日産自動車の前会長のカルロス・ゴーン被告が逃亡している事件で、逃亡を手助けした罪で逮捕された親子に対し、ゴーン氏の息子であるアンソニー・ゴーン氏が50万ドル相当(約5300万円)の仮想通貨(暗号資産)ビットコイン(BTC)で協力金を送金していたことがわかった。

米司法当局が22日に連邦裁判所に提出した資料によると、仮想通貨取引所コインベースを通じて、逃亡を幇助したピーター・テイラー容疑者と同氏の父親で米陸軍特殊部隊「グリーンベレー」の元隊員であるマイケル・テイラー容疑者にビットコインで送金したという。

両容疑者は楽器のケースにゴーン被告を入れて、日本からの逃亡を手助けした罪に問われている。

ゴーン被告は日本からの脱出とレバノンへの転居などの見返りとして、親子に総額136万ドル(約1億4490万円)を支払ったとされる。その一部をビットコインで複数回に渡って送金された模様だ。ゴーン被告は2019年12月の逃亡前にピーター容疑者が運営する企業の86万2500ドルを送金していた。

テイラー親子は日本政府の要請により5月に逮捕されて以来、米国で拘留され、日本への身柄引き渡しの可否の審理が進められている。

逃亡と仮想通貨

ゴーン被告は金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)と会社法違反(特別背任)の罪で起訴され、保釈中だった2019年12月にレバノンに逃亡。日本政府は逃亡幇助の容疑でテイラー親子の身柄引き渡しを要請している。

ゴーン被告が逃亡を決断するきっかけの一つに日本で発生したマウントゴックス事件であったことが報じられている

米国出身で日本在住のジャーナリスト、ジェイク・エーデルスタイン氏によると、東京港区にあるホテルグランドハイアットのレストランで、仮想通貨取引所マウントゴックス(Mt.Gox)のマルク・カルプレス氏とゴーン被告が面会。ゴーン氏はマウントゴックス事件について関心を持ち、カルプレス氏の裁判と自分の事件との類似点を探していたという。エーデルスタイン氏はマルク・カルプレス氏に関する本も出版している。

カルプレス氏のケースでは、検察は業務上横領罪などで懲役10年を求刑。19年3月に東京地裁は、懲役2年6ヶ月、執行猶予4年の有罪判決を言い渡している。

NYタイムズによれば、エーデルスタイン氏は、ゴーン氏に対して「ベストシナリオならば、あなたは執行猶予判決を受けるだろう」と述べ、残りの人生全てを日本で過ごすことになるかもしれないと警告した。

こうした会話からゴーン氏が逃亡を決意したきっかけになったのではないかとの推測も流れている。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン