仮想通貨ビットコイン(BTC)の価格は2021年2月22日に約615万円をつけた。仮想通貨ETF(上場投資信託)の相次ぐ承認発表やテスラのCEOであるイーロン・マスク氏のビットコイン購入発表などを受け、仮想通貨への関心はますます高まっている。

仮想通貨は投資としてはもちろん、従来のビジネスモデルを大きく変える画期的なテクノロジーとしての側面を持っている。

本記事では、仮想通貨になじみのない人も、その仕組みから投資方法、最新の事例まで全体像を理解できるよう、難解な専門用語を避けてわかりやすく解説する。

仮想通貨とは

仮想通貨(cryptocurrency)は、インターネット上で取引される通貨のことで、暗号資産やデジタル通貨(digital currency)とも呼ばれる。日本円やアメリカドルなど、国が価値を保証する法定通貨は、紙幣や硬貨といった実体があるが、仮想通貨は電子データであるため実体がなく、日本銀行など中央銀行の公的な管理者や発行主体も存在しない。(一部管理主体がある仮想通貨も存在する。)

仮想通貨は、2009年に運用が開始されたビットコインのほか、イーサリアム(ETH)やリップル(XRP)といった派生の仮想通貨「アルトコイン(altcoin)」も数多く存在する。

日本国内では2017年4月1日に施行された「改正資金決済法」において、初めて仮想通貨に関する法律が制定された。これにより仮想通貨は公に認められるとともに、国による規制を受けるようになり、仮想通貨の売買を行う業者は「仮想通貨交換業者」として登録が必要になった。そして、20年5月1日施行の法改正により、仮想通貨の名称は「暗号資産」に改められた。現在は仮想通貨交換業者も正式には「暗号資産交換業者」と呼称されている。

仮想通貨の仕組み

仮想通貨の仕組みを理解するために欠かせない、4つの構成要素を解説する。

ブロックチェーン

ブロックチェーンとは、複数の管理者がデータを分散管理する新しいデータベースだ。「分散型取引台帳」とも呼ばれる。取引情報を格納した「ブロック」が鎖(チェーン)のように連なっていくことから「ブロックチェーン」と呼ばれる。

ブロックチェーンには、管理者不在で誰でも参加できる「パブリック型」と、特定の組織内で管理される「プライベート型」「コンソーシアム型」がある。パブリック型の場合、ネットワーク上に公開されている取引データを、ユーザーが管理・監視しているため、データの改ざんが極めて難しい。

ブロックチェーンはビットコインの開発過程において発明された技術であり、さまざまな仮想通貨に活用されているほか、IoTやフィンテックなど幅広い分野でも応用が期待されている。 

ブロックチェーンのイメージ

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P2Pによる非中央集権型取引

P2P(Peer to Peer:ピアツーピア)とは、端末同士で通信を行うネットワーク方式のことである。中央サーバーを介さず、「ノード」と呼ばれる端末同士が網目のようにネットワークを形成し、その中で取引データが共有・承認される。

中央サーバーを使った中央集権型のネットワークでは、サーバーに障害が起きた時に取引ができなくなったり、ハッキング被害などのリスクが高まる。P2Pにより取引履歴などのデータを分散して各ノードが保有することで、そのリスクを大幅に軽減することができる。

P2Pによる非中央集権型取引
暗号技術

仮想通貨は英語で「Cryptocurrency」と呼ばれるが、Cryptoは暗号、currencyが通貨を意味する。仮想通貨は暗号技術をベースとしており、暗号技術は安全な取引のために欠かせないものである。

ビットコインで使用される暗号技術は「公開鍵暗号方式」と呼ばれるもので、電子署名やインターネット通信の暗号化などで以前より広く使われている。「公開鍵(Public Key)」と「秘密鍵(Private Key)」という2つの鍵がペアで1セットになっており、秘密鍵から作られる公開鍵によって、ビットコインの送金先を示す「ビットコインアドレス」が作成される。ビットコインの送金情報は秘密鍵によって暗号化され、ビットコインを受け取る人は公開鍵で暗号を解読する仕組みになっている。    

マイニング

マイニングとは、仮想通貨の取引データをブロックチェーンに追記する作業のことで、報酬として仮想通貨を受け取ることができる。仮想通貨には国や銀行のような管理機関がないため、マイニングをする「マイナー」が、仮想通貨の取引が正しく行われたかの検証をする。

