苦境に立たされているヘッドフォンメーカーのモンスター・プロダクツ社が、米規制当局に3億ドルの巨額なイニシャル・コイン・オファリング(ICO)を申請した。米証券取引委員会(SEC)への5月25日署名の届け出で確認された。

 1978年に創業したモンスターは、5億枚のモンスター・マネー・ネットワーク(MMNY)トークンの発行を計画しており、そのうち6割をICOで販売する予定だ。SECへの届け出によりMMNYトークンは米国法における証券として登録されることになる。モンスターは、近年、ビーツ・ヘッドフォンに関する権利を譲渡したことで評判が悪くなっていた。

 モンスターは、イーサリアム・ブロックチェーン技術を基盤とした新たな電子商取引サイト「モンスター・マネー・ネットワーク」の構築を計画。このサイトでは投資家がMMNYを使ってモンスター社の製品やサービスを購入することができるになる。今回のICOで調達した資金をサイト構築に使われる。

 モンスターはモンスター・マネー・ネットワークの構築を3段階で達成する予定だ。

  • ステージI:モンスター・マネー・ウォレットやMMNYトークンによる基本的な取引が可能なモンスター・マネー・ネットワークを設立させる。
  • ステージII:プライベートなオフチェーン・プラットフォームに移行することで、マイニングで生じるトランザクションの処理コストを抑え、小規模な取引を行えるようにする。
  • ステージIII:モンスター独自のブロックチェーンを完成させて、同社のマーケティング、会計監査、給与計算、在庫管理、出荷管理といった経営システムと統合する

 これによりモンスターはICOで資金調達をする大手企業の仲間入りすることになるが、一筋縄にいかないかもしれない。わずか1ヶ月前には暗号化メッセンジャーアプリのテレグラムがICOを中止したばかりだ。

 米国はカナダと協力してICOの取り締まりを強化するなど規制当局の姿勢は依然厳しく、モンスターがSECに提出した書類に2年以上の発行遅延に関する但し書きを記載したことからもその一端を見ることができる。

   (i)2020年6月30日時点でトークンが公的に取引できるようにならなかった場合、あるいは(ⅱ)2020年6月30日時点で政府による何らかの規制でトークンの取引が中止した場合、トークン保有者は自身のトークンの全てまたは一部を、4トークン当たり1株の比率で同社の普通株と交換してもよい

 一方、今週にはテゾスがベータネットとその後のメインネットの立ち上げを発表したことで、サービス開始に至らないICO市場に対する光明が見えてきた面もある。テゾスの投資家は、17年7月に2億3200万ドルのICOに資金を出して以来メインネットの立ち上げを1年近く待ち続けており、トークン配布の失敗に関する消費者訴訟をいくつか起こしている。