中国広東省深セン市は、中国人民銀行(PBoC)と協力して、合計で1000万元(約1億5700万円)分の中央銀行デジタル通貨(CBDC)であるデジタル人民元を配布すると発表した。新浪財経などが報じた。

試験運用の一環でスマートフォンなどからアプリをダウンロードする。このパイロットプロジェクトでは深センの羅湖区が資金を提供。デジタル人民元は抽選で5万人に配布される。深セン市の住民向けに9日からオンラインの申し込みを開始している。

報道によると、一人あたり200元(約3000円)分が配られ、10月12日から18日の間で深セン市羅湖区の3000以上の商店で使用できる。ただし、デジタル人民元を他の人に譲渡したり、銀行口座に振り込むことはできない。使わずに残った場合は18日以降に回収されるという。

中国ではデジタル人民元のパイロットプロジェクトが世界に先んじて進められている。既報の通り、現在は深センの他に、香港やマカオ、広州など9都市で行われている。

10月5日にはPBoCの範一飛(ファン・イーフェイ)副総裁が、中央銀行によるデジタル通貨電子決済(DCEP)のパイロットプログラムで既に1億6200万ドル(約170億円)以上の国内取引を決済したことを明らかにするなど、計画は順調に進んでいるようだ。

また、現地メディアの報道によると、多くの中国大手企業がパートナーとしてデジタル人民元のパイロットプロジェクトに参加している。

今年4月の報道では中国のスターバックスやマクドナルド、サブウェイ、ユニオンペイ、JDドットコムの無人スーパーマーケット、地下鉄、書店などがテストに参加しているという。

9月には中国のeコマース大手の京東集団(JDドットコム)子会社が中国人民銀行のデジタル通貨研究所と提携した。

中国人民元の影響拡大

アジア・タイムズ・フィナンシャルの報道によると、イランの中央銀行は、米ドルの代わりに中国人民元を主要外貨としてリストアップした。米国はイランに対する経済制裁を続けている。その間にイランは中国との商取引や協力関係を拡大した。

イラン自身も独自のデジタル通貨を発表しており、SWIFTを回避して石油取引に利用しているとされる。

中国ではこうした変化に対して、ポジティブに捉えられている。アジア・タイムズ・フィナンシャルは、テンセントが運営するメディアQQコムの社説を引用した。

「これは人民元の東風(戦局が有利になることを意味する)となり、イランを含む産油国のトレーダーに新たな石油通貨のオプションを提供するだろう」