マイニングは膨大な計算を処理するために大量の電力を必要とする場合があり、多額の電気料金がかかる。ビットコインが広がり始めた頃には、個人が自分のPCでマイニングを行うケースも見られたが、現在では電気料金の安い国などで組織的にマイニングが行われ、一部のマイニング業者による寡占状態となっている。
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仮想通貨の用途

投資のイメージが強い仮想通貨だが、その用途は投資だけにとどまらない。仮想通貨の5つの代表的な用途を解説する。

投資

仮想通貨は投資の対象となり、価格が安い時に購入し、価格が高い時に換金することで利益を得ることができる。レバレッジをかけて手持ち資金以上のお金を投資できる「FX取引」も可能であり、仮想通貨価格の下落局面においても売り(ショート)から入ることで、利益を狙うことができる。

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送金・決済

仮想通貨は送金や決済手段としても利用できる。例えばビットコインの場合、相手のビットコインアドレスを指定するだけで、金融機関を通さず個人間(P2P)で送金することができる。また仮想通貨決済に対応している実店舗やオンラインショップで、仮想通貨を使用して買い物ができる。最近では、ガス代や電気代などの公共料金を、ビットコインで支払いができるサービスも登場している。

寄付

仮想通貨は寄付手段としても活用される。法定通貨による寄付よりも手数料が安く、ブロックチェーンの性質上「誰から誰に寄付したか」が分かりやすく透明性が高いというメリットがある。すでに赤十字社などで、仮想通貨による寄付受付の事例がある。

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資金調達

仮想通貨は企業による資金調達手段としても利用される。資金調達したい企業が独自の仮想通貨を発行し、投資家が購入する資金調達方法は「ICO(Inicial Coin Offering)」と呼ばれる。また、株式や社債をブロックチェーン上でトークンとして発行し資金調達をする「STO(Security Token Offering)」もある。企業側は株式の新規上場(IPO)よりも迅速に資金調達が可能になる。

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開発プラットフォーム

仮想通貨の技術を応用してゲームなどのアプリや、金融システムなどの開発が行われることもある。主に仮想通貨イーサリアム(ETH)のスマートコントラクトという機能を使い、さまざまな開発が行われている。


仮想通貨の種類一覧 

仮想通貨の種類は、実に数千種類以上にものぼるとされている。ここでは、2021年2月時点で時価総額ランキングの上位を占める、代表的な仮想通貨を紹介しよう。

まず下記の5つは、国内取引所で取扱いがある、代表的な仮想通貨である。

ビットコイン(BTC)

2008年にサトシ・ナカモト氏が考案した、世界初の仮想通貨。発行枚数が2100万枚に決まっており、デジタルゴールドとも呼ばれる。

イーサリアム(ETH)

2013年に、当時19歳だったカナダ人のヴィタリック・ブテリン氏が考案。分散型アプリケーション(DApps)やスマートコントラクトを構築するプラットフォーム。

リップル (XRP)

リップル社が管理主体となっている中央集権型の仮想通貨。高速処理と低コスト化を実現し、国際送金のブリッジ通貨として期待される。世界数十カ国の銀行や決済業者と提携しており、日本国内でも、三菱UFJ銀行などのメガバンクが実証実験を行ったことがある。

ライトコイン(LTC)

ビットコインの課題を解決するために2011年に公開され、より速い送金スピードや高い公平性を実現。投資家の間ではビットコインが「金」、ライトコインが「銀」と呼ばれることも。

ステラ(XLM)

マウントゴックス社やリップル社を創業したジェド・マケーレブ氏を中心として開発され、非営利団体ステラ開発財団が運営する仮想通貨。個人向けの決済や送金システムの効率化を目指している。ステラネットワーク上で米ドルや日本円などの法定通貨にペッグされたステーブルコインの発行も可能。

日本国内で購入可能な仮想通貨一覧

続いて下記は、国内取引所では取扱いがないものの、時価総額の高い仮想通貨である。

テザー(USDT)

2015年からテザー社が発行している、米ドルにペッグした仮想通貨。1USDT≒1米ドル。

カルダノ(ADA)

DAppsを開発するためのプラットフォーム。イーサリアムなどの仮想通貨開発に携わった数学者チャールズ・ホスキンソン氏らが2017年にプロジェクトを開始。

ポルカドット(DOT)

2017年にWeb3財団が開始。異なるブロックチェーン間でデータ共有が可能。

バイナンスコイン(BNB)

