仮想通貨推進団体コインセンターは、トルネードキャッシュ開発者2人に対する起訴について、提示された事実が送金関連の違反を明確に示していないと批判した。トルネードキャッシュ共同創設者のローマン・ストーム氏とローメン・セメノフ氏は、8月23日に米外国資産管理局(OFAC)から、無許可の資金送金業を行った罪などで起訴された

コインセンターのリサーチディレクターであるピーター・ヴァン・ファルケンバーグ氏は意見記事で、起訴状の主張は、米金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)のガイダンスと矛盾していると指摘した。「トルネードキャッシュは資金を送金するソフトウェアを提供しているだけで、自ら資金を送金しているわけではない」とファルケンバーグ氏は指摘する。

ファルケンバーグ氏は「起訴状が実際に、被告が関連法に基づく資金送金の活動に従事していたという事実を示しているか?」と問いかける。

ファルケンバーグ氏は、米国の銀行秘密法に基づく「資金送金サービス」の定義に基づいて、「匿名化ソフトウェア提供者は資金送金業者ではない」と述べている。また、ソフトウェアを使用する人々だけが資金送金業者とみなされるという部分を引用し、「ソフトウェアを使用して自身の取引を匿名化する人は、各取引の目的により、ユーザーまたは資金送金業者となる」と述べている。

ファルケンバーグ氏は、トルネードキャッシュが個々のユーザーがプロトコルのスマートコントラクトを使って資金を送金するのを容易にしたと認めつつ、開発者が送金業者だったわけではないと主張した。「ただし、それは彼らが自分たちのお金を送金するために他の人が使用したツールを提供したからといって、彼らが送金業者になったわけではない」と彼は説明する。

起訴状がストーム氏とセメノフ氏がプロトコルのスマートコントラクトを完全にコントロールしていたと主張していることに対しても、ファルケンバーグ氏は批判した。「イーサリアムのスマートコントラクトは変動するもので、人々はそれを操作することができない。これが送金を行っているかどうかを判断するための重要な事実になる」と彼は主張する。

コインセンターは昨年10月、トルネードキャッシュへの制裁が適法ではないとして、米財務省を相手取って訴訟も起こしている

OFACの起訴状によれば、ストーム氏とセメノフ氏が資金を移転する事業に従事していたが、彼らはFinCENに登録するべきだったと主張している。

セメノフ氏は8月23日にOFACの特別指定国民(SDN)の制裁対象リストに追加され、ストーム氏は同日、ワシントン州で連邦捜査局に逮捕された。トルネードキャッシュの創設者の一人であるアレクセイ・ペルツェフ氏は、2022年8月にオランダ当局に拘束され、4月末に釈放されている。

ファルケンバーグ氏は、トルネードキャッシュ事件の結果が、今後の米国市民のソフトウェア開発とその公開に対する法的権利に深い影響を与えると考えている。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン