2017年に仮想通貨取引所の運営が禁止されてから中国での仮想通貨取引は下火になったと思われていた。

しかし、ここ最近、米中貿易戦争が激化する中で中国人投資家が逃避先としてビットコインを購入しており、それが5月中旬からのビットコイン高騰につながったのではないかという見方が出始めている

一体、中国人はビットコインをどこで取引しているのか?100倍レバレッジで有名な仮想通貨取引所ビットメックスのアーサー・ヘイズCEOによると、「OTC(店頭)取引は依然活況であり、政治的に許容される方法で買い手と売り手を中国で引き合わせている」という。

先月、都内でコインテレグラフ日本版の取材に応じた中国人トレーダーでビットフィネックス株主のドン・チャオ氏は、「その通りだ」と認めた。

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ヘイズCEOによれば、チャオ氏は「議論の余地はあるが中国最大のOTCトレーダー」。チャオ氏はコインテレグラフ日本版に対して「彼とは2015年からの付き合いなんだよ」と笑った。「彼がちょうどプラットフォームを立ち上げたばかりの時だったが、私は借金をしていたので投資できなかった」と当時を振り返った。

中国政府のOTC市場に対する姿勢についてチャオ氏は、「中国政府が仮想通貨を否定したわけではない」と指摘。次のように続けた。

中国政府は仮想通貨がコントロール不能になることを嫌がっているが、同時にまだ殺したくないと考えている。金融機関が仮想通貨関連のビジネスをすることを禁じているが、我々のような小規模な起業家は仮想通貨ビジネスを続けられる。だから我々にとっては好機なんだ」

チャオ氏は、KYC(顧客確認)とAML(アンチマネーロンダリング)をすればOTC取引は違法ではないと加えた。

チャオ氏が運営するOTCは、Deal GlobalとDMarketと呼ばれている。ウェブサイトはなく、全て相対取引だ。手数料は、取引額の1%未満。多くの顧客は米国人で日本人はほとんどいないという。チャオ氏は「良いビジネスだよ」と述べた。

「機関投資家は少額を買う必要ない。『Buy Big(大きく購入)』する必要があるのさ」

OTC取引は、流動性が高いことなどから機関投資家の間で人気だ。

チャオ氏のOTC取引デスクの取引高は、年初来からは低調だったものの、5月は約1億ドル(約108億円)を記録。4月は取引高が増加し「1週間で1億ドルの取引高があった」。一番人気はビットコインで、取引の90%占める。2番目はイーサリアムで5〜7%だという。

チャオ氏がビットコイン投資を始めたのは2013年。1BTC=300人民元の時だったそうだ。

その時からビットコインがいつか100万ドルと信じていたよ(中略)秘密鍵を所有して適切な方法で保管すれば、誰も奪うことはできないからね」

規模が大きく動きが目立つ金融機関ではなく、チャオ氏のような「小規模な起業家」が中国の仮想通貨市場に対する影響力を保っているようだ。