「自分にとって介護はまだ先の問題だろう」と考える人は少なくない。介護が必要になるのは高齢者というイメージがあるためであろう。しかし自分にとっては先の問題であったとしても、親や兄弟などの身近な人が認知症などになって介護が必要となるかもしれない。

また交通事故や脳卒中などが原因で、若くして介護が必要となるケースもある。家計を支える人が介護状態になると、世帯の収入が低下して家計が危機的な状況となるかもしれない。

このような介護のリスクに備えるために運営されている社会保障制度が「公的介護保険」だ。本記事では、公的な介護保険の保障内容や加入者、保険料の計算方法などをわかりやすく解説する。

社会保険の介護保険

公的介護保険とは、市町村が運営する社会保険制度だ。病気やケガなどで介護が必要な状態となり「要介護状態」または「要支援状態」と認定をうけたときに、訪問介護や訪問入浴などの介護サービスを、1〜3割の自己負担で受けられる。

公的介護保険の目的は、介護が必要な人を社会全体で支えて、家族の介護負担を減らすことだ。高齢者の介護のほとんどは、子どもや家族が担当している。しかし少子高齢化の進展により介護が必要な高齢者の数は増加しており、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」や、認知症の患者が認知症の家族を介護する「認認介護」が生じている。身内の介護と仕事の両立が難しく「介護離職」をするケースも珍しくない。

また夫婦と未婚の子どもで構成される「核家族化」により、高齢な両親とは離れて暮らすことでそもそも介護が難しい場合もある。そこで介護をする家族の負担を軽減し、介護が必要な人を社会全体で支えるために、公的介護保険は運営されている。

公的介護保険の加入者と保険料

公的介護保険の加入者(被保険者)と、支払う保険料について解説する。


公的介護保険の加入者(被保険者)

日本国民は、原則として40歳以上になると公的介護保険に加入して被保険者となり保険料を支払わなければならない。被保険者は、65歳以上の「第1号被保険者」と、40〜64歳の「第2号被保険者」に分かれている。

第1号被保険者は、原因に関係なく介護が必要になり要介護認定を受けると、介護サービスを利用できる。対して第2号被保険者は、以下の16種類の特定疾病が原因で要介護認定を受けなければ、公的介護保険の介護サービスを受けられない。

  1. がん
    ※医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る
  2. 関節リウマチ
  3. 筋萎縮性側索硬化症
  4. 後縦靱帯骨化症
  5. 骨折を伴う骨粗鬆症
  6. 初老期における認知症
  7. パーキンソン病関連疾患:進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
  8. 脊髄小脳変性症
  9. 脊柱管狭窄症
  10. 早老症
  11. 多系統萎縮症
  12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  13. 脳血管疾患
  14. 閉塞性動脈硬化症
  15. 慢性閉塞性肺疾患
  16. 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
    ※出典:厚生労働省

公的介護保険の保険料

公的介護保険の加入者が支払う保険料は、被保険者の種類によって異なる。65歳以上の第1号被保険者は、市区町村が条例で定める基準額に、保険料率をかけて保険料を計算する。保険料率は、本人の年金収入や住民税の課税状況などに応じて決まる。

40〜64歳の第2号被保険者は、会社員のような健康保険に加入している人の場合、健康保険料と合わせて介護保険料を納める。保険料は、平均月収や支給された賞与額(1000円未満を切り捨て)に、所定の保険料率をかけて計算される。協会けんぽの場合、健康保険料に上乗せして支払う介護保険料率は1.8%だ。

なお健康保険料と介護保険料は、労働者と事業主で半分ずつ負担する。よって毎月の給与や賞与から天引きされている健康保険料・介護保険料は、本来の半額だ。また扶養に入っている40歳以上の家族の健康保険料と介護保険料は、負担しなくてよい。

自営業やフリーランスなど国民健康保険に加入している人は、国民健康保険料と介護保険料を合わせて納める。負担する保険料は、個人の所得や世帯の人数などで決まる。

公的介護保険の給付と介護サービス

公的介護保険の介護サービスを利用するためには、市町村に申請をして要介護認定を受けなければならない。要介護認定は、介護が必要な度合いに応じて「要支援1・2」と「要介護1〜5」の7段階にわかれている。介護が必要な度合いは、要支援1がもっとも低く、要介護5がもっとも高い。

要介護認定を受けた場合、所定の介護サービスを原則として1割の自己負担で利用できる。ただし所得が一定以上である65歳以上の人については、自己負担割合が2〜3割となる。