海外の大手仮想通貨取引所バイナンスが発行する取引所トークン。四半期ごとに、バイナンスが得た利益の20%分のBNBが買い戻され破棄される。BNBの発行量を減らすことによって、価値を上昇させている。

チェーンリンク(LINK)

外部システムのデータとブロックチェーンネットワークのデータをつなぐミドルウェアの機能を持ったプラットフォーム。アメリカのスマートコントラクト社によって開発され、17年にメインネットをローンチした。

ドージコイン(DOGE)

インターネットで話題となった柴犬をモチーフにした仮想通貨。ビットコインのパロディ通貨として2013年に誕生した。テスラのイーロン・マスク氏はツイッターで度々ドージコインに言及している。

その他、時価総額の高い仮想通貨一覧
 

仮想通貨の課題・リスク

仮想通貨にはどのような課題やリスクがあるのか解説する。

ボラティリティが大きい

仮想通貨はボラティリティ(価格の変動)が大きく、乱高下することも少なくない。株式投資の場合、日本の株式市場では平日の限られた時間のみ取引され、1日で変動する価格の幅も制限されている。一方で仮想通貨の価格は休みなく動き続け、変動する価格の幅も制限されていない。

さらに仮想通貨の価格は、政情や規制の変更など複合的な要因に影響を受け、その値動きを予測することは極めて困難である。仮想通貨には国境がない分、世界各地で発生するさまざまな出来事が価格に影響する可能性がある。価格の上昇幅が大きければ大きな利益を得られる一方で、急激な価格の下落により大きな損失を受けることも。投資する際には価格変動が大きいことを念頭に入れたうえで、慎重な取引を行う必要があるだろう。

ハッキング

悪意を持ったハッカーからのサイバー攻撃により、仮想通貨が盗まれるリスクがある。多くの仮想通貨はその仕組み上ハッキングはほぼ不可能であり、ハッキングは仮想通貨自体ではなく取引所の脆弱性をついて、取引所に保管していた仮想通貨が盗まれるケースが多い。仮想通貨の管理には細心の注意が必要となる。

法整備

仮想通貨は日本国内では2017年に改正資金決済法で法律が制定されたばかりであり、比較的新しい分野といえる。今後も法令や税制の変更が行われる可能性があり、法整備の動向が仮想通貨の価格変動や開発に影響を与えることが考えられる。

秘密鍵の紛失

P2Pで仮想通貨を取引する場合、送金時に必要な秘密鍵は所有者本人にしかわからない。通常の金融機関のように管理者がいないため、紛失しても再発行はできない。紛失して仮想通貨がウォレットから取り出せなくなるトラブルを避けるためにも、秘密鍵は個人で厳重に管理する必要がある。

仮想通貨の始め方

仮想通貨の概要を理解し、いざ仮想通貨を始めてみたいと思ったら、何をすればよいのか。ここでは仮想通貨の購入方法から投資方法、投資に便利なツールまで、仮想通貨の始め方を解説する。

販売所と取引所

まず仮想通貨を始めるには、仮想通貨の販売所または取引所を利用して、日本円などの法定通貨と交換して仮想通貨を購入するのが一般的だ。

販売所では、仮想通貨交換業者から仮想通貨を購入するのに対し、取引所ではすでに仮想通貨を所有しているユーザー同士で売買する。販売所はあらかじめ価格が決まっており、すぐに購入できる。取引所ではいくらで購入したいか注文を入れ、需給がマッチするまで待つ必要があるが、販売所よりも仮想通貨の価格が安く手に入れることも可能だ。

販売所と取引所の両方の機能を持ちあわせている仮想通貨交換業者も多い。また販売所や取引所により、現物取引と仮想通貨FXの両方対応している場合と、どちらかのみ対応している場合がある。自分のニーズに合わせて、最適な販売所や取引所を選ぶのが良いだろう。

ウォレット

仮想通貨の取引を行う場合、仮想通貨を管理するには2通りの方法がある。取引所が管理しているデジタルな財布「ウォレット」に購入した仮想通貨を保管しておく方法と、自分自身が管理するウォレットに保管しておく方法だ。どのような頻度で仮想通貨を取引するのか、自分の責任で仮想通貨を管理したいのか、取引所のサポートを受けたいのかなど、目的に応じて選択する必要がある。

ウォレットはアナログな財布と違い、銀行口座のように送金や受け取りに利用できる。仮想通貨を安全に保管・管理するためには、ウォレットについて理解しておくことが欠かせない。

