クレジットカードにはさまざまな付帯サービスが付いている場合がある。
特に年会費が有償となるようなカードで充実しているのが海外旅行保険特約だ。
今回は、海外旅行保険が付与されたクレジットカードについて、どのような補償が受けられるか、また一般的な保険と比べて有用性に違いがないかなどを解説する。
クレジットカードの付帯サービスで海外旅行保険が手に入る
海外旅行保険特約付きのクレジットカードは、読んで字のごとく、「海外旅行に際して心身・物品に損害を負った場合、金銭的な補償を受けられる保険が付いたクレジットカード」である。
保険適用となる範囲や内容、補償金額などの条件はカードによってまちまちであるため、現在受けられる補償内容については、それぞれの所有しているカードを確認するしかない。
一般に、クレジットカード契約時には「約款」「会員規約」などの書面合意を行う必要がある。
海外旅行保険特約についても、その際に一度は目を通しているはずだが、金額や設定条件が細かいため、すべてを記憶できている人はそういないだろう。
また、昔に契約したクレジットカードについては、こうした契約時の書面を破棄してしまっているケースもあるかもしれない。
このような場合は、各クレジットカードの担当窓口に電話連絡で確認するか、ホームページから約款等を探して確認するほかない。
これから新たにクレジットカードを契約するのであれば、こうしたメリットを得損なわないためにも、これらの約款は忘れずに保存しておく必要がある。
付帯される保険の種類
一般に、クレジットカードに付帯する海外旅行保険としては、以下のようなものが挙げられる。参考はこちら
傷害・死亡
旅行先で怪我を負ったり、クレジットカード使用者が死亡したりといった場合に、一時見舞金として金銭が支払われる。
怪我の程度、死傷者側の落ち度に応じて金額は異なる。
後遺障害
負傷・病気などで後遺症を負ってしまった場合、残った障害のレベルに応じて一時見舞金が受け取れる。
治療費用
ケガや病気などで診察・治療を受けた際に補償が受けられる。
「傷害」と「疾病」で分かれている場合があり、「傷害」はケガ、「疾病」は病気と原因が分かれている。
賠償責任
旅行先でトラブルの加害者となってしまい、賠償責任を負う場合がある。
また、裁判になった場合、弁護士雇用のための費用などもかかる。
こうした賠償責任、およびそれに関連する出費の一部を保険として補償してもらうことができる。
盗難補償
海外旅行の際に手荷物などが盗難にあってしまうケースがある。
この時、盗難補償があると失った物品の価格をもとに、補償が受けられるというサービスだ。
救援者費用
海外旅行先で傷病に遭ってしまい自力での帰国が難しくなった場合、現地まで身元引受人が赴く必要がある。
この際の金銭的補償を行う内容である。
その他の補償
それ以外にも、カードによって特別な補償がついている場合がある。
例えば、飛行機の乗継遅延等による損害賠償などに応じてくれるカードもある。
また、本会員カードだけでなく家族カードにも同様の保証が付いている場合がある。
もちろん、内容が充実して、かつ補償金額が高額になるクレジットカードは、それだけ年会費なども高く、かつステータス性の高いカードとして見なされやすい。
一般的な海外旅行保険と比較しても遜色ないか
気になるのは、そのクレジットカードに付随している保険の補償がどの程度のものか、という点である。
そこで、一般的な海外旅行保険と、費用面・補償内容などの観点から比較を行い、その有用性について検討してみる。
一般的な海外旅行保険は幅広いプランから自分で選ぶ掛け捨て契約
海外旅行保険は、基本的に1旅程につき1契約の掛け捨てとなる。
金額は契約会社・プランによって大きな幅があるが、台湾や韓国など近場で、かつ滞在期間も短ければ、1,000円以下から保険を掛けることもできる。
逆に、欧米への旅行で、かつ長期滞在となるようなプランになると、1万円を超える契約となることもある。
補償内容・金額上限は当然プランによってまちまちだが、自分である程度オプションを組み替えられるため、納得のいくプランにすることも可能だ。
クレジットカードの付帯保険はサービス内容が固定されている
一方、クレジットカードに付与されている保険は、契約によってサービス内容が一定である。
補償内容のレベルについては、一般的な海外旅行保険と遜色ない、と言って問題ないだろう。
ただ、クレジットカードの年会費を海外旅行保険の保険料と捉えるのであれば、一般的な海外旅行保険のハイグレードなものを複数回設定する程度のコストがかかる、と見ることもできる。
