本日、米大手投資会社フィデリティ(Fidelity)が機関投資家向けに仮想通貨取引サービスを開始すると報じられたが、仮想通貨相場の反応は限定的だった。コインテレグラフ日本版がアナリストに取材したところ、フィデリティのニュースは長期的な材料という見方が相次いだ。

仮想通貨の値動きチャート、コイン360

フィデリティのカストディサービス

フィデリティは15日、仮想通貨関連サービスに特化した別会社「Fidelity Digital Asset Services」の設立を発表。ヘッジファンドや基金などを対象に、仮想通貨の保管(カストディ)や複数取引所における取引をサポートする。仮想通貨業界ではコインベースやジェミニなどがカストディサービスを手がけている他、5月には野村ホールディングスは仮想通貨のカストディサービス提供に向け、研究を開始すると発表した。ただ、ウォール街の”現役”でフィデリティ級の規模を持つ大手金融機関の参入は、欠けていたパズルのピースの一つだった。

カストディ・サービスとは、投資家のために証券を保護するほか、元利金・配当金の代理受領、運用資産の受渡し決済、運用成績の管理などを提供するサービス。フィデリティは7兆2000億ドルの顧客資産を預かる巨大投資会社だ。

アナリストの見方

今回のフィデリティのニュースについてマネックス仮想通貨研究所の所長である大槻奈那(おおつきなな)氏は、「機関投資家にとって、クリプト資産が、疑心暗鬼ながら興味関心の対象になっているのは間違いない」と指摘。フィデリティが信頼度の高いカストディサービスを提供しようと試みるのは「極めて自然な流れ」に見えるとし、次のように述べた。

今日の仮想通貨相場は、まだ報道内容の実現性への懸念や、最近の規制強化などのネガティブなニュースから、さほど大きな上昇にはなっていないが、このアイディアが実現し、機関投資家の呼び水となるなら、クリプト市場にとって久々に大きなポジティブ材料である。

また、取引高ベースでトップ50位以内の某仮想通貨取引所の幹部は、「(フィデリティのような)投資信託が参入し市場が成熟していくことを示しており、(ビットコインにとって)長期目線の好材料」としつつも、「短期的に相場に強い反発をもたらすわけではないと見ている」と解説した。

さらに仮想通貨投資会社ギャラクシー・デジタルCEOのマイク・ノボグラッツ氏は16日、機関投資家に安心感を与えるカストディサービスが整ってきていると指摘。来年の第1四半期後半から第2四半期にかけて機関投資家から資金の流入が加速し、その時ビットコイン(BTC)価格は新たな高値をつけるだろうと予測した。