仮想通貨トロン(TRX)を展開するトロン財団は1月17日、ゼロ知識証明ベースの暗号化方式「zk-SNARKs(スナーク)」をトロン・メインネットに適用予定と発表した。またzk-SNARKs環境構築に向けた取り組みで、「ギネス世界記録を樹立」すると主張している。

プレスリリースによると、プライバシー保護技術に取り組むTRONZチームが手がけた匿名化技術は、「世界で最も効率的で、コンピューターへの負荷が最も低いプライバシー保護プロトコル」という(ただし、技術的な詳細には触れていない)。

TRONZチームは「ブロックチェーン技術の進歩」を念頭に結成しており、「TRXネットワークにおけるプライバシー保護技術の開発・公開テストをテストネット上で実施した」という。間もなくメインネット上でも開始するそうだ。

TRONZチームの最終目標のひとつは、プライバシー保護技術をTRX用スマートコントラクトに導入することで、開発者がプライバシー情報を扱えるようにすることと述べている。

またTRONZチームは、zk-SNARKs導入には「信頼されたセットアップ(trusted setup)」が必要となるため、安全性・信頼性の担保に向けMPC(マルチパーティコンピューティング)を用いるそうだ。MPCは、多くのコンピューター(あるいは人間)で秘密情報を秘密分散(細分化・分散化)した上で、秘密分散したまま計算処理を行い、結果を得るというもの。

このMPCを用いた信頼されたセットアップでは、推定200名以上が参加する予定(2020年1月12時点の参加予定者は8名)。すでにzk-SNARKs導入済みの匿名通貨ジーキャッシュ(Zcash。ZEC)でも、「Sapling(サップリング)」アップデートにおいて2018年8月に同様の作業が実施され、97名が参加したそうだ。

トロン財団は、ZECを超える人類史上最大の参加者数とうたっており、「ギネス世界記録を樹立」すると主張している。

オープンソースライセンス適用のソースコード

TRXのGithubページを見ると、さまざまなリポジトリ(データ保管場所)がZECのソースコードから直接「フォーク(分岐)」されていることが分かる。tron-zksnarkzksnark-java-sdkなどプライバシー関連リポジトリの大部分は、ここ数ヵ月間更新されていない。zk-SNARKsの実装も、ZECからフォークさせたようだ。

トロンのlibrustzcashリポジトリも同様で、ソースコード変更部分の適用に関するZECからの依頼(最新ブランチのマージに関するプルリクエスト)を保存している。

MPCリポジトリもZECからのフォークとなっている。TRXチームによる変更の大部分はreadmeファイルに関するもので、2018年にZECが手がけた作業を除き、構造的な変化などはない。

TRXチームは、ZECによるプライバシー保護技術を統合するため、もともと同チームが管理していたリポジトリのみ作業を行った可能性はある。

なお、ZECからフォークされたソースコードは、オープンソースライセンスに該当する「Apache License, Version 2.0(アパッチ・ライセンス 2.0)」、「The MIT License」のダブルライセンスを採用している。どちらも複製・改変・再配布などを制限なく認めているライセンスだ。


翻訳・編集 コインテレグラフ日本版