ステーブルコインや中央銀行デジタル通貨を経済に完全に組み込むと、銀行は不安定になるが、家計の福祉は向上する。米財務省のリサーチ部門が発表した研究結果がこう主張している。デジタル通貨がもたらす銀行へのデメリットは、ストレスがある時にはより「重大」になるという。

財務省の金融調査局の研究では、ステーブルコインやCBDCが導入に成功した後の金融分野における理論的な「安定状態」を検討した。

この研究の著者らは、デジタル通貨導入後、システミック・デレバレッジのリスクがあるとみている。すなわち銀行の自己資本が減少し、危機時の安定性が低下するリスクがあるという。

ステーブルコインやCBDCが導入されると、家計部門の流動性ポートフォリオの中で銀行預金がデジタル通貨と「競合」することになると彼らは主張している。そうなると、銀行は預金に支払う利息を上げることで、貸出金利と預金金利のスプレッドを縮小させ、デジタル通貨が存在しない場合よりも自己資本を少なくすることになる。

家計部門は、銀行とデジタル通貨の競争から利益を得るだろうと著者らは指摘している。

だが、デジタル通貨が銀行預金とあまりに競合した場合、結果として金融不安が家計に悪影響を及ぼす可能性があるという。そうでない場合でも、デジタル通貨が公共の福祉を高める最良の方法であるとは限らないようだ。「我々の結果は、金融摩擦がデジタル通貨の潜在的な利益を制限し、デジタル通貨の最適な水準は、競争環境下で発行される水準を下回る可能性があることを示唆している」という。