ビットコイン(BTC)の現物型上場投資信託(ETF)が承認されたら、価格はどのように動くだろうか?一部では最初の投資家の興奮が収まった後に価格調整が起こるとも言われている。このような議論はある面では有効かもしれないが、より広い視点を見落としている。ビットコインの現物型ETFが承認されれば、ボラティリティ、伝統的な金融資産との相関性、市場流動性など、様々な面で変化をもたらすだろう。

アービトラージ(裁定取引)デスクとETFプロバイダーは、初期の需要を支え、市場のフロントランニングを防ぐためのバッファーを作り出している可能性が高い。しかし、数時間か数ヶ月かを問わず、このバッファーは最終的には枯渇する。数ヶ月の長い時間枠で見ると、ビットコインの価格は特定の価格レベルでの当面の需要とコインの供給のバランスによって決定される。
ETF承認で投資家の幅が広がる
最初に考えるべき疑問は、なぜ人々はビットコインの価格が史上最高値を超えるのを待ってから投資を始めるのかだ。ほとんどの人は怠惰もしくは慎重であり、取引口座を開設したり、ブローカーの推薦を受けていない何かに投資することをためらうものだ。グレースケールがビットコインを裏付け資産とする信託ファンドを提供していても、伝統的な投資ブローカーがそのような商品を提供するインセンティブはほとんどない。
北米で34歳以下の平均貯蓄は1万7600ドル、35歳から64歳の間では14万2100ドルの貯蓄をもっている点が重要だ。このデータは、ビットコインの価格を10万ドル以上に押し上げるのはミレニアル世代やZ世代ではないということだ。現物型ビットコインETFが重要かつ本質的な理由の1つは、ベビーブーマーが投資するための労力が最小限になることだ。
さらに重要なことに、資産運用会社が運用手数料を維持できることであり、これにより商品を提供するインセンティブが大幅に増加する。つまり、ブラックロック、フィデリティ、ARKインベスト、ビットワイズ、ヴァンエックなどの発行体の営業チームは、内部および外部のクライアントを引き付けるために全力を尽くすだろう。これらの数兆ドル規模の資産運用会社が管理する他のファンドも、新たにローンチされたビットコインETFへの投資に動く可能性がある。
歴史的に、ETF業界ではトップ2の発行者の間で資産が集中している。たとえば、SPDRゴールドトラスト(GLD)とiシェアーズゴールドトラスト(IAU)は、業界の運用資産の85%以上を占めている。さらに、ステートストリートのGLDは0.4%の経費率を持っており、これはほとんどの競合他社よりもかなり高い。このデータは、ETF業界において早期に優位性を確保することが重要なことを示唆している。
現物型ETFが投資アドバイザーの懸念を和らげる
規制に関しては、米証券取引委員会(SEC)や議員からビットコインの合法性に関する明確な声明が出されたことは一度もない。実際、米上院議員のエリザベス・ウォーレン氏は12月11日、仮想通貨の不正使用を取り締まるための彼女の法案について、ほかの5人の上院議員が共同提案者として賛同したことを発表した。そういう状況で、ブラックロックとフィデリティがビットコインをサポートすれば、この資産クラスを正当性が増すことになる。
SECが現物型ビットコインETFを現金による拠出・償還に限定する方針は、税制面では投資家にとって理想的なソリューションではないかもしれないが、規制上の懸念を取り除く。これらのファンドが保有するすべてのビットコインは、SECによって事前に承認された仲介業者から取得されなければならないため、現物型ETFの承認は規制リスクを大幅に減らすだろう。
この違いは、潜在的な投資家がビットコイン取引を直接行う必要がないため、投資アドバイザーにも利益をもたらす。投資家自身は特定の税制を必要としない金融商品を好むことが多く、ETFは仮想通貨に直接投資するのに比べてはるかに簡単なオプションとなる。
これらの変化は当初は目立たないものかもしれないが、ビットコインの現物型ETF承認の影響は、最初の数時間や数日では起こるとは限らない。しかし、これらの5つの好ましい傾向が完全に勢いを得れば、ビットコインが再び10万ドル以下で取引されることはなくなるだろう。それは時間の問題である。
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン
本記事の見識や解釈は著者によるものであり、コインテレグラフの見解を反映するものとは限りません。この記事には投資助言や推奨事項は含まれていません。すべての投資や取引にはリスクが伴い、読者は自分でリサーチを行って決定してください。