB以外にも、政府と金融業界がタッグを通じてブロックチェーンを統合する取り組みが進行中である。IBMとオーストラリア政府は今年7月、ブロックチェーンとその他の新たな技術を使って、国防省や内務省を含む連邦省庁全体のデータ セキュリティーと自動化を改善するために、10億豪ドル(7億4000万米ドル)の5年契約を締結した。