ウォレットには、主にインターネット常時接続されている「ホットウォレット」と、インターネットと接続されない「コールドウォレット」の2種類がある。

ホットウォレットはハッキングリスクが高い一方で仮想通貨の出し入れがしやすい。スマホアプリ型のウォレットやパソコンで保管するデスクトップウォレットなどがある。

一方でコールドウォレットはハッキングされにくく、専用端末で保管する「ハードウェアウォレット」と、紙で保管する「ペーパーウォレット」がある。

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仮想通貨取引所一覧

仮想通貨の取引所には「国内取引所」と「海外取引所」がある。国内取引所は日本語や日本円に対応しており、金融庁が定めるセキュリティ基準を遵守している。初心者は、まずは国内取引所を利用するのが安心だろう。一方で海外取引所は、銘柄数の豊富さや、安価な手数料、FX取引におけるハイレバレッジなどの特徴があり、中~上級者向きといえる。ここでは、国内と海外それぞれの代表的な仮想通貨取引所を紹介する。


国内仮想通貨取引所

コインチェック

コインチェックは、国内最多15種類の仮想通貨を取り扱う国内最大級の取引所。2018年に不正流出事件が発生したが、東証一部上場のマネックスグループの傘下となり、2段階認証やコールドウォレット管理などセキュリティを強化している。

GMOコイン

GMOコインは、12種類の仮想通貨を扱っている。運営するGMOコイン株式会社は、GMOクリック証券を傘下に持つ、東証一部上場のGMOインターネットのグループ会社で、金融サービスに強みを持つ。

ビットフライヤー

ビットフライヤーは、取引量が国内最大級で、12種類の仮想通貨を100円から購入できる。シンプルな画面設計で、未経験の初心者でも始めやすい。

DMM Bitcoin

DMM Bitcoinは、DMM.comのグループ会社で、売買コストの安さに定評がある。15種類の仮想通貨(暗号資産)を取り扱っており、レバレッジ取引の銘柄種類は23種類と国内最多。

SBI VCトレード

SBI VCトレードは、SBI証券や住信SBIネット銀行などを傘下に持つSBIグループのノウハウにより高い信頼性を誇る。取扱基準が厳格なことで知られ、ビットコイン、リップル、イーサリアムの3種類のみ。レバレッジ取引には対応していない。

海外仮想通貨取引所

Binance(バイナンス)

バイナンスは、世界最大級の取引量を誇る仮想通貨取引所。豊富な取扱い銘柄数と、安価な手数料で世界最大級のユーザーを抱える。

Coinbase(コインベース)

コインベースは、米サンフランシスコに拠点を置く世界最大級の仮想通貨取引所。仮想通貨業界で初のユニコーン企業となり、米で株式上場を計画している。

bybit(バイビット)

バイビットは、2018年に誕生した新しい仮想通貨取引所で、デリバティブ取引に特化している。取り扱う仮想通貨の数は少ないものの、最大100倍というハイレバレッジが特徴的である。

FTX(エフティーエックス)

FTXは、2019年に開設された仮想通貨のデリバティブ取引所。「レバレッジトークン」という特殊なERC-20トークンを扱っている。仮想通貨それぞれにレバレッジ3倍ロングの「BULL」や10倍の「MOON」といったトークンが用意されており、これを現物市場で売買することでロスカットの心配なく証拠金取引が可能となっている。

仮想通貨投資に便利なツール・サイト

仮想通貨投資を行う際に便利な、ツールやサイトを紹介する。

コインマーケットキャップ(CoinMarketCap)

コインマーケットキャップは、世界中で発行されている仮想通貨や時価総額ランキング、取引価格、取引量、過去の価格推移などが一覧できるサイト。仮想通貨全体の市場動向の把握や通貨を選定するのに役立ち、スマートフォン用アプリも利用できる。

Trading View(トレーディングビュー)

トレーディングビューは、仮想通貨トレーダー御用達の多機能チャートツール。Webブラウザ上で見ることができ、PCだけでなく、タブレットやスマートフォンでも全ての機能を使用することができる。チャットルームなどのコミュニティ機能もあり、他のトレーダーとの交流も楽しめる。

コインゲッコー(Coingecko)

コインゲッコーは、仮想通貨の価格、取引高、時価総額、コミュニティの成長率、オンチェーンのメトリクスの追跡など、市場に関するファンダメンタル分析を提供しているサイト。約6400種類の仮想通貨の状況を把握可能。