要介護認定を受けた場合、訪問介護・訪問入浴などの在宅サービスや、デイサービスやデイケアなどの施設に通って受けられるサービスを利用できる。また必要に応じて介護老人保健施設や、特別養護老人ホームなどの施設に入居できる。

ほかにも、車椅子・特殊寝台などのレンタル費用や、住宅をバリアフリーにする改修費用も一定額まで負担してもらえる。

要支援認定を受けた場合は、介護の進行を防ぐための介護予防サービスを利用できる。サービス内容は、訪問介護や訪問入浴などの在宅サービスがメインであり、特別養護老人ホームをはじめとした施設を利用するサービスは対象外だ。

また市町村に申請した結果、要介護や要支援に該当しなくても、市町村が実施する「一般介護予防事業」を利用できる場合がある。


公的介護保険を利用した場合の自己負担額

公的介護保険の介護サービスは、以下のとおり介護レベルに応じた利用限度額が設定されており、超過した金額については全額自己負担となる。

  • 要支援1:5032単位
  • 要支援2:10531単位
  • 要介護1:16765単位
  • 要介護2:19705単位
  • 要介護3:27048単位
  • 要介護4:30938単位
  • 要介護5:36217単位

1単位あたりの金額は、地域によって異なる。たとえば1単位=10円の地域に住んでおり、要介護3と認定された場合、ひと月あたりの利用限度額は月額27万480円だ。ひと月に30万円の介護サービスを利用した場合、27万480円の1割である2万7048円と、利用限度額を超過した金額30万円-27万480円=29520円の合計5万6568円を自己負担する。

なお一カ月あたりの世帯の自己負担額が、所定の自己負担上限額を超えた場合「高額介護(予防)サービス費」を申請することで、超過分を払い戻してもらえる。ひと月あたりの自己負担上限額は、以下のとおり世帯の所得に応じて決まる。

出所:厚生労働省

ただし公的介護保険だけでは、自己負担を0円にできない。生命保険文化センターの調査によると、過去3年間に介護経験がある人が平均して負担した介護費用は以下のとおりだ。

  • 初期費用(住宅の改修費用・介護用ベッドの購入費用など):約69万円
  • 月々の費用(公的介護保険の自己負担・おむつ代など):約7万8000円
    ※生命保険文化センター 平成30年度「生命保険に関する全国実態調査」

同調査によると、介護をした期間は平均54.5カ月(約4年半)であったため、合計で約7万8000円×54.5+約69万円≒約500万円もの介護費用を自己負担する計算となる。

介護に備えるためには、計画的に貯蓄をする必要があるだろう。また民間の保険会社が取り扱う介護保険に加入するのも方法の1つだ。民間の介護保険に加入すると、被保険者が所定の介護状態となった場合に、保険金が支払われるため金銭的な負担に備えられる。

要介護認定の方法

公的介護保険の介護サービスを受ける流れは、以下のとおりだ。

  1. 本人または家族が居住する市町村に申請
  2. 調査員が自宅に訪問し、本人や家族から状況をヒアリングし介護が必要か調査
  3. 一次判定:主治医の意見書と訪問調査の内容をもとに、コンピューター処理にて要介護レベルを判定する
  4. 二次判定:保健・医療・福祉の専門家で構成される「介護認定審査会」が、一次判定と主治医の意見書をもとに総合的に介護度を判定する

上記の判定を経て、介護の予防が必要な「要支援1・2」、介護が必要な「要介護1〜5」、介護保険の給付対象とならない「自立(非該当)」のいずれかに分類される。

要支援1は、簡単にいえば介護が必要とはいえないものの、日常生活で他人の支援が必要な状態を指す。一方で、要介護5は、歩行や両足での立位保持、排泄などがほとんどできず、多くの問題行動や全般的な理解の低下が見られる重い介護状態だ。

認定結果は、申請から30日以内に通知されるのが一般的だ。要介護認定を受けたあとは、ケアマネジャーと相談して、本人の希望に沿ったケアプランを作成し、利用する介護サービスを決める。施設への入居を希望する場合は、別途申し込みが必要だ。

要介護認定の有効期限は、原則として12カ月(初回認定は6カ月)である。有効期限が終了する前に、更新の申請をしなければならない。

公的介護保険を理解して、いつかは来る状態に備えよう

公的介護保険は、「要介護状態」または「要支援状態」の認定をうけたときに、介護サービスを1〜3割の自己負担で受けられる制度だ。それでも、前述の調査によると、介護経験がある人は平均で約500万円もの介護費用を自己負担している。早い段階から計画的に貯蓄をし、場合によっては民間の介護保険に加入することなど検討してみよう。

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