あくまでもクレジットカード機能がメインであり、海外旅行保険は「付帯サービス」であり、「高価なおまけ」と考えるのが無難だろう。
すべての海外旅行保険付きクレジットカードが有効になるわけではないので注意
クレジットカードに付帯する海外旅行保険には、自動付帯型と使用付帯型の2種類があるので注意してほしい。
自動付帯型は、持っているだけで自動的に一般的な海外旅行保険と同様の効力があるクレジットカードだ。
用付帯型は、海外旅行中で、かつトラブルが発生する前にクレジットカード決済を行うなどしていないと、保険が適用できないタイプになる。
自分の持っているクレジットカードが自動付帯型か使用付帯型かは必ずチェックしておくべきだ。
また使用付帯型の場合、保険適用となる条件はカードごとに異なるので、把握しておく必要がある。
海外旅行保険をどうするかはライフスタイルによって決めるのがベター
・クレジットカードに付帯する海外旅行保険を活用したいのは以下のようなケースだ。
・ステータスの高いカードを持っていることが望ましい場合
・年に複数回海外旅行へ行く場合
・現在すでに海外旅行保険付帯型のクレジットカードを所有している場合。逆に、保険会社などが運営している海外旅行保険に加入することをおすすめするのは、以下のようなケースである。
・ステータスの高いカードは不要である場合
・数年に1度程度しか海外旅行に行かない場合
・現在所有しているクレジットカードには海外旅行保険付帯がない場合
あくまでもクレジットカードの海外旅行保険は「おまけ」であり、メインの機能ではない。
保険としての効果は十分なものではあるものの、ステータスとして年会費の高いカードを持つという価値ではなく、保険料としてカードの年会費を払うのは、あまり好ましいとは言えないだろう。
逆に、年に複数回海外渡航を行うようなケースでは、都度保険を組み直すよりも、クレジットカードに付帯する海外旅行保険を活用するほうが、手間も省けるしコストカットになりうる。
ライフスタイルによってどうすべきかは変わってくるので、自分に必要な機能は何なのかを考え、より良い選択をしていくことが求められる。
また、種類は少ないが、無償で海外旅行保険特約が得られるクレジットカードもある。
下で紹介するが、それについてはどのような人に対してもおすすめだ。
海外旅行の際には特別な注意点も
海外旅行保険特約のついたクレジットカード契約については、特別に気を付けたいことがある。
以下のような点には、十分留意してほしい。
ブランドはJCB以外がベター
国外でJCBが利用できる場所はそう多くない。
日本人観光客の多いハワイなどの一部地域では使える店も多いようだが、それ以外の場所では決済不能になってしまうことがある。
JCBブランドのカードにも海外旅行特約が付いているケースはあるが、自動付帯型でない限り効力がなくなってしまう可能性があるので十分に注意してほしい。
上限額・引落口座の余力を事前に確認しておく
使用付帯型の海外旅行保険が付いたクレジットカードで、「いざ現地について決済しようとしたら上限いっぱいになっていて使えなかった」「銀行からの引落無効でカード利用が停止になった」などのトラブルに巻き込まれたら、目も当てられない。
頼れる人の少ない海外旅行だからこそ、事前に金銭的なトラブルにならないよう充分な配慮が必要だ。
海外旅行保険が付帯しているクレジットカード
ここで、海外旅行保険特約が付帯しているクレジットカードの一部を紹介する。
これからクレジットカードを契約しようと考えており、かつ海外旅行保険についても付帯することを希望している場合は、ぜひチェックしてみてほしい。
エポスカード
Visaブランドの『エポスカード』には、海外旅行保険特約が付いている。
年会費無料で利用できるので、コストをかけず、簡易的な保険が付けられるというのが魅力だ。
ただ、対象者はカード所有の本人のみであり、補償内容も全体的に少額となっている。
「付いていないよりは良い」という程度のものではあるが、逆にそこまで高額なトラブルに巻き込まれることも多くはないということを考えると、この程度の少額補償でも充分だと考えることもできる。
なお、有償会員となるゴールドカード(年会費5,000円)やプラチナカード(年会費20,000円)の場合は、補償額・補償内容が大幅にグレードアップする。
カード会社からゴールドカードへのランクアップ提案があった場合などは年会費が永年無料になるため、まずはスタンダードカードを持ち、エポスゴールドへの切り替えを狙うというのも良いかもしれない。
