仮想通貨(暗号資産)ビットコイン(BTC)が上昇局面となっている中で、人民元安との相関が囁かれている。米CNBCが28日には「トランプ大統領が中国に関する会見を開く」と報道し、対中政策が発表されるとの観測などから、ドルが元に対して上昇。昨年9月並みの安値に接近している。

ビットコインとドル人民元の相関関係について、FXCoinのシニアストラテジストである松田康生氏はコインテレグラフジャパンに対して「順相関と逆相関を繰り返しており、常に相関しているわけではない」と指摘。

ただ、それでも過去に2016年と2019年に順相関が高まった時期があり、その際では人民元安と現在と似た局面となった。この相関が起きる理由として以下のように分析した。

「人民元安が進むと国内にある資産が外貨建てで目減りをするため資産を海外に移すインセンティブが働き、それが更なる人民元安を招く。しかし、海外への資本逃避に厳しい制約があるため、逃避手段のひとつとしてBTCが選好され、両者が相関する訳だ。」

中国本土では仮想通貨取引所の運営が禁止されており、OTC(店頭)取引が行われていることなどからビットコインの動きを図る方法は確立してはいない。ただ、松田氏は「テザーの発行増、そしてBTCの通貨別出来高における人民元建てのステーブルコインQCのシェアで推測することができる」と指摘。クリプトコンペアによれば昨年の6-7月に増加したそのシェアは8月以降鎮静化、12月に増加、そして今年5月に入って増加し始めているという。

松田氏は、今年に関しても人民元安がBTC買いに繋がる可能性が高いと考えている。

「香港版国家安全法成立などこのところ中国の強硬姿勢が目立っているが、その背景としてコロナの影響による国内経済の後退と不満が指摘される。そうした中、比較的当局と近い蓄財層には国外へ資産を移転したいというインセンティブが働きやすい。また同法制定が米国からの経済制裁に繋がれば、更にBTCへの人気が高まりやすいだろう」

一方で今後の人民元の動きに対しては、中国政府が人民元安を仕掛けているとの噂もある中で、マネックス証券のチーフ・FXコンサルタント、吉田恒氏は「米国の大幅な金融緩和に伴う米金利の低下で、金利差の観点から米ドル高・人民元安が進みにくくなっている」ことや「強引な人民元安誘導は、中国からの資本流出を加速させる懸念がある」「米ドル高は米ドル建て債務拡大をもたらす」との理由から米中対立と人民元安を結びつけることには懐疑的な姿勢を示した。