「アメリカはどんどん進んで行き、日本はどんどん遅れていっている」ーー

マネックスグループの松本大CEOは金融庁と日経新聞が共催するFINSUMに登壇し、日本と米国のSTOの現状について、現状の枠組みに疑問を投げかけた。

マネックスグループは米国で仮想通貨(暗号資産)取引サービスを展開するトレードステーションを傘下に持っている。米国の事情に詳しい松本氏によると、米国ではテクノロジーの進歩に合わせてレギュレーションが変わっていっていることで、イノベーションが促進されているという。

松本氏は米国では「社会の枠組み」がイノベーションを利用しようとする方向に進んでいると評価する。米国でも当初は、有価証券に当たるものかどうかを判別するための制度的な議論があったが、最近はあまり聞かなくなっているという。その代わりにどういう開示をしたら、価値を流通できるのかといったイノベーションを促進する「力学」が動いていると話す。

米国では、社会とテクノロジーが進歩しているために、古い枠組みでは対応できないことが明らかになっていることから、状況を受け止めながら、議論が進められているとの状況を解説した。

金商法で定義されて「元に戻ってしまった」

一方で、松本氏によると日本は「元に戻ってしまった」という。

日本では5月の金商法改正を受けて、STOが金商法の枠組みのもとで規制されるようになった。本来ならば、国内最大の自主規制機関である日本証券業協会が規制に対して取り組むものとみられたが、日本証券業協会は仮想通貨関連の店頭デリバティブ取引又は、電子記録移転権利に関わる業務のみを行うものを会員から除くとし、さらに仮想通貨関連のデリバティブ取引とセキュリティトークンについては同協会の自主規制対象から外してしまった。

これを松本氏は「証券業協会はSTOはやらないと逃げてしまった」と批判したが、金商法で規制されるならば、「証券業協会がやった方がよかった」と指摘した。

本来、STOは金商法では把握しきれないものが流通する可能性があったが、金商法という法律で定義されてしまったために「元に戻ってしまった」という。金商法は改正はしたものの、金商法下の範囲のものに制限されてしまった。

こうした状況に対して、松本氏は最初から規制ありきで進めるべきではなく「セーフハーバーを作るべき」と提案。以下のように話した。

「例えば、10万円までのものは何をやっても構わない、と。セキュリティなのかそうでないのか。開示があるかないか関係なく10万円までのものであれば、対象物も峻別しないセーフハーバーを作る。そして大きく伸びてくるものが出てきたら初めて、それにあった規制を考えるというのが、イノベーションを進めるにはいい」

SBIホールディングス執行役員でブロックチェーン推進室長の藤本守氏も「2017年の資金決済法では投資家保護と悪い人を排除するというだけで、もっと自由だった」とし、最低ラインだけを決めて、市場参加者の自主性に任せられていたと指摘。現在は引き締めが強くなりすぎてしまっているという。ただ、今後はまだ改善の希望はあると考えていると話した。