楽天カード(スタンダード)
スタンダードタイプの『楽天カード』にも、海外旅行保険が付与されている。
ただ、いくつかの条件を満たしていないと保険が下りないため、十分注意が必要だ。
まず大前提として、出国前に1度でも当該カードで決済を行っていること。
これはカードユーザーの大半がクリアできるので問題ないだろう。
次に、旅程が「企画旅行」であり、この決済を楽天カードで行っていること。
いわゆるパックツアーでなければ、使えない保険なのである。
上位カードである『楽天プレミアムカード』でもこの条件は基本的に変わらない。
それでも楽天カードがおすすめできるのは、その高いポイント還元率によるメリットを享受できるからである。
楽天市場やふるさと納税、各種インフラなどを楽天でまとめ、かつ楽天カードで支払いを行うと、かなり金銭的利益が得られる。
海外旅行保険については「ツアー参加ならば積極的に活用していきたい」程度であるが、逆に1枚持っていればツアー旅行の海外旅行保険が手に入ると思えば、かなりメリットがあると言いえる。
VIASOカード
『VIASOカード』は、三菱UFJニコスが発行しているクレジットカードの1種で、MUFJカードなどの姉妹アイテムであるといえる。
『VIASOカード』は、年会費無料の一般会員カードにも海外旅行保険特約が付与されている。
ただし、パックツアーの場合はその料金を『VIASOカード』で支払っている必要がある。
また、自由に渡航する場合は、航空券など渡航にかかる旅費をVIASOカードで決済していなければならない。
ブランドはMastercardのみだが、海外での利用を考えるのであれば特に問題にはならないだろう。
保険適用となる条件はあるものの、補償金額もほかの年会費無料カードに比べて大きいため、おすすめ度は高い。
三井住友カード
『三井住友カード』も永年無料のクレジットカードで、かつ海外旅行保険特約が付与されている。
事前に旅行費用をクレジットカードにて決済している必要があるため、注意が必要だ。
名称自体は「傷害保険」となっているが、保険内容は一般的な傷害・死亡保険に加え、傷病治療・疾病治療・賠償責任など広く対応している。
いずれも補償上限額は高くないものの、無償カードとしては充分な補償金額だ。
ブランドはVISAかMasterから選ぶことができる。
セゾンゴールド・アメリカン・エキスプレス・カード
『セゾンゴールド・アメリカン・エキスプレス・カード』は初年度年会費無料(2年目以降は税込11,000円)のゴールドカード。
AMEXブランドなので、海外での使用には大きな支障がないだろう。
国内外の空港ラウンジサービス、手荷物無料宅配サービスなどが受けられるのも魅力だ。
また、旅行傷害保険は海外だけでなく国内でも適用される。
会員の家族に対する補償も受けられる点でも、「さすがAMEXのゴールドカード」と言ったところだろう。
ステータスとしてのカードの力も強い。
これから何か1枚主軸にできるカードを作るのであれば、おすすめしたいカードだと言える。
dカードゴールド
『dカードゴールド』にも、会員、および家族の海外旅行保険が付帯している。
『dカードゴールド』は年会費11,000円(税込)であり、海外旅行の補償額・補償内容は年会費が同額程度のクレジットカードと比べても見劣りしない。
航空便遅延に関する特約なども付与されているため、『dカードゴールド』の会員であれば、別途海外旅行保険を契約する必要はまったくないだろう。
なお、年会費無料であるdカード(一般カード)には保険特約が付いていないため注意する必要がある。
年会費無料のカードでも十分な補償を受けられるケースはある
年会費無料のカードで充分な海外旅行特約の補償を受けたいと考えるなら、最もお得になるのはエポスゴールドの無料会員カードだろう。
保険が適用となる使用条件もないため、幅広く、かつ高額な出費に対する補償も受けられる。
一方で、一般的なレベルの無償会員カードであっても、必要最低限の海外旅行保険特約は付与されていることがある。
海外でどんなことをするか、危険性がどの程度あるエリアを訪れるかなどで、保険のレベルをチェックするのが望ましい。
また、現在持っているクレジットカードで補償される金額・内容が不十分だと感じる場合は、クレジットカードをランクアップするか、海外旅行時には別途保険会社と掛け捨ての保険契約を結ぶと良いだろう。
どちらがメリットの大きい契約かは人によって異なるので、それぞれのプランに合わせて決めてほしい。