コインテレグラフ (Cointelegraph)

コインテレグラフは、仮想通貨市場やブロックチェーン技術に関する最新情報、解説記事を配信しているウェブメディア。仮想通貨の愛好家の意見や専門家の分析情報は投資家にも重宝されている。


仮想通貨・ビットコイン取引所のおすすめは?プロがランキング形式で徹底比較!【2021年最新版】

仮想通貨の税金

仮想通貨の取引で、年間20万円以上の利益が出た場合、確定申告が必要になる。株式投資やFXと異なり、証券会社が確定申告を行ってくれる特定口座がないため、自身で確定申告を行う必要がある。

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仮想通貨の価格変遷と価格に影響を与えた事件

2009年の誕生以降、代表的な仮想通貨であるビットコインの価格は大きく変動している。ビットコインの価格変遷と、価格に影響を与えた事件を時系列で紹介する。

ビットコインのチャート

前述のサイト「コインマーケットキャップ 」では、期間を指定してビットコインのチャートを一覧できる。2021年2月現在までの全期間のチャートは以下のようになっており、2021年に入り急上昇していることが一目瞭然である。
ビットコインのチャート

ビットコインの価格に影響を与えた事件

ビットコインの価格がどのように変遷してきたのか、時系列で見ていこう。

・2009年:ビットコイン誕生(1BTC=約0.07円)

ビットコインが誕生。ビットコイン交換サイトNew Liberty Standardはマイニングの電気代を元に1ドル=1309.03BTCと設定した。

・2010年:ビットコインとピザを交換(1BTC=約7円)

初めて実店舗でビットコインが使用され、ピザ2枚が1万BTCで交換された。

・2011年:アメリカのニュース雑誌「TIME」で特集される(1BTC=約1500円)

TIME誌でのビットコイン特集をきっかけに認知度が一気に高まり、価格が急騰した。

・2013年:キプロス危機(1BTC=約7600円)

ギリシャ財政危機がキプロスに伝播。EUからの財政支援の条件の一部に国民の預金への課税も含まれていたため、預金者は資産を引き出すために銀行に殺到、銀行が閉鎖される騒ぎに。最終的には銀行課税は免れたものの、政府や銀行に対する国民の不信感は高まり、資産退避手段としてビットコインが買われた。

・2013年:NHKでも特集される(1BTC=約12万円)

世界中から注目を集めて価格の急上昇が続き、NHKでも特集されるなど日本での認知度も高まり価格が急騰した。

・2014年:マウントゴックス事件(1BTC=約2万円)

当時世界最大級のビットコイン取引量を占めていたMt.GOX(マウントゴックス)社でサーバーがハッキングされ、約470億円にも相当するビットコインが盗まれた。マウントゴックス社は経営破綻し、ビットコインへの不安の高まりから価格が下落した。

・2016年:改正資金決済法成立(1BTC=約5万円)

仮想通貨の法律「改正資金決済法」が成立、翌年施行。日本でもビットコインの動きが活発になり、価格は緩やかに回復。

・2017年:ビットコインの先物取引開始(1BTC=約200万円)

アメリカの先物取引所「CME(シカゴ・マーカンタイル・エクスチェンジ)」がビットコインの先物取引を開始。投資家が増加し、価格は一時200万円を突破した。

・2020年:新型コロナウイルス感染拡大(1BTC=約50万円)

新型コロナウイルスの感染が拡大し、株価と共にビットコインの価格も一時急落した。

・2021年:急騰(1BTC=約615万円)

2021年に入りビットコイン価格は急騰し、2月に一時5万8000ドルを突破した。

仮想通貨のビジネス事例

仮想通貨・ブロックチェーンは従来のビジネスモデルを大きく変える可能性を持つ画期的なテクノロジーであり、さまざまな分野で応用されている。国内外のビジネス事例を分野別に紹介しよう。

金融分野

仮想通貨は、コスト削減や手続きの迅速化などにより、金融業界に大きな革命をもたらしている。

分散型金融「Defi」

「Defi(Decentralized Finance)」とは、ブロックチェーン上に構築される金融エコシステムのことで「分散型金融」と呼ばれる。スマートコントラクトによって銀行の貸付機能や取引所の仲介機能を自動化可能で、金融のあり方を刷新するとして注目されている。

