個人のデータ管理の必要性が高まるなかで、日本国内でもブロックチェーンを活用する試みが続々と報じられている。

13日にはパーソルキャリアがNECと協力し、外国人IT人材の採用で、ブロックチェーン技術の導入を発表。転職希望者自身がデータの閲覧相手や範囲を主体的にコントロールする実証実験を始める。

また、国内人材向けでも取り組みが始まっている。慶応大学は就職活動にブロックチェーンを活用することで企業が勝手に情報を持ち出せない仕組みを構築する。就活サイト「リクナビ」が内定辞退率を無断で販売した問題から、データの利用に敏感な学生が増加していることを受けた動きだ。

しかし、個人がデータを管理するとなると、課題も多そうだ。そもそもブロックチェーンを使うことで個人データは守られ、内定辞退率を学生の同意を得ないまま販売したという「リクナビ問題」は解決できるのだろうか。

ブロックチェーンハブCSO(チーフ・サイエンス・オフィサー)で、早稲田大学大学院経営管理研究科の斉藤賢爾教授は、リクナビ問題については「ブロックチェーンでは解決できない」と話す。

斎藤教授によると、そもそもブロックチェーンは「情報の真正性に関わる技術」のため、「実際に情報がどうアクセス制御されるかについては、また別の話」と指摘する。今回の慶応大学の取り組みは「学生に関する情報が、学生本人あるいは大学等によって入力されたままのものである、という真正性の確認」という部分に使われるのではないかと予想した。

そのため、企業側が勝手にデータを作成した場合にそのデータが「正しいかどうか」の判断はできるものの、データを持ち出すことへの解決策に繋がるかはまだ不透明のようだ。

さらに、内定辞退率といったデータを勝手に作成されないためには、データを守る必要がある。ブロックチェーンを使うことで、学生や求職者側がデータを「秘匿」できるのだろうか。

斎藤教授はブロックチェーンは情報の真正性に関する技術であり、データを守るために情報を「秘匿」することについてはブロックチェーンは「得意ではない」ことから、次のように話した。

「データが企業により閲覧されるとすると、秘匿したまま確認することに意味はあまり無いように思います。」

ただ、データの「インテグリティ(完全性)を保証する」場合には、「まさにブロックチェーンはそのために存在します。」とし、慶応大学の取り組みについて「企業がアクセスしたデータが正しくその学生に関して真正なデータである、ということの保証はできると思いますし、報道されたシステムはその部分にブロックチェーンをすでに応用しているのだと想像します。」と話した。