欧州中央銀行(ECB)の新しいワーキングペーパーによると、ステーブルコインの利用増加が銀行預金から資金を引き出し、金融政策が融資に伝わる仕組みを弱める可能性がある。
米ドルやユーロなどの通貨に連動するデジタル資産であるステーブルコインの普及拡大は、伝統的な銀行預金から資金を吸い上げることが予想される。ECBは火曜日に発表した最新のワーキングペーパーシリーズ「ステーブルコインと金融政策の伝達(Stablecoins and Monetary Policy Transmission)」の中でこのように述べた。
ECBのスタッフは、「我々の分析は、ステーブルコインへの関心の高まりが、リテール銀行預金の測定可能な減少と企業向け融資の削減に関連していることを示している」と述べ、ステーブルコインが銀行による実体経済への信用供与額を減らす可能性があると付け加えた。
またECBは、その影響は非線形的であり、ステーブルコインの採用規模、設計上の特徴、および規制のあり方によって異なると指摘した。
このレポートは、ステーブルコインを監視するECBの継続的な取り組みの一環である。ステーブルコインの時価総額は過去3年間で2倍以上の3,120億ドルに達しており、2028年までに2兆ドルに達すると予測されている。
ステーブルコインの影響:銀行、金融政策、そしてなぜ通貨が重要なのか
ステーブルコインの普及拡大が銀行に与える影響を評価するため、ECBは「預金代替効果」を強調した。これは、家計や企業が資金をリテール銀行預金からデジタル資産に移動させる現象である。
「銀行は家計や企業への融資を支えるための、安定的かつ低コストな資金調達源として預金に大きく依存している」とペーパーは述べている。「預金が減少すると、銀行はより高コストで不安定になりがちなホールセール(市場調達)資金への依存を強めざるを得なくなる可能性がある」と付け加えた。

また同レポートは、ステーブルコインが政策金利の銀行資金調達コストや融資への影響を変える可能性があり、その影響は採用規模、設計、規制によって異なると主張している。
著者らは、「ステーブルコインの採用は複数の金融政策伝達経路を妨げ、政策措置の予測可能性を弱める可能性がある」と述べた。
ユーロ圏にとっての通貨構成の重要性
レポートはまた、外貨建てステーブルコインの成長に関する懸念も表明した。外貨建て(特に非ユーロ建て)トークンが市場を支配すると、国内の金融政策と銀行融資の結びつきがさらに弱まるリスクが増幅されるという。
ECB当局者は以前、ドル建てステーブルコインの普及が通貨主権や、クロスボーダー決済におけるユーロの役割に疑問を投げかける可能性があると警告していた。
ワーキングペーパーは、米ドルに裏打ちされたステーブルコインが市場の大部分を占めているというデータを引用した。CoinGecko(コインゲッコー)のデータによると、執筆時点でドル連動型トークンの価値は3,010億ドルに達し、ステーブルコイン時価総額全体の97%を占めている。