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ウクライナ政府がステラ(XLM)を採用

2020年12月、東欧ウクライナのデジタルトランスフォーメーション省が、仮想通貨ステラを発行するステラ開発財団との覚書に署名した。中央銀行デジタル通貨(CDBC)の開発や、仮想通貨エコシステムの構築を目指している。
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IoT分野

「モノのインターネット」と呼ばれる「IoT(Internet of Things)」は、モノにインターネットが接続されることで、データの管理や分析などによる高品質なサービスの実現を目指すものである。同時に多くの人が使用するIoTには分散処理が適しており、ブロックチェーン技術の活用が期待されている。

自動車業界のブロックチェーンコンソーシアムMOBI

MOBI(Mobility Open Blockchain Initiative)は、BMWやホンダ等の自動車メーカー、ボッシュ等の自動車部品メーカーなど自動車業界を中心とした90社以上が参加するコンソーシアム。収集した自動車関連のデータをブロックチェーンで管理・共有することでモビリティサービスをより安く効率的にすることを目指している。車両に固有のIDを付与し製造過程の管理や所有者の保証に活用したり、利用状況を元にした自動車保険や渋滞管理システムの創出を計画している。

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ゲーム分野

仮想通貨はゲームの世界にも普及しており、ブロックチェーン技術を活用したブロックチェンゲームが多数登場している。ブロックチェーンゲームでは、育てたキャラクターやゲーム内アイテムをNFT(ノンファンジブルトークン、非代替トークン)として表現しブロックチェーンに載せられるため、コピー不可能な固有の資産としてNFTマーケットプレイスで売買できる。将来的には、稼ぐためにプレイし、ゲーム内で築いた資産を販売や転売することで生計を立てるプレイヤーが出てくる可能性がある。

Decentraland (ディセントラランド) 

イーサリアムのブロックチェーンを使ったゲーム「ディセントラランド」は、ランド(LAND)と呼ばれるVR世界の不動産や土地を売買したり、VR内のミニゲームで遊んだりできる。自分のランド内で魅力的な施設を作れば収益化することも可能だ。ゲーム内通貨はERC-20トークンのMANAが使われている。

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仮想通貨の今後

仮想通貨は今後どうなっていくのか、その展望を考察してみよう。

ビットコインの価格

2021年2月現在、一時5万ドル(約530万円)に達したビットコイン。これからビットコイン相場に参入する投資家にとっては、ここからの価格上昇余地が気になるところだ。

著名投資家やアナリストなどからは、10万ドル(約1050万円)超えのビットコイン価格予想が相次いでいるほか、20万~30万ドル(約2100万円~3150万円)を予想する声も出てくるなど強気の予想が目立っている。

今後も大きな価格変動が想定され、注意深くその動向を追っていく必要があるだろう。


仮想通貨の市場規模

仮想通貨の市場規模は「発行済み仮想通貨の価値の合計」に相当し、時価総額は「1枚当たり価格」×「発行済み枚数」で計算できる。市場規模の推移は、コインマーケットキャップ で確認できる。2021年2月現在のチャートは下記の通りで、仮想通貨市場全体の規模は1兆5000億ドル(約158兆円)近くにものぼっている。
仮想通貨の市場規模

市場規模は仮想通貨1枚あたりの価格が上昇するか、発行枚数が増加することで増えていく。直近における価格の上昇や、次々と新しい仮想通貨が誕生していることを踏まえると、今後もさらに市場規模が拡大していくことが想定される。

仮想通貨の展望

ビットコイン価格の強気予想が目立つように、仮想通貨の価格は今後も上昇する可能性があり、多くの投資家を呼び込み市場が盛り上がっていくことが期待される。さらにブロックチェーンなど仮想通貨を支える新たなテクノロジーは、金融分野のみならず製造業や流通、不動産など多種多様な業界や業種で応用が期待されている。仮想通貨やブロックチェーンを活用した新たなビジネスモデルが、今後も続々と誕生していくだろう。

仮想通貨を単なる投機対象として見るだけではなく、新たなテクノロジーとしての可能性にも着目し、アンテナを高く張っておくことで、いち早くその動向にキャッチアップしたい。仮想通貨をより身近なものとするために、まずは仮想通貨の売買にチャレンジしてみるのも良いだろう。仮想通貨は、難解な技術用語を理解するIT系パーソンのためだけのものではない。誰に対しても開かれているものであり、積極的にその世界に参加してみてはどうだろうか。

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